以下の文章は、TorrentFreakの「Takedown Galore: 10 Years of Google DMCA Notice Transparency」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

10年前、Googleは透明性向上の一環として、同社に送られたDMCA削除通知に関する情報の公開を始めた。インターネット上の「情報の自由な流通」がどこで遮断されているのかを一般市民により詳細に知ってもらうことを目的とした取り組みだった。当時、Googleは削除通知が激増していることを明らかにした。だが、今から振り返ればそれはほんの序章に過ぎなかった。

ちょうど10年前、Googleは透明性レポートを拡大し、DMCA削除要請に特化した新たなセクションを設けた。

この時初めて、著作権者がどのURLをターゲットにしているのか、どれくらいの規模で削除要請が行われているのかを、第三者が確認できるようになった。

この情報を公開することになったのは、削除要請が急増したことが一因だった。Googleによれば、この急増が「情報の自由な流通」に影響を及ぼしていたのだという。

「インターネットの未来には、開放性が重要だと考えています。何かが情報の自由な流通を阻害する時、その障害が何であるかについて透明性がなければならないと考えています」

当時、Goolgeの上級著作権顧問であったフレッド・フォン・ローマンによると、DMCAは急増していた。

「最近では、毎週25万件以上の要請を受けることも珍しくはなく、これは2009年の1年間に著作権者から受け取った削除要請の件数よりも多い」と、当時フォン・ローマンは綴っている

削除通知の激増:年間25万件から10億件へ

今にして思えば、これは削除通知が爆発的に増加する前触れに過ぎなかった。数年後、Googleは週に2000万件以上、年間10億件以上のDMCA通知を処理するようになった。

この成長曲線はやがて平坦化し、近年では削除通知の数は減少に転じている。海賊版コンテンツの検索結果を下位にランクダウンするなどの海賊版対策アルゴリズムが機能しているためだろう。

海賊版サイトの検索結果をランクダウンさせれば、侵害コンテンツが検索エンジンで見つかりにくくなる。その結果、Googleが処理するDMCA要請は年間数億件にまで減少した。

10年にわたって透明性レポートが明らかにしてきた削除通知の集計結果は、実に印象的だ。過去10年間、著作権者はGoogleに著作権侵害コンテンツにリンクしているとされる57億5000万件のURLの削除を要請した。

こうした削除要請は、30万以上の大小さまざまな著作権者から寄せられている。なかでも最も多くの削除要請を提出したのが英国の音楽著作権団体BPIで、その数なんと5億7000万件、削除要請全体の10%を占めている。

対象ドメインを見ると、6800万件のURLの削除要請のあった4shared.comがトップで、その大半は数年前までに送付されたものだ。近年では週に数千件程度にまで減少し、年間でも100万件に満たない。

最も標的とされたドメイン名のトップ5は、すでに消滅したmp3toys.xyz、ホスティングプラットフォームのrapidgator.net、chomikuj.pl、uploaded.net、そしてブロッキング回避プロキシポータルのunblocksites.coだった。

すべてのURLが削除されたわけではない

この数字は、要請があったURLの数を示しているだけで、そのすべてが検索エンジンから削除されたわけではない。この統計では、重複した要請、虚偽の要請、GoogleにインデックスされていないURLもカウントされている。

たとえば、MindGeekの「MG Premium」のレポートを見てみると、同社は長年にわたって4億9400万以上のURLの削除を要請していたことがわかる(訳注:MindgeekはPornhubなど多数のポルノ投稿サイトを運営するメディア企業)。このうち、実際にGoogleに削除されたのは半分強だった。

残る1億2800万件のURLは、Googleのインデックスに登録されていないものだった。そうしたURLは、後に検索結果に表示されないように、予防的ブロックリストに追加された。さらに7000万件のリンクが重複と分類され、700万件がその他の理由で却下された。

間違いと悪用

こうした数字はそれ自体が興味深いものではあるが、透明性レポートの最大の功績は間違った通知や悪用を第三者が発見できるようになったことだ。Googleに削除要請のあったすべてのリンクは、ハーバード大学のバークマン・クライン・センターが管理するLumen Databaseと共有されることになっている。

このデータベースによって、問題のある削除要請を発見することができるようになった。単なる勘違いもあれば、自動削除要請ツールのエラー、そして意図的な悪用に至るまで、さまざまな問題のある削除要請が発見された。

これまで数多くの間違いの事例が報告されている。たとえば、MicrosoftはBBCやWikipedia、さらには米国政府すら削除のターゲットにしていたり、映画スタジオが自社映画の削除をGoogleに要請したり、フランスの映画・テレビ番組データベースがNetflixとRotten Tomatoesを標的にしたりなど、枚挙にいとまがない。

数十億件のURLが報告されているため、その中に間違いが混じってしまうのも無理はない。だが、公の場で指摘することによって、責任者に責任を負わせることができる。その結果、時間の経過とともに削除要請の正確性は向上していったのだろう。

今後、削除要請のトレンドがどのように推移するかは非常に興味深いところだ。Googleが透明性の高いレポートを公表し続ける限り、我々はずっと注目していきたい。

Takedown Galore: 10 Years of Google DMCA Notice Transparency * TorrentFreak

Author: Ernesto Van der Sar / TorrentFreak (CC BY-NC 3.0)
Publication Date: May 24, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Solen Feyissa