以下の文章は、TorrentFreakの「YouTube Processed Nearly 1.5 Billion Content-ID Claims in 2021」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

YouTubeの最新版の著作権透明性レポートによると、昨年1年間で約15億件のコンテンツIDクレームを処理したことを明らかになった。この数字は、YouTubeが受理したすべての著作権クレームの約98%に相当する。こうしたクレームの大半は、人の目を介さずに処理されているが、それでもごく僅かなエラー率が数百万件の紛争を引き起こしている。

YouTubeは著作権所有者保護のために、著作権侵害が疑われるコンテンツを定期的に削除、非可視化、非収益化している。

だが昨年12月、YouTubeが初となる透明性レポートを公表し、状況は一変した。

YouTubeの著作権透明性

このレポートは2021年上半期をカバーしていたが、先日、YouTubeが第2版を公表したことで、通年の統計にアクセスできるようになった。これにより、YouTubeが驚異的な数の著作権クレームを処理しているという前回の発見が再確認された。

数字を見ていく前に、YouTubeは3つの主要な著作権通報ツールがあることを説明しておこう。最も基本的なものは、誰もが著作権侵害を報告できるDMCAウェブフォーム。2つ目は、コピーライトマッチ(Copyright Match)ツールで、定期的にコンテンツを投稿する約200万のチャンネル運営者に開放されている。

3つ目は、最もよく知られているであろうコンテンツIDプログラムだ。このツールは3つの中でもっとも高度なもので、権利者がアップロードした参照ファイルを用いて機能する。9,000あまりの権利者がこのツールの利用を承認されているが、ごく一握りの権利者に限定されているにも関わらず、YouTubeのすべての著作権クレームの98%がこのシステムを通じて処理されている。

1,482,189,768 件のコンテンツ ID クレーム

YouTubeのレポートによると、2021年下半期に759,540,199件のコンテンツIDクレームを処理し、この数は上半期と比較して微増している。昨年1年間のクレーム総数は約15億件に上った。

興味深いのは、これらのクレームの原因となる権利者の数が比較的少ない点だ。昨年7月から12月の間に、4840の著作権者がコンテンツIDシステムを利用した。なお、同期間、一般に公開されているDMCAテイクダウン・ウェブフォームは272,815の権利者に利用された。

テイクダウン送信者(h2, 2021)

以下のグラフは、比較的少数のコンテンツIDユーザのグループが、YouTubeにおけるすべての著作権クレームの大部分(約98%)を担っていることを明確に示している。DMCAウェブフォームとコピーライトマッチツールは、それぞれテイクダウン量全体の1%未満を占めている。

テイクダウンボリューム(h2, 2021)

99%は自動処理

もう1つの興味深い発見は、ほぼすべてのコンテンツIDクレーム(99%)が自動的に提出されていることだ。この場合、侵害の可能性があるコンテンツは、人間の監視が限定されたフィンガープリント技術に基づいてフラグが立てられることになる。

自動化によって、YouTubeと権利者は多くのリソースを節約できる。だが、自動化は悪用やエラーを引き起こす可能性もはらんでいる。それゆえに、検証済みで責任のある権利者のみがこのプログラムに参加できる理由の1つである。

「クレームが自動的に生じうることがあるため、DMCAウェブフォームから送付される1件の著作権削除要請が1件(または数件)のビデオにしか影響しないのに対し、コンテンツIDでは参照ファイルが1つあるだけで数千件のビデオとユーザに影響を与え、非収益化や完全なブロックが可能になるため、この点はとりわけ重要です」とYouTubeは報告している。

濫用

こうした予防策を講じていても、濫用の可能性はゼロではない。YouTube上には、誤報告に不満を訴えるビデオで溢れかえっている。さらに悪いことに、詐欺師がこのシステムを利用して、権利を保有していないコンテンツにフラグを立てることもあり、数百万ドルの収益がかすめ取られた事例もある。

こうした収益化オプションは、濫用者だけに人気があるわけではない。適法な権利者も、収益を得るためのツールとして受け入れている。コンテンツIDによって適切にフラグが立てられたビデオのうち、90%がオンラインに残り、その収益が権利者の手に渡っている。つまり、著作権クレームがシリアスな収入源になっているのである。

だが、コンテンツIDクレームの大半は異議を申し立てられず、クレームの受領者が異議を申し立てるケースはわずか0.5%に過ぎない。「ほんの一握り」のように見えるかもしれないが、それでも6ヶ月間で380万件のクレームが争われたことを意味している。

異議申立(h2, 2021)

ユーチューバーは、こうしたクレームに異議を申し立てることができ、62%がアップロード者に有利に解決されるなど、多くの場合、成功を収めている。両者が合意に達しない場合には、申立はコンテンツIDシステムから離れ、権利者は通常の削除要請を提出しなければならない。

YouTubeが公表したデータは、YouTubeの著作権問題について深い洞察を与えてくれる。1年分の統計が出揃った今、今後どのようなトレンドが見られるか、興味深く見守っていきたい。

YouTube Processed Nearly 1.5 Billion Content-ID Claims in 2021 * TorrentFreak

Author: Ernesto Van der Sar / TorrentFreak (CC BY-NC 3.0)
Publication Date: July 21, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Tom Wheatley