以下の文章は、TorrentFreakの「Pornhub Sees DMCA Notices Vanish After Enabling Uploader Verification」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

Pornhubは、ユーザ投稿型コンテンツサイトの海賊版問題を解決する「聖杯」を見つけ出した。その目覚ましい成果は、DMCA削除通知の98%減少という数字に象徴されている。必要なのは、投稿者の本人確認を義務化することだ。これは世界有数のメディア企業にとって見逃せない成果なのかもしれない。

間違いなく、Pornhubはインターネット上で最もアクセスを稼ぐアダルトサイトだ。

この「エンターテイメント」プラットフォームは、Mindgeek(以前はManwin)という企業が所有している。わずか数年の間に、有料アクセスモデルが支配的だったアダルト業界を、見放題、無料ストリーミングビジネスへを変貌させた。

この魔法を可能にしたのは、Mindgeekが所有するPornhubを始めとするtube系サイトに、ユーザがコンテンツをアップロードできるようにしたことに起因する。正規のビデオばかりでなく、膨大な数の海賊版が投稿されることになった。

DMCAで守られたフライホイール

そうした動画は、数百万のビジターをサイトに呼び込み、さらに多くのアップローダーを呼び込むことにつながった。このフライホイールは、Pornhubを著作権侵害の責任から守るDMCAのおかげで、回転し続けることができた。

年を経るごとにポルノの権利者からのクレームが増加し、さらにクレジットカード会社から「オフェンシブ」なコンテンツの禁止を求める圧力がかかるようになった。さらに当局も、サイトが違法コンテンツの投稿に悪用されていることに懸念を示すようにもなった。

Pornhubはアップロードフィルターや目視でのコンテンツチェックを実施し、数十万件の削除要請を処理することで、この嵐を乗り切ろうとした。だが、こうした取り組みにも関わらず、Pornhubは2020年下半期に存亡の危機に立たされることになる。

「Pornhubの子どもたち」

ニューヨーク・タイムズ紙は、”The Children of Pornhub “というオピニオン記事で、このチューブ系サイトのダークサイドに光を当てた。

この記事は、億万長者のヘッジファンドマネージャー、ビル・アックマンら世界中の人々に衝撃を与え、Pornhubの決済プロバイダであるVisaとMastercardは強烈な圧力にさらされることになった。

Pornhubは無料コンテンツによって成長を遂げたサイトだが、先日のFTの記事にもあるように、同社の経営は莫大な広告収入の決済を支えるクレジットカード会社との関係に支えられていた。つまり、VisaとMastercardによる決済の停止は、Mindgeekの旗艦サイトの沈没を意味する。

追放

2020年12月、消滅の危機に直面したPornhubは、膨大な数の動画を削除することで対応しようとした。その目的は、児童ポルノなどの搾取的なコンテンツがプラットフォーム上に表示されるのを防ぐためだった。その取り組みの一環として、Pornhubはコンテンツ投稿者に認証(本人確認)を義務づけた。

Pornhubのこの決断は著作権の問題とはまったく無関係であったが、皮肉なことに、この認証がインターネット上で最も効果的な「著作権侵害対策」となった。

Pornhubは、認証が著作権侵害に与えた影響について公式には明らかにはしていないものの、データはその劇的な効果を示している。我々がPornhubの最新版の透明性レポートと1年前のものを比較してみると、海賊版クレームを激減させたアップローダー認証の効果が見えてきた。

DMCA削除の「消滅」

2020年、PornhubはDMCA通知に応じて、54万4021件のコンテンツを削除している。Pornhubが当時ホストしていた動画の数が1400万本ほどだったことを考えても、かなりの数字だ。

こうしたビデオの大半は、サイトが「認証者のみ」になった際にまとめて削除された。400万本ほどの動画がこのパージを免れ、それ以降に追加されたコンテンツも認証済みのアップローダーからの投稿に限定されている。このプロセスの結果、DMCA削除は激減することになった。

2021年、PornhubがDMCA通知に応じて削除したコンテンツはわずか8547本、前年比で98%以上という劇的な減少を記録した。

認証こそが聖杯なのか?

Pornhubの児童搾取や虐待の問題への取り組み自体は掛け値なしに正しいという結論はさておき、この経緯は著作権者にとって非常に魅力的なストーリーに見えるかもしれない。アップローダーの本人確認が海賊版対策として極めて有効な手段に見えるのだから。

Pornhubは長年にわたってDMCAクレームに対応してきた。そのために、削除専門チームを立ち上げるなど、多大な労力とリソースを投じてきた。だが、認証を開始した途端、すべての問題が解決してしまったのである。

これを素晴らしいと見るか、恐ろしいと見るかは、その人の視点によるのだろう。たとえば著作権者たちは、YouTubeがアップローダーの「本人確認」チェックしてくれることを夢見ているが、一方で、そうした「インターネット・パスポート」の義務化を悪夢だと感じる人もいるだろう。

Pornhubのデータが何をもたらすのかは依然としてわからない。だがアダルトエンターテイメント業界は、オンラインストリーミング、決済処理、バーチャルリアリティなど、新たなアイデアや技術に最初に挑戦してきた。ユーザ認証もそうなのかもしれない。

Pornhub Sees DMCA Notices Vanish After Enabling Uploader Verification * TorrentFreak

Author: Ernesto Van der Sar / TorrentFreak (CC BY-NC 3.0)
Publication Date: October 6, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Marco Verch (CC BY 2.0)