以下の文章は、Walled Cultureの「Copyright isn’t working: all around the world, writers are struggling to earn a decent wage」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

Walled Cultureの中心的なテーマの一つは、著作権がその本来の役割を果たしていない、という主張です。著作権はもともと、クリエイターの仕事に公正な報酬を与え、将来にわたってさらに多くの作品を生み出すインセンティブとして機能するはずでした。しかし、書籍版『Walled Culture』のなかで述べたように、著作権がその役割を果たしていないことが明らかになっています。

たとえば、世界中の作家がまともな収入すら得られずにいます。米国の作家を対象にした米国作家協会の2018年の調査では、作家の収入の中央値は6080ドルでした。2007年には12850ドル、2009年には10500ドル、2014年には8000ドルでしたから、減少の一途を辿っています。書籍からの収入に限定してもひどい状況に変わりはありません。中央値は2013年の3900ドルから2017年には3100ドルと21%の減少、2009年の6250ドルを比べると50%強も減少しました。その結果、作家たちは執筆収入の減少を講演活動や書評、講師業などで穴埋めしなくてはならなくなったのです。専業作家を自認する回答者を見ると、執筆以外の収入を合わせても中央値で20300ドルの収入しか得られていません。3人以上の世帯だとすると、米国の貧困ラインを遥かに下回っています。

もちろん、これは4年前のデータ。ですから、英国から作家の収入に関する新たなレポートが公表されたことは大歓迎したいところです。が、悲しいかな、状況はさして変わっていません。

グラスゴー大学CREATeセンターが実施した作家の収入に関する最新調査は、この職業が転機を迎えつつあるという憂慮すべき事実を物語っている。過去15年間、プロ作家の執筆収入は約60%も減少し、収入の中央値は最低賃金レベルにまで下がっている。

調査の結果、作家の収入は2006年の12330ポンドから2022年には7000ポンドに減少していたことが明らかになりました。さらに、2006年には調査対象者の4割を占めていた専業作家の数は、2018年には28%、2022年には19%にまで減っていました。さらに男女格差も拡大し、男性は女性よりも41%ほど多く稼ぎ(2016/17年調査では33%)、黒人や多人種的なバックグラウンドを持つ作家の収入は、白人の作家よりも51%(実質)低くなっています。ここで、著作権が作家を窮地に追い込んでいることを強調するために、オーストラリアの事例を紹介しておきましょう。

もし本を書こうと思っているなら、忠告しておきたい。あなたの年収は平均的なオーストラリア人よりも5万豪ドル(2万7000ポンド)ほど低くなりそうだ。

マッコーリー大学、オーストラリア・カウンシル、コピーライト・エージエンシーの調査によると、作家として活動した場合の平均年収は、わずか1万8200豪ドル(1万ポンド)あることがわかった。作家の5分の2はパートナーの収入に頼り、5分の2は執筆とは無関係の仕事に頼っているのが現状である。

引用元のThe Guardianの記事には、オーストラリアの著名作家たちのインタビューも掲載されています。そうした成功者である作家でさえも、現代作家の厳しい現実を騙っています。その1人、アンナ・スパーゴ=ライアンはこのようにコメントしています。

創作活動にお金を出してくれるパトロンは誰もいません。作家であり続けるということは、とにかく精力的に働き、新しいことに挑戦し、仕事を多様化させるということでもあります。

これまでWalled Cultureが提案してきたように、この問題は解決策でもあります。つまり、パトロンに支えられるアプローチへの移行です。かつてのような1人のパトロンに寄り掛かるのではなく、何百、何千の「真のファン」が少額の定期的な金銭的支援をすることで大好きなクリエイターを支えるというアプローチです。これは著作権システム以上に優れた方法になるかもしれません。少なくとも、今以上に悪くなることはないでしょう。

Copyright isn’t working: all around the world, writers are struggling to earn a decent wage – Walled Culture

Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: December 22, 2022
Translation: heatwave_p2p

カテゴリー: Copyright