TorrentFreak4つのアダルトサイトを運営するSun Social Mediaが、ポルノ配給会社Hydentra HLPとの訴訟に勝利した。Hydentra HLPは、サイトに同社のコンテンツが無断で掲載されているとしてSun Social Mediaを訴えていた。しかし、DMCA通知を郵便で送ることが、コンテンツを削除させる最良の方法だったのだろうか?

Megauploadを運営していたキム・ドットコムが思い知らされたように、ユーザがアップロードするコンテツのホスティングは、たとえデジタルミレニアム著作権法がそれを許していたとしても、大きなリスクを伴う。米国で複数のビデオプラットフォームを運営するSun Social Media(SSM)も、同様の危機に直面した。

SSMは出合い系サイトに加え、4つのいわゆるチューブサイト――Playvid.com, Playvids.com, Peekvids.com, Feedvid.com――を運営していた。そのSSMに対し、数十のポルノサイトを運営するアダルトビデオ会社Hydentra HLP(MetArt Networkとしても知られる)が、SSMのサイトに70本以上のビデオが無断で掲載されているとして訴訟を起こした。

裁判文書によると、SSMのサイトにはユーザがアップロードした475,000本以上のアダルトビデオがホストされている。この裁判において、両者が同意したのは、Hydentraが権利を有するビデオがアップロードされていることのみであった。ビデオがアップロードされると、SSMの外注業者がすべてのビデオをチェックし、犯罪となる違法なコンテンツやスパムが含まれていないかを確認し、問題のあるビデオをブロックしている。

Hydentraは、SSMとその4つのビデオサイト以外に、この裁判で2つのほかの被告の名前を挙げている。SSMのディレクターであるコンスタンティン・ボロティンとIncorporateNow Incのコンスタンティン・ルシアンである。後者は、SSMのDMCAエージェントとして登録されている会社である。文書によると、SSMは、電子メールやFAX、ウェブサイトのコンタクトページから、ほとんどありえないことだが”郵便”に至るまで、さまざまなフォーマットで著作権クレームを受け取っている。通常、そうしたクレームは48時間以内に処理される。

また、SSMは侵害を繰り返すユーザに対して「6ヶ月間にスリーストライクがあった場合にはアウト」というポリシーを持っている。現在までに、SSMは複数回の侵害を行った1000人以上のユーザをBANしている。

Hydentraは、複数のプラットフォームで行われている侵害に対処するために、Battleship Stance LLCというアンチパイラシー企業を雇った。もちろん、そのターゲットにはSSMが運営するサイトも含まれていた。一般的に、著作権侵害通知は電子的に送付され、迅速に処理される。しかしある時、どういうわけかBattleship Stanceは56通のDMCA通知を紙で印刷し、SSMのDMCAエージェントであるIncorporateNowに郵便で送付した。

その小包には、2015年1月20日にIncorporateNowの受付担当者のサインが書かれていた。しかし、理由は不明ながら、DMCAエージェントのコンスタンティン・ルシアンは直接にこの小包を受け取っていなかった。その結果、侵害コンテンツはSSMのサイトに残ったままとなった。

2015年7月4日、HydentraはSSMに裁判を起こした。SSMはこの時点で、侵害の疑いがあるコンテンツに気がつき、適切にファイルを削除した。しかし、裁判は継続された。

Hydentraは直接侵害、間接侵害、代位著作権侵害、著作権侵害の誘因、および商標権など複数のクレームを申し立てた。

その後、両者は、原告の主張それぞれについて、略式判決を求める交差申し立てを行った。しかし、マイアミ連邦裁判所は、Hydentraが願っていたような判決をくだすことはなかった。

「法廷は被告に同意する。第三者のユーザによる著作物のアップロードについてインターネット・サービス・プロバイダが責任を負うのであれば、原告は、被告が違法複製となる侵害的行為に関与した証拠を提出しなければならない」と判事は述べている。

「そうでなければ、受動的なインターネット・サービス・プロバイダは、管理の及ばない行為に対して責任を負うことになる」

間接侵害のクレームに関して、SSMは書面によるDMCA通知を認識していなかったため責任はないと主張した。また、訴訟によってその事実を知った際に、すべてのビデオは削除された。この判事は、この略式判決において、通知紛失の問題は解決しないと述べている。

「両者とも、また法廷も、DMCAエージェントがどこで削除通知を紛失したのかを特定しようがなく、犠牲悪意に基づいてインターネット・サービス・プロバイダに著作権侵害の責任を負わせることはできない」と判事は記す。

さらに侵害幇助に関しては、HydentraがSSMのチューブサイトで「実質的に非侵害的利用」が不可能であることを示さなければならないが、同社はその証拠を示すことはできなかったという。

「記録によれば、第三者のユーザが被告ウェブサイトに著作物をアップロードしていることは明らかであるが、このウェブサイトは著作権侵害以外の目的でも使用されている可能性を示す証拠が記録されている」と判事は記す。

また、代位侵害も同様に判断された。

「原告が代位侵害について主張するためには、被告が『制止あるいは制限する権限の行使を怠り、直接侵害から利益を得ることによって代理的に侵害している』ことを主張しなければならない」と判事は記している。

「侵害ビデオによって被告ウェブサイトにビジターを引き寄せ、それによって被告はより多くの広告収入を得ているとする原告の主張は、記録的証拠によって支持されるものではなく、きわめて推測的である」

著作権侵害の誘因についての主張は、さらにすみやかにあしらわれている。

「法廷は、被告が第三者のユーザに著作物をアップロードするよう誘引したとする証拠はないという被告の主張を支持する。むしろ記録は、被告が受動的なインターネット・サービス・プロバイダとして運営されていたことを裏付けている」と判事は記している。

地元弁護士のブラディ・コッブとともにこのチューブサイトの弁護を担当したBoston Law Groupのヴァル・ガーヴィッツは、この結果を喜んだ。

「SunSocialはDMCA通知への対応についてきちんと記録を残し、侵害を繰り返すユーザを排除していました。重要な点は、著作権クレームが棄却されたのは、裁判所がDMCAセーフハーバーによってではなく、審理の内容に基づいて判決を下したことです」と彼はTFに語った。

それでも、ガーヴィッツは紙書類での通知の送付は厄介な問題だと言う。

「原告は、電子的に扱われることが一般的なDMCA通知を紙書類で送付することで、DMCAを『遵守していない』証拠を意図的に作り出そうとしました。彼らははじめはDMCA通知を電子的に送付し、SunSocialはそのすべてにきちんと従って削除していました。その後、どういうわけか彼らは56通の紙の通知を(申し立てによればFedExの小包でまとめて)送付しました。それから、彼らはふたたび電子通知を送付し始めたのです」とガーヴィッツは言う。

「Hydentraが電子的な通知の間に紙での通知を挟んだのは、その受領者が誤ってその幾つかを見逃すことを狙ったとしか考えられません。彼らは、こうしたプロセスを現在係争中の裁判でも、訴訟の口実として利用していたようです」

その一方で、HydentraはGoogle検索からコンテンツを削除するのにもご熱心なようで、現在までに240万以上のURLが削除させている

“Tube Sites Win Copyright Case Against Adult Studios – TorrentFreak”

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 11, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Kevin Steinhardt / CC BY-SA 2.0