以下の文章は、電子フロンティア財団の「State Legislatures Are The Frontline for Tech Policy: 2024 in Review」という記事を翻訳したものである。
米国では、テクノロジーとイノベーションに関する政策立案において、州議会議員の影響力が増している。連邦議会がデータプライバシー、警察によるデータ利用、人工知能などの重要課題について審議を続ける一方で、州議会議員は独自の構想を州法として迅速に推し進めている。そのため、EFFは連邦議会だけでなく、全米各州の議会においてもインターネットの権利のために戦ってきた。
今年は、これまでに成立させた良法を守るための活動も行った。カリフォルニア州では、EFFはスコット・ウィルク州上院議員によるS.B. 1076に反対し、その成立を阻止した。この法案はCalifornia Delete Act(S.B. 362)を骨抜きにするものだった。昨年成立したDelete Actは、カリフォルニア州に登録されているデータブローカーに個人情報の削除を要求できる「ワンクリック」ボタンをユーザに提供するものである。S.B. 1076は、データブローカーがこの常識的で消費者に優しいツールへの対応を回避できる抜け道を作り出すものだった。この法案が前進する前に阻止できたことを喜ばしく思う。
また同州では、EFFはACLU California Actionが主導する数十の団体と協力し、フィル・ティン州議会議員による顔認識法案A.B. 1814の成立を阻止した。この法案は警察が説明責任を回避しやすくするものであり、カリフォルニア州議会がこの危険な法案を否決したことを嬉しく思う。カリフォルニア州における今年の成果と課題の詳細については、今年の会期の総括をご覧いただきたい。
EFFはまた、ACLU of MassachusettsによるLocation Shield Actの成立に向けた取り組みも支援した。この法案は当初の形では、企業が位置情報を収集・処理する前に同意を得ることを義務づけ、位置情報の売買を広く禁止するものだった。今年は法制化には至らなかったが、2025年の成立を目指して引き続き取り組んでいく。
各州での実験的な取り組み
今年は複数の州が、若者のオンライン安全に対処しようとしながらも、検閲やプライバシーに関する懸念を引き起こす連邦法案、子どもオンライン安全(Kids Online Safety Act)と同様の問題を抱えた法案を提出した。
例えばカリフォルニア州では、フアン・アラニス州議会議員によるA.B. 3080を阻止した。我々がこの法案に反対した理由の1つは、「性的に露骨なコンテンツ」の定義が不明確だったことだ。この曖昧さは、若者――特にLGBTQ+の若者――が正当なコンテンツにアクセスする際の障壁ともなりえた。
また我々は、A.B. 3080を含め、特定のサイトやソーシャルメディアネットワークへのアクセスに年齢確認を義務づけるあらゆる法案に反対している。このような要件を含む法案は十数州以上で提出された。最近成立した「SAFE for Kids Act」についてニューヨーク州司法長官事務所に提出したコメントで述べたように、同州が検討している要件では、プライバシーを保護しつつ完全な正確性を確保できるものは1つもない。年齢確認要件は、言論の自由を制限し、企業により多くの個人情報を収集するよう促すことでオンラインプライバシーを損なうことで、すべてのオンライン発信者に害をなすものである。
我々はまた、ディープフェイクの作成と拡散を規制しようとする立法者の動きも注視している。これらの提案の多くは、善意に基づくものの、表現の自由に関する憲法修正第1条の権利を侵害しかねない。実際、カリフォルニア州知事がディープフェイク法案に署名してから1か月も経たないうちに、連邦判事が修正第1条を根拠に予備的差止命令によってその執行を停止した。我々は立法者に対し、言論の権利を危険にさらすことなく、ディープフェイクがもたらす害悪に焦点を当てる方法を模索するよう促している。
明るい話題としては、一部の州議会議員が既存のプライバシー法の欠陥から学び、基準の改善に取り組んでいることがある。この1年間で、メリーランド州とバーモント州の両州が、これまでの州プライバシー法を大幅に改善する法案を前進させた。ドーン・ファイル州上院議員とサラ・ラブ州下院議員(現在は州上院議員)によるMaryland Online Data Privacy Act(MODPA)には、強力なデータプライバシー最小化要件が含まれている。モニーク・プリーストリー州下院議員による バーモント州のプライバシー法案には、プライバシーを侵害した企業を個人が訴える重要な権利が含まれていた。残念ながら、この法案は両院を通過したものの、フィル・スコット知事によって拒否された。私訴権はプライバシー法における我々の最優先事項の1つであるため、今年はこの重要な執行措置を含む法案がさらに増えることを期待している。
2025年を見据えて
2025年は州議会に関わる人々にとって忙しい年になるだろう。州議会議員がAI法規制などの問題で連携していることが明らかになっている。以前も述べたように、我々はこれらの議論に参加することを楽しみにしており、無規制のAIがもたらす可能性のある脅威を懸念する立法者に対して、現実世界における害悪に焦点を当てた規制を検討するよう促している。
ワシントンD.C.での行き詰まりが続く中、州議会議員はEFFが重視する複数の主要課題について、主導的な声を上げ続けるだろう。したがって我々は、他の権利擁護団体のパートナーとともに立法者に助言し、意見を表明し続ける。デジタルライツの支持者として皆さんの協力に期待している。2024年のご支援に感謝申し上げる。
本稿は、我々EFFの「Year in Review」シリーズの一部である。2024年のデジタルライツをめぐる戦いに関する他の記事はこちら。
State Legislatures Are The Frontline for Tech Policy: 2024 in Review | Electronic Frontier Foundation
Author: Hayley Tsukayama and Rindala Alajaji / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: December 30, 2024
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Morgan Lane