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欧州司法裁判所は、著作権侵害コンテンツへのリンク掲載は『公衆送信(communication to the public)』とみなしうるとの判断を下した。侵害コンテンツかどうかを知らず、営利を目的とせずに投稿する人は安堵するかもしれないが、営利目的でリンクを掲載している人には非常に厳しい判決だ。

2011年、PlayBoyの写真がリークされ、ファイルホスティングサービスFileFactoryにアップロードされた。オランダのブログGeenStijl.nlは、その写真へのリンクを記事に掲載した。

PlayBoyの出版者Sanomaは、FileFactoryに削除を申し立て、リークした写真を削除させた。しかし、GeenstijlはPlayBoyの写真がアップロードされた別のソースを探し出し、そのリンクを再び記事に掲載した。SanomaはGeenstijlの行為は著作権侵害行為だと主張した。

この事件は裁判に発展し、GeenStijl.nlが投稿したリンクが、欧州著作権指令第3条(1)の『公衆送信』に該当し、侵害に当たるのかどうかの判断が、欧州司法裁判所(ECJ)に委ねられることになった

数ヶ月の審理を経て、ECJはその判断を公表した。それはGeenstijlの運営会社であるGS Mediaや、同様の活動を行っている企業にとっては、悪い知らせであった。ただ、一般市民にとっては、いささかの柔軟性を含んだ判断でもあった。

「加盟国は当該の指令に従い、作品の公衆送信を許諾あるいは禁止する独占的権利を著作者に与えている」とECJの声明にはある。

「当該の指令は同時に、一方では著作権者および著作隣接権者の利益を、他方では利用者の利益および基本的権利、特に表現・情報の自由、公益との公正なバランスを維持するよう求めている」

ECJは、『公衆送信』にあたるか否かは、作品へのリンクが慎重な検討の上で投稿されたものか、その送信に営利的な要素が含まれているか、といった複数の判定基準に照らして考える必要があるという。

ECJは、その予備判決のなかで、表現の自由の重要性を認め、意見や情報の交換におけるハイパーリンクの重要性を指摘している。また、リンクされた作品が著作権侵害であるかどうかの判断は、非常に煩わしい作業であることも認めている。

それを踏まえた上で、ECJは、侵害の可能性の認識に加え、営利的動機が『公衆送信』が行われたか否かの重要な決定因となるとした。

「『公衆送信』を個別評価するためには、他のウェブサイトで自由にアクセスできる状態にある作品へのハイパーリンクの掲載が、営利を目的としない人物によって実行され、その作品が著作権者の同意なくインターネット上で公表されたことを知らない、および合理的に知り得ない、という事実を考慮しなくてはならない」としている。

「実際、そのような人物は、一般的には、インターネット上に違法に投稿された作品へのアクセスを提供することがもたらす結果をを完全に理解してはいない」

しかし、この状況は、個人が侵害の可能性について認識し、営利を目的としていた場合にはまったく異なるという。

「対照的に、そのような人物が、自身の掲載したハイパーリンクが違法に公開されている作品へのアクセスを提供することを知っていた、あるいは知るべきであった場合――たとえば著作権者から侵害であることを通知されていた場合――、そのリンクの提供は『公衆送信』を構成する」と裁判所は言う。

ECJは、その掲載が営利目的である場合、当該の作品が違法に公開されたものでないことを確認するために「必要なチェック」を実行することが期待されるという。

「営利を目的としてハイパーリンクを掲載する場合、そのようなリンクを掲載する人物が、当該作品が違法に公開されたものでないことを確認するために必要なチェックを行うべきことが期待される。それゆえ、作品が当然保護されている状態にあり、著作権者の同意なくインターネット上に公開されているという可能性について十分に把握した上で、その掲載が行われていると推定されていなければならない」

「そのような状況において、および、そのような推定が反証されていない限りにおいて、インターネット上に違法に公開されている作品へのクリック可能なリンクの掲載は、『公衆送信』を構成する」

ECJの判断は、ビジネスとしてリンクを掲載し、かつ、問題のコンテンツが著作権侵害であることをPlayBoyから知らされていたGS Mediaには悪い知らせである。しかしGS Mediaによれば、この判断は報道の自由を害するものだという。

「ハイパーリンクを含む、自由なインターネットの生き残りをかけた闘いは、今日、とてつもない打撃を受けた」とGeenstijlは声明を発表した。

「Geenstijlのような商業メディア企業は、もはやハイパーリンクの自由と大胆さを失った。リーク情報や内部闘争、大企業内のアンセキュアなネットワークについての伝えるべき問題を伝えることが難しくなっている」

「しかし、我々は諦めない。報道の自由のために、我々は戦う。この裁判でも、それ以外でも。それまでは、リンクを貼るときはくれぐれも気をつけるように。自由なインターネットのあちこちに無数の地雷が埋め込まれている時代なのだから」
EU Court: Not-For-Profit Hyperlinking Usually Not Copyright Infringement – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: September 08, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Nicolas Raymond / CC BY 3.0

欧州司法裁判所のプレスリリースでは、「外部のウェブサイトに著作者の同意を得ずに公開された著作物へのリンクをウェブサイトに掲載することは、そのリンクが経済的利益を目的としたものでなく、作品が違法に公開されたものであるとの認識がない場合には、『公衆送信』を構成しない」との文言がタイトルとして掲載されている。一般的なユーザに対する配慮ではあるのだが、裏を返せば「そうでない場合には……」ということになる。

ただ、今回の判断でも言われているように、個別具体的に判断されるべきものであることを考えると、この判断や、この判断を受けて下されるであろう判決によって、営利を目的としたメディア等の、侵害の可能性があるコンテンツへのリンクが即違法だという方向に進むことは好ましいとは思いがたい。

余談だが、時事通信の記事『無断リンクは著作権侵害=「プレイボーイ」写真閲覧-EU司法裁』が、意図せず「無断リンク」を懐かしむおっさんホイホイ的な記事タイトルになっている。

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