ディスク版がリリースされていないにもかかわらず、クエンティン・タランティーノの映画『ヘイトフル・エイト』の4Kバージョンがネット上に流出している。果たして海賊たちはキャプチャーによってコピーを手に入れたのか。それとも、デジタル・シネマ・パッケージ(DCP)のクラックに成功したのだろうか。
昨年12月、クエンティン・タランティーノの最新作『ヘイトフル・エイト(The Hateful Eight)』がネット上に流出した。
映画の流出自体は目新しいものではないが、12月25日の劇場公開を前にDVDスクリーナーが流出したことで、その後数週間にわたって海賊たちの狂乱が続いた。
今年3月、『ヘイトフル・エイト』のDVD/Blu-rayが発売された。ある種、海賊版コピーに対抗するものである。しかし、『ヘイトフル・エイト』がUltra Panavision 70で撮影され、4Kで保存されていることを考えると、多くのファンがUHD版を手に入れたいと望んでいるだろう。
劇場公開から9ヶ月が経っても、『ヘイトフル・エイト』の4K版リリースについては何のアナウンスもされていない。しかし、この数日で事態は急展開した。4K版がネット上に流出し、一部の海賊たちがそのコピーを手に入れているというのだ。
最初に現れたのは、UHDに特化した招待制プライベートトラッカーUltraHDclubのようだ。ここから他のプライベートサイトに広まっていったのだが、そのサイズが40GBを超えるものであったため、拡散のペースは非常にゆったりとしたものであった。
オリジナルリリースの詳細によると、この『ヘイトフル・エイト』の4K版は、ロシアのOkkoという合法的なVODサービスから入手されたものだという。
Okkoは2014年にローンチされ、LG電子と共同で展開してきたVODサービスで、ハリウッドの求める厳格なコンテンツ保護基準を満たすよう設計されている。Okkoはほとんどの大手スタジオと契約を交わしており、一部の映画は劇場公開と同じ日に配信が開始されるほど高い信頼を得てもいる。
しかし、『ヘイトフル・エイト』の4K版が一部では視聴可能だということはともかく、ここで非常に興味深く、議論を呼び起こしそうなのは、そのOkkoのVODサービスからどうやってコピーを手に入れたか、である。
以前に報告したように、すでに4Kコンテンツのキャプチャーは可能となっており、4Kコンテンツはトレントサイトに置かれてもいる。しかし、リリースノートに書かれた詳細(や、トラッカーに投稿された上記のスクリーンショット)によれば、そのコピーは、高いセキュリティを誇るデジタル・シネマ・パッケージ(DCP)から抜き取った.MXFコンテンツファイルなのだという。
この流出の件について、Okkoにコメントを求めたが、現時点で返信はない。非常にデリケートな問題であることを考えると、Okkoが情報を公表してくれるとは思いがたい。そこで我々は、海賊版リリースに精通した複数のソースに話を聞いた。
ある大手サイトの運営者は、コンテンツが流出したことは疑いないが、高度な保護が掛けられた.MFXファイルから抜かれたものだとは思いがたい、という。一方、あるリリースグループのメンバーは、クラックの可能性は低いとは思うが、弱点のないシステムなど存在しないという。「僕は信じたいね」と彼は話した。
我々は4K版の『ヘイトフル・エイト』を投稿し、4K版とBlu-ray版の比較スクリーンショットを提供したHDEncodeの運営者とも話をした。彼によると、UltraHDclubのリリースに関わった人物は、彼らがDCP暗号化のクラックに成功したと言い張っているのだという。
この流出について、タランティーノファンサイトTarantino.infoのセバスチャン・ハッセルベックは、海賊版を好ましく思っていないとしながらも、需要に対して供給がなされてないことが真の問題だと話す。
「海賊版は一般的に損害をもたらすものですから強く反対しています。しかし、今回の件は市場の失敗を示唆してもいます」
「売上を阻害している最大の要因は、タランティーノ作品のセルビデオのラインナップが最小限にとどまっていることです。品質も不十分なものが少なくありません。ファンというのは、『ヘイトフル・エイト』の(訳註:70mmの)劇場バージョンにも、『キル・ビル』のインテグラルバージョンにも、ホイホイお金を払うものです。しかし、いずれも販売されていないので、買いたくても買えないのです」
4K版の『ヘイトフル・エイト』を手に入れられないことは、スタジオ側の問題である。しかし、たとえニッチであっても、まずは海賊たちが需要を掘り起こし、それから合法的な提供に繋がっていくという構図が再び繰り返されるのかもしれない。
Pirates Plunder 4K Hateful Eight, But Did They Crack DCP? – TorrentFreak
Publication Date: September 6, 2016
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Agê Barros