Electronic Frontier Foundation

米国議会は6年ぶりに、著作権法を大きな改正を検討している。皆さんの想像通り、改正案には良いものもあれば、ヒドイものもある。そのうち音楽近代化法(Music Modernization Act = MMA)は、ソングライターと音楽出版社がデジタルサービスで楽曲が演奏された際の補償に関する新たなシステムを構築するものだ。この法律により、音楽に関連するほぼすべてのプレイヤーが認識する問題を解決できるだろう。一部、修正が必要な条文もあるが、概ねポジティブな取り組みと言えるだろう。

しかし残念なことに、MMAには1972年以前のレコード音楽に疑似著作権(pseudo-copyright)を与える有害な法案「CLASSICS Act」が追加されている。この法案は、公共を利するものではなく、それどころか新たに使用料や罰金を追加するものだ。ほかにも危険な法案として、「CASE Act」と「著作権登録の選択および説明責任法(Register of Copyrights Selection and Accountability Act)」が改正案に追加される可能性がある。

音楽近代化法は、音楽ビジネスが抱える大きな問題の解消を目指すものといえる。多くのソングライターや音楽出版社は、デジタルストリーミングの際の楽曲使用料徴収に問題を抱えている。

(楽曲の複製および配信のための)「メカニカル・ロイヤルティ(録音権使用料)」を管理する現在のシステムや組織は、課題に対応できていない。その結果、数百万ドルものロイヤルティが支払われずにいる。一部の音楽出版社は、力ずくでこの問題を解決しようと試み、数十億ドルの著作権侵害の民事訴訟を提起している。

MMAは、楽曲の使用料を支払わなければならない対象に関するデータを収集し、ロイヤルティを分配する著作権料徴収団体を創設する。著作権侵害訴訟によって莫大な法定損害賠償を請求されることのない公正なシステムが構築されるというわけだ。この点については、我々も賛同したい。

しかし、MMAにはいくつかの欠陥がある。恒久的な複製がなされていなくても、オーディオストリーミングを著作権法における複製および配布と定義する文言が含まれている。この文言は音楽ストリーミングのみを指しているのだが、一部の著作権者がインターネットビデオサービスやクラウドコンピューティングに関する重要な判決を覆すために利用される可能性がある。さらに、この法案によって創設される著作権料徴収団体は、ソングライターではなく、音楽出版社に重きを置いている。

とはいえ、こうした欠陥は修正可能だ。だが、古い音楽へのアクセスに新たな生涯を生み出すCLASSICS Actはそうはいかない。この法案は、1972年以前に作成されたレコード音楽への保護(現在は一部の州法によって手当されている)を拡大するために連邦著作権法を拡張しようとするものである。つまり、1923年から1972年までのレコード音楽をライセンスを得ずにデジタル音楽サービスやインターネットラジオでストリーミングできないようにし、そのようなサービスに対して巨額の法定賠償金を課せられるようにするという法案だ。

過去の著作物の使用に新たな障壁を生み出すことは、「著作権は交渉(bargain)である」との理念にそぐわない。作者やアーティストは、制作のインセンティブとして作品に対する限定的な独占権を付与されている。その見返りとして、公衆は新たな芸術作品や作家によって豊かになり、独占権の範囲外の使用や、保護期間切れの作品を使用できる。46年以上も前に制作されたレコード音楽に新たな権利を付与したとしても、新たなインセンティブが生まれることはなく、ほとんどの場合は、レコーディングアーティスト本人ではない著作権者に新たな補助金を与えるだけにしかならない。CLASSICS Actは公共に利益をもたらすことはない。インターネットラジオ局が現在ストリームしている1972年以前のレコード音楽へのアクセスを増やすこともないだろう。そして、国内の著作権は、連邦法が定める2067年まで続くことになる。

CLASSICS Actは、現在、市場優位の立場にあるPandoraやSirius XMなどを特権的な地位に置くことになるだろう。こうしたサービスは、すでに大学や独立系のネットラジオ局のような小さなウェブストリーマーにはとても飲めないような条件で、レコード会社と私的な契約を交わし、72年以前のレコード音楽に対してロイヤルティを支払っている。

CLASSICS Actが施行されれば、1920年代、30年代、40年代のすばらしい音楽を聴くのがずっと難しくなり、これらレコード音楽の著作権保護期間は144年もの間続くことになる。こうした作品をストリーミング配信するリスクは、今よりずっと高くなってしまう。世代を経るにつれて、著作権者の特定はますます困難になっていく。良心的なストリーミング事業者ですら、ソングライターの遠い相続人からの訴訟に直面する可能性もある。

著作権は、新たなインセンティブや公共アクセスを生み出さない過去の作品の権利者の補助金として利用されるべきではない。議会は、CLASSICS Actを抱き合わせることで、音楽近代化法の利益を損ねるリスクを負うべきではない。

究極的には、著作権法は音楽ファンなど幅広い公衆に利益をもたらすものである。しかし、著作権法が強い摩擦を生み出してしまえば、必然的にリスナーに不便や混乱をもたらすことに繋がる。CLASSICS Actで著作権をさらに拡張すれば、利用者がなぜ大好きな古い曲が聞けないのかと不満を募らせる結果を招く。

また、議会はMMAの修正案として、間違った考えを加えるべきでもない。我々が以前にも指摘したように、著作権局に新たな「少額請求」裁定機関をおくCASE Actは、著作権トロールによる濫用的なビジネスモデルを誘発する可能性がある。また、著作権登録は、独立した機関ではなく、米議会図書館に委ねたままにすべきである理由についても説明した。こうした提案を、重要かつ幅広い賛同を集める音楽近代化法と組み合わせてはならない。
The Music Modernization Act is a Good Solution For Songwriters. Don’t Combine It With Bad Copyright Bills. | Electronic Frontier Foundation

Author: Mitch Stoltz (EFF)/ CC BY 3.0 US
Publication Date: March 28, 2018
Translation: heatwave_p2p