CDNサービスのCloudflareはサイエンス版パイレート・ベイとも呼ばれる「Sci-Hub」の複数のドメインに提供していたサービスを停止した。昨年末、アメリカ化学会が得た恒久的差し止め命令に応じ、Cloudflareはこの措置をとることを余儀なくされた。CloudFlareはこれまで同様の要求に対しては反対の姿勢を示してきたが、今回はそうした抗議の兆候は見られていない。
Sci-Hubは世界中のたくさんの研究者や学者から賞賛されている。一方で、著作権者はSi-Hubをインターネットから消し去ろうとあらゆる努力を払っている。
昨年6月、学術出版社のエルゼビアがSci-Hubへの1500万ドルの損害賠償命令を獲得すると、アメリカ化学会(ACS)もその後を追い、その数カ月後には480万ドルの損害賠償命令をデフォルト判決を得た。
ACSにはさらに幅広い差し止め命令が与えられ、ドメインレジストリ、ホスティングサービス、検索エンジンといったサードパーティサービスに対して、Sci-Hubへのアクセスを阻止するための措置を要請できるようになった。
この判決が確定するやいなや、Sci-Hubの複数のドメインが失効した。ドメインレジストリが裁判所の命令を遵守したというわけだ。これにより、ドメイン名をめぐるイタチごっこがはじまるのだが、Sci-Hub自体は変わらず運営が続けられた。
しかし先週末、Sci-Hubに別の問題が浮上した。今回ACSが標的にしたのはCDNサービスのCloudFlareだった。ACSはCloudFlareに対し、判決に従い同社は複数ドメイン名を遮断する必要があると通知した。
「CloudFlareは裁判所命令Case 1:17-cv-OO726-LMB-JFAを受領しました。24時間後に権威DNSを無効にし、以下のドメイン sci-hub.la、sci-hub.tv、sci-hub.tw へのサービスを停止いたします」と同社はアナウンスした。
Sci-Hubの運営者によると、CloudFlareへのアクセスを失ったとしても「致命的」ではないが、「ウェブサイトの運営が一時的に停止する」可能性はあるという。
CloudFlareが以前は同様の命令に抗議していたことを考えると、今回素直に従ったことは重要な意味を持つ。RIAAがMP3Skullに対する恒久的差し止め命令を根拠にCloudFlareに遮断を要請した際、同社は拒否していた。
またSci-Hubの裁判では、「能動的な協力あるいは参加」が差し止めの適用条件となっている。これは特にISPや検索エンジンに言及したものであるが、ACSのディレクター、グレン・ラスキンは、Sci-Hubに単にリンクを張るだけのユーザ個人を標的にするつもりはない、と強調している。
「判決は大規模な検索エンジンに適用されるものではありません。Sci-Hubに盗まれたACSのコンテンツをホストするウェブサイトなど、Sci-Hubに能動的に協力あるいは参加している存在にのみ適応されるのです」とラスキンは我々に語っている。
もちろん、CloudFlareは単にリンクを張っているだけではないが、ウェブホスティングサービスでもない。「能動的な協力」という分類には該当しない可能性もあるが、今のところ、CloudFlareが異議を申し立てた形跡は見られていない。
Sci-Hubに関して言えば、CDNサービスの利用を継続したければ、CloudFlare以外のところを探さなくてはならないのだろう。しかし今のところ、同サイトは広く利用されているようだ。
Cloudflare Terminates Service to Sci-Hub Domain Names – TorrentFreak
Publication Date: February 5, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: MabelAmber