以下の文章は、2025年10月5日付のコリイ・ドクトロウの「Apple’s unlawful evil」という記事を翻訳したものである。
Appleが、ICEBlockというアプリをApp Storeから削除した。このアプリは完全に合法であり、米国の各都市に住まう褐色の肌を持つ人々を違法に脅かす覆面拉致部隊の動きを追跡するツールだ。Appleはトランプ政権の司法長官、パム・ボンディからの令状なき要求に屈服したのである。
https://www.404media.co/iceblock-owner-after-apple-removes-app-we-are-determined-to-fight-this
ICEBlockの削除にあたり、Appleは「合法的な命令に従っているだけだ」と主張した。真っ赤な嘘だ。パム・ボンディには、この合法的な言論ツールの検閲を命じる権限などない。だからこそ彼女は裁判所の命令を求めず、ただ怒りのツイートを投稿しただけなのだろう。だが、それだけでApple CEOのティム・クックは屈した。中国に製造拠点を移転し、自殺防止ネットが必要なほど過酷でブラックな環境で労働者をこき使ってきた、あの億万長者がである。
AppleはiPhoneユーザに対し、App Store経由以外でのソフトウェアのインストールを許可していない。その理由として、「どのアプリをインストールするかについてユーザ自身が下す誤った判断」から顧客を守るためだと主張する。しかし、Appleがこのコントロールを自社の利益のために行使してきたことは、何度も明らかになってきた。以下にAppleがブロックしてきたアプリの一部を紹介しよう。
- 辞書アプリ(罵倒語が含まれているという理由で)
- Appleのブラックな製造工場での労働をシミュレートするゲーム
- 米国のドローン攻撃による民間人の犠牲者を記録した情報アプリ
- Tumblrアプリ(一部のTumblrブログにアダルトコンテンツが含まれているという理由で)
- 中国全土で使用可能なVPNアプリ
Appleはこのアプリストアのコントロールを盾に、顧客がアプリ内で支出する1ドルにつき30セントを搾取している。これはニュースメディアやポッドキャストがアプリ経由でサブスクリプションを集める場合も、Patreonのクリエイターの支援者がアプリ経由で支払う場合も、ゲームパブリッシャーがアプリストア経由で販売する場合も同じで、事実上、経済全体に課せられた世界規模の30%の税金である。
さらにAppleはこのアプリストアのコントロールを利用して、競合するブラウザエンジンをブロックしている(iOS上のすべてのブラウザは、Safariの見た目を変えただけのものにすぎない)。Apple独自のブラウザエンジンであるWebkitには、長年にわたる深刻なセキュリティ脆弱性が山積しているにもかかわらず、iOSではより安全なブラウザを配布する手段が存在しない。
https://open-web-advocacy.org/blog/apples-browser-engine-ban-persists-even-under-the-dma
Appleは、顧客が愚かなソフトウェア選択をしてセキュリティを危険にさらすことがないよう、Appleが顧客の選択を上書きできなければならないと主張する。ブルース・シュナイアーはこれを「封建的セキュリティ」と呼ぶ。デジタル世界の領主が、傭兵で固めた難攻不落の砦の中に、インターネットを徘徊する盗賊から守ってやると言って庇護を申し出る構図だ。問題は、その領主があなた自身を攻撃すると決めたとき、砦は牢獄と化し、あなたには抵抗の術がないことである。
https://pluralistic.net/2023/02/05/battery-vampire/#drained
通常、封建的セキュリティの安全上の問題はデジタルな領域にとどまるが、ICEBlockの件では、きわめて物理的な問題となっている。ICEは我々の隣人を拉致し、国内外の強制収容施設に送り込んでいる。「アリゲーター・アウシュビッツ」に不法に拘束された1,600人のうち、3分の2の所在が確認できていない。彼らは消えた。
https://www.democracynow.org/2025/9/25/alligator_alcatraz
ICEBlockを削除したことで、Appleは顧客から、拉致や殺害を行う覆面の暴漢たちを回避するための不可欠なツールを奪い取った。
ICEの標的は「最悪の犯罪者」から「不法滞在者」、さらに「外国人に見える人々」、そして「都市部に住む人々」へと拡大してきた。
https://federate.social/@mattblaze/115323465203575305
そのリストの筆頭に誰が載るか、お分かりだろうか? ちょうど14年前の今日亡くなったスティーブ・ジョブズだ。
https://www.macrumors.com/2025/10/05/remembering-steve
スティーブ・ジョブズは、「学生ビザで渡米した活動家のアラブ人ムスリムの、婚外子として生まれたアンカーベイビー」だった。
https://www.anildash.com/2025/09/09/how-tim-cook-sold-out-steve-jobs
まさにトランプが国外追放したがる類の人物、そのものである。
外国人の強制連行と失踪にトランプ政権が手を貸すのは、ジョブズの会社だけではない。ソビエト連邦からの難民セルゲイ・ブリンが共同設立したGoogle も、ICEBlockと同様のツールであるRedDotを削除した。
https://www.neowin.net/news/following-apple-google-pulls-ice-spotting-app-red-dot-from-play-store
Googleはさらに、世界中のすべてのAndroid端末を、ユーザの同意なくアップデートし、Googleが承認していないソフトウェアをインストールできなくすると発表もしている。
https://pluralistic.net/2025/09/01/fulu/#i-am-altering-the-deal
かつて中国が反体制派を標的にGmailをハッキングしたとき、セルゲイ・ブリンは独断で中国からの撤退を決断した。自分のプラットフォームが全体主義的な弾圧に利用されることへの、内臓をえぐられるような恐怖に突き動かされてのことだった。ところが今日、ブリンは自称「独裁者」のために、自社の顧客がICEの拉致から逃れるための最良のツールを取り上げている。なあセルゲイ、同じソビエト難民の息子として言わせてもらうが、それはずいぶんとヴィシーな裏切りだぞ、同胞よ。
トランプの政策のもとでは、AppleもGoogleも現在の姿では存在しえなかったはずだ。両社とも「法に従わなければならない」と言うが、両社ともに合法的命令に従っているのではない――独裁者が自社の顧客を拉致するのを、法の要求を超えて積極的に加担しているのだ。
中国がGoogleのユーザを標的にしたとき、Googleは国を去った。欧州連合がサードパーティのアプリストアの受け入れを命じたとき、Appleは欧州からの撤退をちらつかせた。
https://pluralistic.net/2025/09/26/empty-threats/#500-million-affluent-consumers
ところがパム・ボンディがAppleとGoogleに自社の顧客の一斉摘発への協力を命じたとき、ブリンもクックも裁判所の命令すら求めなかった。
封建的セキュリティの破綻を示す、これ以上ない好例である。同時に、「監視資本主義」論への見事な反証でもある。Googleは利益のためにユーザを監視する「ならず者資本主義者」であり、一方Appleは個人データではなく金銭を回収するから善良な資本主義者だ、という主張への反証だ。
https://pluralistic.net/HowToDestroySurveillanceCapitalism
もちろん、Appleもユーザを監視している。そして、App Storeの密閉された泡の中にユーザを閉じ込めているからこそ、Appleの監視から身を守るソフトウェアのインストールさえブロックできてしまう。そして今やAppleは、トランプ政権の最も暴力的な人権蹂躙プログラム――我々の数千の隣人の大量拉致と失踪――に加担した。
まさに、今やすべての企業が「ならず者資本主義者」なのだ。結局のところ、企業の問題の本質は、ビジネスモデルが広告の表示に基づくか課金に基づくかではなかった。利益のためにユーザを搾取しても逃げおおせられるかどうか、それだけではないか。
Pluralistic: Apple’s unlawful evil (06 Oct 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: October 6, 2025
Translation: heatwave_p2p