以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「Tiktokification shall set us free」という記事を翻訳したものである。
マーク・ザッカーバーグにとって、あなたの友人は厄介な存在だ。友人こそがあなたをプラットフォームに引き寄せた理由であるにもかかわらず、彼らは頑なに「エンゲージメントの最大化」に沿った形で交流しようとしない。あなたと友人がひとしきり会話を終えてログオフするたびに、ザッカーバーグは収益を失う。
考えてみれば当然だが、定義上、あなたと友人は多くの文脈を共有している。たいていの物事に対して、おおむね同じように感じている。消費するメディアもだいたい同じなら、見聞きするニュースもだいたい同じだ。あなたと友人はさまざまな形で互いの人生を豊かにしているが、互いを驚かせることはあまりない。ふつうの日に、あなたの友人が突拍子もない考えや発見を持ち出してきて、何時間も白熱した議論に発展する――なんてことはまず起きない。
議論することがあっても、激しくぶつかることは稀だ。もちろん「友好的な意見の相違」はある(これも定義上)。しかし、激しく、苛立たしく、しかも抗しがたい口論を延々とふっかけてくるような友人がいたとしたら、そいつはもはや友人とは呼べない。
Facebookは、人々を友人とつなげることで爆発的な成長を遂げた。だがザッカーバーグはすぐに理解する。収益を最大化する道は、見知らぬ他人の投稿を同意なくあなたの目に押し込み、長く不毛な口論に没頭させることにある、と。
しかし、それにも限界があった。我々の大半は、見知らぬ人に大脳辺縁系をいたぶられるのが好きではない。「トランプ」という言葉を聞くだけでうんざりする人ならおわかりだろうが、トロロクラシー[trollocracy:荒らし政治]のもとで生きるのは消耗するものだ。
そこに登場したのがTikTokだった。TikTokは、あなたを怒らせない見知らぬ他人とつなぐ方法を見つけ出した。TikTokは「エンゲージ」の獲得に報酬を与えることで、あなたへの広告表示回数を最大化させるという仕事を、世界中の目立ちたがりの若者たちに外注したのだ。彼らは神が与えたあらゆる時間を費やし、あなたをTikTokに釘付けにする方法を考え続けた。
これはとんでもなく成功した。あまりに成功しすぎて、TikTokはズルまでできるようになった。10億ものケーブルテレビ的チャンネルの中からどれをあなたに最も長く見せるかというアルゴリズムの推定を、「加熱ツール」で上書きし、一部の目立ちたがりに「TikTokこそ自分に最適なプラットフォームだ」と錯覚させたのである。
https://pluralistic.net/2023/01/21/potemkin-ai/#hey-guys (邦訳)
ザッカーマスク式ソーシャルメディアのボスにとって、TikTokは激しい羨望の的となった。これこそ究極のトム・ソーヤー式ロボット塀塗りマシン、自己完結型の永久機関であり、人々を動機づけて互いを説得させ、あなたのために金を稼ぐよう仕向ける仕組みだったのだから。Facebook、Instagram、Twitterは大きく舵を切った。あなたが大切にする人々の発言を表示する路線から、幼少期に親から十分な愛情を受けられなかった人々が、あなたの承認(とプラットフォームとのレベニューシェア)を勝ち取ろうと必死にレモンを鼻に突っ込むショート動画を表示する路線への転換だった。
それはうまくいった。ある程度は。問題は、その「コンテンツクリエイター」の中には本当に優秀な人材がいて、しかも誰一人として振り回されることをよしとしないことだった。彼らがプラットフォームにいる理由は自分自身の生活を向上させることであり、プラットフォームのオーナーや経営陣の利益のためではない、と至極まっとうに考えていた。彼らはあなたの友人よりも「エンゲージング」かもしれないが、はるかに口うるさく、プラットフォームの運営に口を出す権利があると感じていた。
では、億万長者の独我論者はどうすればいいのか。答えは明白だ。「AIクリエイター」である。「AIクリエイター」は「クリエイター」と同様にプラットフォームへのエンゲージメントを最大化し、あなたの顔面のあらゆる穴に広告を詰め込む――しかし「クリエイター」と違い、プラットフォームに何の要求もせず、ひたすら株主と経営陣のために存在する。人間のいない世界という独我論者の究極の夢を完璧に実現してくれる。
https://pluralistic.net/2026/01/05/fisher-price-steering-wheel/#billionaire-solipsism (邦訳)
だが、この計画には問題がある。あなたの友人はプラットフォームにとって負債ではない。その友人こそ、プラットフォームの唯一にして最大の資産なのだ。プラットフォームがあれほど「粘着性」を持つのは友人がいるからだ。プラットフォームが「ドーパミンループをハックする」わけではない。ただあなたの友人を人質に取っているだけだ。友人のことは大好きでも、彼らは途方もなく面倒くさい存在でもある。今週末にどのボードゲームをするかすら合意できないのに、Facebookを離れる時期とその移行先について意見がまとまるわけがない。
https://pluralistic.net/2023/01/08/watch-the-surpluses/#exogenous-shocks
ザッカーバーグやマスクへの憎しみよりも友人への愛のほうが強い限り、あなたは彼らのプラットフォームに縛り付けられたままだ。プラットフォームのボスたちはそれをよく理解しており、あなたに与える苦痛を、プラットフォームへの憎悪が友人への愛をちょうど上回らない水準に慎重に調整している。
しかし、プラットフォームのボスたちはあなたの友人への愛に依存しているにもかかわらず、友人を負債と見なしている。友人はあなたとの関係を、広告視聴時間の最大化ではなく自分たちの満足の最大化に合わせて構築しようとする「理不尽な」存在だからだ。それゆえプラットフォームは意図的にあなたを友人から切り離そうとしている。フィードに占めるフォローする人の投稿の割合を最小化し、代わりにますます代替可能な投稿者――トロール、クリエイター、チャットボット――で埋め尽くしているのだ。
ここで重要なのは代替可能性だ。個人的なつながりのある人々の投稿で構成されたフィードは非代替的であり、見知らぬ他人の投稿フィードと交換することはできない。友人はあなたの人生において特別な役割を果たしており、見知らぬ人には――たとえどれほどクールであろうと――替わりは務まらない。
一方で、アルゴリズムが選んだ素人芸フィードは、別のアルゴリズムが選んだ素人芸フィードとおおむね等価だ。パフォーマーたちが複数のプラットフォームを掛け持ちしている場合、その等価性は倍増する。極めて魅力的で面白いVlog Brothersの動画を、YouTubeで見ようがTikTokで見ようがInstagramで見ようが、あなたにとっては何の違いもない(プラットフォームのボスにとっては大問題だが)。そしてAIスロップで構成されたフィードに至っては、等価性は5倍に跳ね上がる。現代科学が生み出しうる中で、文字通り最も交換可能な動画なのだから。
つまり、こういうことだ。プラットフォームは、友人たちがチャットボットのように振る舞おうとしないことへの逆上から、自社の最も重要な商業資産を自らシュレッダーにかけている。日に日に、あらゆる面で、プラットフォームは競合サービスへの乗り換えを容易にしているのだ。人間のいない世界という億万長者の独我論者の夢を追い求めながら。
https://pluralistic.net/2022/02/17/live-by-the-swordlive-by-the-sword/#unfriending-tom
Pluralistic: Tiktokification shall set us free (17 Apr 2026) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: April 17, 2026
Translation: heatwave_p2p