以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「Load-bearing」という記事を翻訳したものである。

Pluralistic

壁の中からは、実に奇妙なものが出てくる。我が家は1949年築で、我々は3代目の住人にあたる。前の持ち主たちが何をやっていたのか見当もつかないが、かつて誰かが通電中の裸線だらけのジャンクションボックスを取り付け、そこに丸めた新聞紙を詰め込んでいた(!)。キッチンの窓に防湿シートを入れなかった件については、話し出したらきりがない(それが発覚したとき、家の正面がまるごと崩れ落ちるまであと一揺れというところだった。修理には余計に1万9000ドルかかったが、正面を丸ごと建て直すよりはまだ安く済んだ)。

さらに、家の側面には無許可で設置された排水設備まであった。だが、その排水溝は何者かによってコンクリートで埋められていた(!!)おそらく(記録には残っていないが)建築検査官の不興を買ったのだろう。理由として、それくらいしか思いつかない。この事実が判明したのは入居後初めての大雨の日で、水はすねの高さまで達していた(!!!)。

だが、何より奇妙で、何より肝を冷やしたのは、品質も位置も役割も怪しげな「構造材」の数々だった。中には、何かを支えているように見えるだけで、よく調べてみると何にも固定されていない、ただ宙に浮いた2×4材にすぎないものもあった。業者がジャッキを据えてから、そうした得体の知れない柱を取り外してみたら、実は何ひとつ支えていなかった――そんなことが一度ならずあった。

このやり方をどう評価するかは人それぞれだろうが、白黒がはっきりつくことだけは確かだ。縦の部材を外してみて何も崩れなければ、それは荷重を支える部材ではなかったと断言していい。

(これはAIについての比喩である。)

「デジタル主権」の話題が出るたびに、うんざりして目を回したくなるのも無理はない。レトリックとしての「デジタル主権」とは、政治家が「環境影響評価をすっ飛ばして、AIデータセンターをクソほど建てようじゃないか」と言うための符牒にすぎない。

https://datacentremagazine.com/technology-and-ai/keir-starmers-2bn-pledge-how-the-uk-plans-to-advance-ai

しかし、AIはデジタル主権とは何の関係もない。荷重を支えるものではないからだ。それを理解するには、ちょっとした思考実験をしてみるだけでいい。カナダから、あるいは英国から、EUから、米国から、チャットボットをすべて取り除いたと想像してみてほしい。何が崩れ落ちるだろうか?

大事なものは何ひとつ崩れない。

国、地方、自治体を問わず、あらゆる行政機関はこれまで通り機能し続けるだろう。大企業も中小企業も、変わらず商売を続ける。家庭も無傷で済む。例外は最年少の家族で、彼らは再び自分で宿題をやらねばならないという屈辱と退屈を味わう羽目になる。

かといって、「デジタル主権」が中身のない空騒ぎだと言いたいわけではない。我々の国家の壁の中には、荷重を支えるデジタルの部材がぎっしり詰まっている。ただ、それが想像しうる限り最も退屈で、どこにでもある、ありふれたクソみたいなテクノロジーだというだけの話だ。

たとえばMicrosoft Office 365である。M365を取り上げれば、あらゆる省庁は崩壊し、あらゆる企業は店を畳み、大半とまではいかずとも多くの家庭が深刻な事態に陥るだろう。

そして、ここからが問題だ。MicrosoftのCEOであるサティア・ナデラは、自腹で100万ドルを払い、就任式の壇上でトランプの背後に並んだテック企業CEOたちの悪名高い顔ぶれに加わった。

https://apnews.com/article/trump-inauguration-tech-billionaires-zuckerberg-musk-wealth-0896bfc3f50d941d62cebc3074267ecd

Microsoftはトランプの「エプスタイン記念ボールルーム」に1000万ドルを寄付した。

https://www.geekwire.com/2026/leaked-list-shows-what-microsoft-amazon-and-other-tech-giants-are-giving-for-the-white-house-ballroom

Microsoftは、トランプによる人種差別的な迫害を支える事務処理基盤を提供している(M365を取り上げれば、ICEは崩壊するだろう)。

https://www.theguardian.com/us-news/2026/feb/17/ice-microsoft-technology-immigration-crackdown

Microsoftフランスのトップは、仮にトランプがフランス市民のデータ(あるいはフランス政府のデータ)を監視するよう命じた場合、同社はそれに秘密裏に従うだろうと認めている。

https://www.forbes.com/sites/emmawoollacott/2025/07/22/microsoft-cant-keep-eu-data-safe-from-us-authorities

極めつけはこれだ。Microsoftは、職務上の行為でトランプの怒りを買った国際機関の公職者たちから、M365とOutlookへのアクセスを奪ってきた。その皮切りとなったのが国際刑事裁判所の主任検察官で、彼はネタニヤフに対するジェノサイドの逮捕状を請求した後、アカウントを失った。

https://www.computerweekly.com/opinion/Microsofts-ICC-email-block-reignites-European-data-sovereignty-concerns

これはデジタル主権をめぐる、278台の消防車が駆けつけてもおかしくないほどの、白熱の大炎上だ。M365は――減税や反トラストの手心と引き換えにトランプ政権と一体化したOracle、Google、Apple、Amazonら米国テック大手のクラウドソフトウェアともども――まさに荷重を支えている。さらに悪いことに、その2×4材はシロアリと乾燥腐朽に蝕まれているのだ。

デジタル主権は、これ以上ないほど現実の問題だ。ただ、それはAIとは何の関係もない。AIは荷重を支えてなどいない。荷重を支えているのは、独占テック企業の退屈極まりないクラウドソフトウェアのほうだ。そして我々は、それを信頼することなどできない。

https://pluralistic.net/2026/01/01/39c3/#the-new-coalition

Pluralistic: Load-bearing (16 Oct 2026) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow

Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: October 15, 2026
Translation: heatwave_p2p