以下の文章は、電子フロンティア財団の「Supreme Court Extends Antitrust Protections to App Store Customers」という記事の翻訳である。
月曜、米国連邦最高裁判所は、AppleのApp Storeでアプリを購入する消費者は直接購入者であり、反トラスト法の救済を求めうるとの判断を示した。この判断はAppleのみならず、アプリストアを運営する他の企業や、別の文脈における反トラスト法にも大きな影響を与える可能性もある。また、この判断は新たな法的原理を作り出すものではなく、アプリストアが生み出した新たな事実にもとづく文脈に、既存の法律を適用するものである。
1977年以降、法廷は間接購入者による訴訟を反トラスト法の適用外とみなしてきた。その判断が示されたのはイリノイ・ブリック社とイリノイ州との訴訟(Illinois Brick Co. v. Illinois)だった。同州は最高裁で、レンガ製造業者が州政府の新規建設プロジェクトの契約を交わした石工請負業者に販売する価格を業者間で共謀して操作したことにより、同州に損害を与えたと主張した。裁判所は請負業者のみが価格談合の申し立てに異議を申し立てる権利を有し、下流製品の間接購入者(本件における原告の州政府)は訴訟を起こす権利を有していない、と判示した。
このイリノイ・ブリック判決は、一般消費者が反競争的慣行を提訴するのを防ぎ、裁判所のドアを閉ざすために用いられてきた。イリノイ・ブリックの請負業者のような中間の購入者が訴訟を起こすことは考えにくく、価格協定などの違法行為は事件として扱われてこなかった。また州裁判所・州議会の多くは、イリノイ・ブリック法理は州独自の反トラスト法には適用されないとの判断を示している。
月曜の判断は、連邦法におけるイリノイ・ブリック法理を支持する一方で、アプリストアからアプリを購入する消費者は、Appleが主張する間接購入者ではなく、直接購入者であることを確認している。したがって、Appleに対する訴訟が継続することになった。
ソフトウェア開発者はAppleのApp Storeで独自の価格設定によりアプリを販売できるが、Appleは全セールスに対して30%の手数料を課している。原告はこのAppleの手数料が、競争的な市場にくらべて(独占的な市場の場合に)より高額な消費者価格につながっていると主張する。判事はAppleの行為が反トラスト法に違反するかどうかを判断してはいないが、原告らは直接購入者であり、彼らが起こした訴訟は地裁で継続すべきだと判断した。
最高裁の判断は賛成5、反対4。常に意見を共にする保守派判事ではなく、穏健派に加わったブレット・カバノー新判事が意見書を書いた。
もし裁判所がAppleのアプリ販売手数料の30%がアンチトラスト法に違反するという判決を下せば、サードパーティによるモバイルアプリ市場の扉が開かれることになる。また、Androidの世界では、アプリ市場の選択肢が増えることにもつながるかもしれない。(EFFを含む)多数のアプリ開発者やユーザは、アプリストアが課す独断的な制限にいらだちを覚えている。この裁判は、広範囲に影響を及ぼすことになるかもしれない。
過去の世代の反トラスト法の制限が一般化していたことを考えれば、最高裁判所が反トラスト法の執行を後押ししたことを歓迎したい。Appleの訴訟は今後も継続していくことになるが、月曜の決定は、iOSユーザに訴訟を起こすことを保証し、プラットフォーム企業が消費者による訴訟から逃れつつ、独占力を悪用して暴利を貪ることを許さないということを確認しているのだ。
Supreme Court Extends Antitrust Protections to App Store Customers | Electronic Frontier Foundation
Publication Date: May 16, 2019
Translation: heatwave_p2p
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