以下の文章は、電子フロンティア財団の「FTC Sues Location Data Broker」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

スマートフォンアプリの位置情報ブローカーは、我々のプライバシーと安全への脅威を増大させている(134567891011121314)。あなたがアプリをダウンロードしてボタンをワンタップしただけで、そのアプリはあなたの一挙手一投足を追跡し、それをブローカーに送信する。そして、ブローカーはあなたの位置情報を高額入札者に販売する。

この有害な市場を終わらせようと取り組む連邦取引委員会に喝采を送りたい。FTCは先日、位置情報ブローカーのKochavaが不公正な商慣習に関する連邦政府の禁止規定に違反しているとして提訴した。このFTCの訴状は、この業界がもたらす危険性を物語っている。

Kochavaは、莫大な位置情報データを収集・収益化している。同社は1億2500万人のアクティブユーザから取得した940億データポイントへのアクセスを月単位で顧客に提供しているという。FTCがKochavaのたった1日分のデータを分析しただけでも、6000万台のデバイスから3億データポイントが取得されていることがわかった。

Kochavaのデータを用いれば、容易に個人を特定できる。FTCは以下のように主張している。

Kochavaが提供する位置情報は、匿名化されていない。モバイルデバイスのMAID[モバイル広告ID(Mobile Advertising ID)]とジオロケーションデータを組み合わせれば、モバイルデバイスのユーザや所有者を特定可能である。たとえば、データブローカーの中には、MAIDを消費者の使命や住所などの「オフライン」情報を照合するサービスを宣伝している企業がある。

だが、そのようなサービスに頼らずとも、位置情報は個人を特定するために使用しうる。Kochavaが販売する位置情報データには、通常、各MAIDにつきタイムスタンプが付された信号が複数含まれる。これらの信号を地図上にプロットすることで、端末所有者を推定できる。たとえば、夜間のモバイルデバイスの位置は、消費者の自宅住所と一致する可能性が高い。公的記録等の記録から、特定住所の所有者や居住者の氏名を特定することができる。

FTCによれば、Kochavaの位置情報は個人に危害を及ぼすおそれがあるという。

中絶クリニックを訪問し(中絶をした、あるいは中絶を検討し)た消費者を特定するために、このデータが用いられる可能性もある。実際、……女性のリプロダクティブ・クリニックを訪問したモバイルデバイスを特定し、そのモバイルデバイスから自宅まで追跡することもできる。

同様に、礼拝所、DVシェルター、ホームレスシェルター、依存症回復センターの訪問者を特定するためにも、Kochavaのデータが使われるおそれがあるとFTCは説明している。こうした位置情報プライバシーの侵害は、FTCの言葉を借りれば、「スティグマ、差別、身体的暴力、精神的苦痛、その他の危害」に人々を晒すことにほかならない。

FTC法では、「商取引における、または商取引に関わる不公正または欺瞞的 な行為・慣行」を禁止していいる。同法のもとでは(1)その行為が「消費者にただな損害を与える可能性がある」、(2)その行為が「消費者自身によって合理的に回避できない」、(3)その損害が「消費者や競争への相殺的利益を上回る」場合、その慣行は「不公正」とみなされる。

FTCは、Kochavaによる位置情報の仲介が不公正であり、したがって違法であることを強力に立証している。我々は裁判所がFTCに有利な判決を下すことを期待している。そうすれば、他の位置情報ブローカーも、自社のビジネスモデルを真剣に見直すか、同様の判決に直面するリスクを負うことになるだろう。

FTCは他にも、市民のデジタルライツの保護に向けて、多くの歓迎すべきアクションを起こしている。先月、FTCは商業的監視に対する新たなルールの作成を検討していることを発表した。今年に入り、FTCはアカウントのセキュリティデータをターゲット広告に使用したとしてTwitterに罰金を科し、「修理する権利」を保護するために訴訟を起こしEdTechによる児童の監視に対するポリシーステートメントを発表している。

FTC Sues Location Data Broker | Electronic Frontier Foundation

Author: Adam Schwartz / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: September 7, 2022
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header image: Boston Public Library (CC BY 2.0) / Kelli Tungay / Marwan Ahmed