先週、米民主党は党の政策綱領を策定する委員を指名した。その15人の委員のなかには、弁護士で前下院議員、MPAA(アメリカ映画協会)ロビイストのハワード・L・バーマンが含まれていた。彼はSOPAの後援者の1人であり、P2Pネットワークの破壊工作を合法化しようとしたことさえある。また、彼はそのキャリアを通じてハリウッドから資金提供を受けている。
先週、ヒラリー・クリントン、バーニー・サンダース、民主党全国委員会のデビー・ワッサーマン・シュルツ委員長が、党の政策綱領を策定する委員を指名した。
以前に報じられていたように、15人の委員が選ばれ、そのうち6人をクリントンが、5人をバーニー・サンダースが、4人をワッサーマン・シュルツが指名した。報道ではメンバーの一部だけが紹介されているが、TorrentFreakの読者に特に気になるであろう人物――ハワード・L・バーマン――が混じっている。
ハワード・L・バーマンは、弁護士であり、前下院議員である。彼はCovington & Burlingにロビイストとして雇われ、「貿易協定、二国間協定、著作権および関連法制における知的財産問題」に関して、MPAA(アメリカ映画協会)を代表している。
バーマンがその政治的キャリアを通して、大手スタジオから資金提供を受けてきたという事実には、何の驚きもない。以下の画像からもわかるように、上位5位までの資金提供者はすべて大手映画会社である。
1941年に生まれ、映画産業とともに歩んできた彼は、「ハリウッドから来た議員」との異名を持ち、長年にわたって、知的財産権の保護をめぐる激論の渦中にいた。
2007年、のちにWikileaksによって確認されることになるのだが、バーマンは模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の主要支援者の1人であった。
それからわずか5年後、バーマンは史上最大の著作権議論を巻き起こしたStop Online Piracy Act(SOPA)の共同提案者として、その渦中にいた。
当時バーマンは「米国知的財産の窃盗は、正当な対価のクリエイティブ・チェインを害するのみならず、経済成長を妨げ、われわれのコミュニティから雇用を奪い、米国の未来のイノベーションを脅かすものである」と述べていた。
こうした発言自体はよくある類のものであるが、実際バーマンはSOPAに関する公聴会で、執拗にGoogleを攻撃し続けた。2011年11月16日、バーマンはGoogleに、パイレート・ベイのインデックスについて問いただした。
彼は「知的財産権の保護と、インターネットの表現の自由を確立する使命は、なんら矛盾するものではない」と強弁し、Googleがパイレート・ベイのサイト全体を検索結果から削除することを拒否していることを非難した。
「いいだろう。では、わたしに説明してくれ」と、バーマンはGoogleの著作権担当顧問キャサリン・オヤマに詰め寄った。
「パイレート・ベイは悪名高いサイトであり、事実、設立者たちはそのサイト名で誇らしげに宣言している。実際、パイレート・ベイの運営者たちは欧州で有罪判決をくだされた。にも関わらず……、米Googleは検索結果にパイレート・ベイへのリンクを表示し、米国の消費者をそのサイトに送り込んでいる。なぜGoogleは検索結果からパイレート・ベイを削除しないのか?」と彼は問いただした。
オヤマはそれに答えようとし、Googleがこの問題の解決に数千万ドルを投じてきたことを述べ、「世界中の数百人のスタッフがこの問題に取り組んでいます」と述べた。「著作権に関しては……」
バーマンは彼女の発言を遮り、ふたたび質問を繰り返した。なぜサイト全体を検索結果から削除しないのか。バーマンに与えられた時間のなかで、オヤマはDMCAは特定のリンクの削除を義務づけており、ドメイン全体の削除を義務づけているわけではない、と何度も説明しようとしたが、そのたびに発言はバーマンに遮られた。その代わり、彼はオヤマに、Googleは「デジタル窃盗」を止めようとは思っていないのではないか、と詰め寄った。
「DMCAは機能していない。明らかだ」と彼は言う。「あなた方はこれまでDMCAの何を見てきたのか。現状を見てなお、DMCAは何ら問題ありません、現状維持でいいです、と?」
こうした議論は現在もなお、DMCA評価プロセスの「テイクダウン・ステイダウン」議論において継続している。もちろん、その一方にはハリウッドがおり、第三者の行為に対する責任をGoogleに求めている。しかし、DMCAにケチを付けるくらいは、バーマンにとっては生ぬるいほうだ。
15年ほど前、Napsterが登場し、BitTorrnetがいまだ日の目を見ていないころ、バーマンはピア・ツー・ピアファイル共有を力づくでねじ伏せる夢を持っていた。2002年、彼はピア・ツー・ピア海賊行為防止法案を提出した。この法案は、著作権者がコンテンツの無断配布を抑止する目的で、ファイル共有ユーザに、通常は認められていない技術的手段を用いる(訳註:クラッキングする)ことを可能にするものであった。
このH.R.5211は、連邦著作権法を修正し、「公衆に開かれたピア・ツー・ピアファイル交換ネットワークでの自己の著作物の無許諾配信、表示、演奏、複製を適正技術を使用して損傷させること」に対する刑事的あるいは民事的な責任から著作権者を保護することを目指していた。
法案には詳しく書かれていないが、ここで言う「損傷(impairing)」行為は、ファイル共有ユーザがコンピュータでファイル共有を不可能にするためのDDoS攻撃やポイゾニング攻撃の婉曲表現であると考えられている。
ウィルスやマルウェアの配布まで含まれてはいなかったが、当時は「フォルダ共有」型の共有アプリが主流であったため、ネットワークを偽造ファイルや偽名ファイルで汚染することも想定されていただろう。いずれにしても、この法案は廃案となった。
一方、バーマンは今日までごお元気なようで、民主党の政策綱領の策定に一役買うことになった。彼のキャリアを振り返れば、彼がどのように貢献するかは言うに及ばないが。
“MPAA Lobbyist / SOPA Sponsor to Draft Democratic Party Platform – TorrentFreak”