ソニー、ユニバーサル、ワーナー・ブラザースなどの大手レコード会社が、米ISPの「Cox Communications」の海賊行為に対する責任を問う裁判をおこした。以前にBMGが起こした裁判と同様、彼らはCoxが反復的な海賊ユーザを黙認していると主張している。被害を受けたとされる著作物は1万を超えており、損害賠償額は10億ドル(約1111億円)を超える可能性もある。
この十数年、著作権者はISPにテイクダウン通知を送付し、加入者による著作物の違法共有を警告してきた。
米国の法律では、プロバイダは「適切な環境において」著作権侵害を繰り返す者のアカウントを凍結する義務を負っており、その責任に対する風当たりはますます強くなっている。
Coxはこれまで何度もその標的とされてきた。以前にBMGがおこした訴訟では、連邦裁判所はCoxに2500万ドルの損害賠償を支払うよう命じている。この判決は控訴審で覆されたものの、再審理が請求されており、安心できる状況にはない。
今週、この問題はCoxさらに重くのしかかることになった。ソニー・ミュージックエンターテイメント、EMIミュージック、ユニバーサル・ミュージック、ワーナー・ブラザース・レコード、その他数社が、Coxは著作権侵害を繰り返す加入者による著作権侵害を黙認しているとして新たな著作権侵害責任訴訟を起こしたためだ。
レーベル側は、Coxが加入者の海賊行為を知った上で寄与しており、実質的にその行為から利益を得ていると主張する。その結果、レコードレーベルやその他の権利者たちが犠牲になっている、と。
「実際、加入者が他者の著作権を侵害するために同社インターネットサービスを使用し、さらには特定の加入者が著作権侵害を繰り返していることを知りながら、Coxは長年に渡ってその行為を抑止するための合理的な措置を講ずることを拒否してきた」と訴状には書かれている。
レコード会社は、これまで権利侵害を抑止するためにCoxに数十万通の通知を送付していたが、Coxが処理する通知の数を積極的に制限していたために、効果はまったくなかったと主張する。
「Coxは著作権侵害を抑止するために原告に協力するのではなく、著作権者から受理する侵害通知の数を一方的に制限し、その『上限』を超える加入者の著作権侵害を意図的に黙認してきた」
Coxは以前、この問題に対処するために「13ストライク・ポリシー」を導入したと強調していた。しかしレーベル側は、BMGの裁判でこれが虚偽であったことが判明していると主張する。
レーベル側は、Coxはこれまで加入者のアカウントを凍結した例はないと強調し、加入者のアカウントが切断されたとしても、すぐに復旧する「ソフト・ターミネーション」が適用されていると主張している。
「この理由は明快である。Coxは加入者の違法活動を抑止する法的義務よりも、自らの利益を優先させたのである。Coxは著作権者に対し、予算の都合上、著作権侵害対策の専従スタッフの数を削減すると告げていたが、その一方で、Coxは同社が助長する大規模な著作権侵害のおかげで劇的に収益を増やしている」
この裁判は著作権侵害を繰り返す加入者に関するものであるため、レーベル側は以前に警告されたことのある加入者が侵害していた楽曲についてのみ訴えている。少なくとも2万人のCox加入者が、悪質な反復的権利侵害者として分類され、中には100回以上の「警告」を受けた加入者も含まれているという。
レーベル側は、Coxが反復的な著作権侵害を意図的に無視していたことは明らかだという。そのような理由により、Coxは寄与侵害と代理侵害の両方の著作権侵害の責任を負うと主張している。
レーベル側は損害賠償として、法定損害賠償あるいは実損分の補償のほか、弁護士費用やその他裁判費用を求めている。
訴状には10,000を超える音楽作品が掲載されており、潜在的な賠償請求額は非常に高額になる可能性がある。法定損害賠償額は、1作品につき最高15万ドル(約1667万円)とされており、理論上は15億ドル(約1667億円)を超えることも考えられる。
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バージニア東部連邦地裁に提出されたコピーはこちらから(PDF)。
Record Labels File ‘Billion Dollar’ Piracy Lawsuit Against ISP Cox – TorrentFreak
Publication Date: August 2, 2018
Translation: heatwave_p2p
Materials of Header Image: PublicDomainPictures / ChristopherPluta