Vox Mediaは、The Vergeの「自作PC」ビデオを批判する動画を投稿したYouTuberを標的にした。同社はYouTubeにDMCA削除通知を送付し、YouTuberのビデオが権利を侵害していると主張した。Voxはその動画を葬り去りたかったのだろうが、むしろ逆効果だったようだ。
The Vergeは著作権の濫用に批判的なニュースメディアとして知られている。
同サイトは、YouTubeのコンテンツIDと著作権削除システムが抱える問題を度々報じている。
たとえば今週、The VergeはYouTubeが恐喝詐欺に利用されていることを報じているし(なおこの問題については我々も先月お伝えした)、EUの第13条の問題についても大々的に伝えており、見出しには我々の知るインターネットが脅かされているとの言葉が踊っている。
これを考えると、The VergeのビデオがYouTubeの著作権削除騒動の渦中にあるとは信じられないかもしれない。
問題の発端は、今週はじめのことだ。YouTuberのカイルは、YouTubeがThe Vergeの親会社Vox Mediaからの削除要請に応じ、彼の動画を削除したことに気づいた。
カイルが昨年The Vergeが公開した「自作PCビデオ」の著作権を侵害したのだという。この問題のビデオは、専門家によればいくつもの大きな間違いがあるとして広く批判を浴びた「ハウツー」ものだった。
元となったThe Vergeの記事は修正が加えられ、現在も公開されているが、ビデオの方は既にYouTubeから削除されていた。しかし、YouTuberらがその間違いに反応して投稿した大量のリアクションビデオは未だにアップされ続けている。
その中に、カイルのリアクションビデオも含まれていた。(訳注:批評のためにThe Vergeのビデオを使用した)彼のビデオは、典型的なフェアユースとされるべきものであった。しかし、Voxはその使用を削除の口実と考えたようだ。ただし、自動的なコンテンツIDによる削除ではなく、直接の削除通知を送りつけた。これにより、削除は手動で行われ、チャンネルに「1ストライク」が課されることになる。
削除の正確な理由は不明だが、多くの人はVoxが批判的な反応を葬り去ろうとしたのだと考えている。これはまさに、典型的な削除の濫用事例と言えるだろう。
批判を葬り去ろうとしたのであれば、完全に裏目に出てしまったといえるだろう。ストライサンド効果の新たな典型例が誕生したことになる。突如として、数十万の視線が不正確なハウツービデオに注がれ、さらに批判的な反応を生み出すこととなった。
たとえばPaul’s Hardwareは、このオリジナルのビデオやその反応、当時の顛末について解説しているのだが、それが再び多くの人の注目を集めている。
朗報としては、世間の厳しい批判を招いたことが、カイルには良い方向に働いたということだ。彼は異議申し立てを行い、ビデオは即座に復旧された。カイルによると、YouTubeはThe Vergeに以下のメッセージを送付したという。
「The Vergeさん、こんにちは。私たちはあなたが著作権通知の中で指摘するビデオの一部または全部が不正確であることを非常に懸念しています」
TorrentFreakはVox Mediaにコメントを求めているが、現時点で返答は得られていない。当面の間は、こちらの無修正のビデオをお楽しみいただきたい。
Vox Targets The Verge Critic With Dubious YouTube Takedown – TorrentFreak
Publication Date: February 15, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: y.becart / CC BY-NC-SA 2.0