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先週、欧州議会は第13条に関するビデオをツイートし、ミームへの影響はないことをアピールした。しかし、このビデオに対して不正確だとの批判が巻き起こった。そして今週、事態はさらに悪化した。このビデオが、EU著作権指令を支持して広くロピー活動を行っていた大手メディア企業が作成したものだったことが発覚したのだ。

今月末、欧州議会議員はEU著作権指令案への最終投票を実施することになっている。

この指令案には、賛否がわかれ、物議を醸している第13条(訳注:事実上、オンラインプラットフォームに著作権フィルターを義務づける条項)が含まれている。

投票までに残された時間がわずかであることもあり、両陣営ともあらゆる手を尽くして自らの声を伝えようとしている。複数の権利者団体が、アーティストやクリエイターの生活のために指令案を支持するよう市民に訴え、その一方で、反対派はオンライン・オフラインの両面での抗議活動を組織している。

興味深いことに、欧州委員会、欧州議会ともに、明確に第13条を支持する立場をとっている。欧州委員会は2月中旬、指令案の反対者を「暴徒(Mob)」と呼び始めた。この記事はのちに、多くの市民の「誤解を招いた」として削除された

そして先週、欧州議会は第13条、第11条を支持するビデオを公表し、注目を集めた。欧州議会の全議員がこの指令案を支持しているわけではないことを考えれば、いささか奇妙な動きであった。最終投票はこれから行われるというのに。

更にひどいのは、海賊党のジュリア・レダ欧州議員が強調するように、ビデオには誤解を招く情報や、明白な虚偽の情報が複数含まれていたことだ。

「ビデオでは、売上高が1000万ユーロ未満または500万ユニークビジター以下のプラットフォームであれば、責任は軽減されると述べられています。これは間違いです。実際には、この両方の基準を満たし、さらに開始から3年未満のプラットフォームに限って、軽減が適用されます」

こうした誤りは、反対する「暴徒」たちを納得させるどころか、激昂させただけであった。これだけでも十分に懸念を引き起こしたのだが、昨日、事態はさらに悪化した。少なくとも、PRの面では。

レダ議員は、議員特権を利用してビデオの出所を探ることにした。その結果、このビデオは欧州議会自身が製作したものではなく、外部の請負業者であるAgence France-Presse(AFP)に委託されていたことが判明した。

製作委託自体は珍しいことではない。外部業者への委託は一般的に行われているし、AFPは評判の高い通信社である。しかし問題は、AFPが昨年9月、第11条を支持するロビー活動を強力に推進してきた組織だということだ。この事実が事態を複雑にした。

レダ議員は「著作権指令の情報を市民に伝える欧州議会のビデオは、大きな利益相反を抱えた組織が製作したものです」と調査結果をまとめている

たとえ欧州議会が直接、ビデオ内の文言を作っていたとしても、外部の利害関係者を巻き込んだことは、PR的には好ましくないだろう。特にビデオ自体に批判が集中し、ミスリーディングな部分が含まれていたのだから。

公正を期していえば、第13条の反対派もたくさんの間違った情報を流しており、両陣営ともに極端になっているところもある。だが理想的には、欧州議会は少なくとも最終投票が行われるまでは、できるかぎり客観的な立場であるべきであろう。

このビデオは、欧州議会は反対派を激怒させただけで、その意図とはまったくの逆効果を引き起こす結果となった。

同様のことは、先日、海賊版対策企業「File Defense Service」のフォルカー・リエック社長が動かぬ「証拠」を公表したときにも起こっていた。

リエックはしばしば、米国テクノロジー企業が第13条の反対派に資金提供し、欧州政治への攻撃を仕掛けているとして非難した。この信念は、#saveyourinternetのタグを含む、著作権指令に反対するツイートをする人たちの所在地を調査した研究によって強化された。

調査では、ソーシャルメディア分析ツールのTalkwalkerが使用され、全ツイートのうち、米国、とくにワシントンDCからのツイートが著しく多いことが明らかになった。一部のケースでは、EUよりも米国からのツイートのほうが多かったものもあった。

報告書より(現在は削除されている

この調査結果は、米国の企業利益がEUの政治に影響を及ぼそうとしている証拠とされ、欧州議会議員への書簡にも記載された。しかし、その後すぐに、このデータに欠陥があることが判明した。

Talkwalkerは、ユーザが自分の所在地を共有していない場合、その所在地をワシントンDCに帰属させていたことが明らかになったのだ。これこそ、ジュリア・レダらが、米国にいないにもかかわらず、そう扱われた理由だった。

意図的な間違いというわけではないのだろうが、この顛末が極めて残念なものであったことは疑いない。さらにこれは、第13条の反対派に対して、火に油を注ぐだけものであった。「暴徒」呼ばわりされた彼らが、今度は「ボット」呼ばわりされたのだ。

この一件は、多くの人を現実のデモ活動に駆り立てた。今週、ドイツ・ベルリンにあるCDU本部前で行われたデモに集まった人々は、口々に「我々はボットではない!」と叫んだ。もちろん、彼らはワシントンDCから駆けつけたわけではない。

これから数週間、ドイツを中心に欧州各地で、オフラインのデモ活動が多数計画されている

ジュリア・レダ議員は、Redditで市民からの質問に答え、多くの国の人々に参加を求めた。こうしたデモ活動は、欧州議員へのメールやツイートよりも強い影響力があるのだという。

「デモ活動は、市民が本当に問題を懸念していることを示す最も強力な証拠であり、そうした活動が多くの欧州議員の態度を変えてきました。しかし、ドイツだけで抗議活動をしていては、この投票に勝つことはできません。他の国にも広がらなければならないのです」とレダ議員は言う。

もちろん、第13条を支持する人々も、粛々とロビー活動や抗議活動を続けている。

欧州議会がこれ以上積極的にキャンペーンに参加することは、決して賢明とは言えない。このビデオの一件は、そうした試みによって人々を説得することはできないことを示している。それどころか、この一件は、完全に裏目に出たと言えるだろう。

European Parliament’s Pro-Article 13 Video Has Backfired – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 08, 2019
Translation: heatwave_p2p