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依然として、多くの国で正規のチャンネルではアクセスできない映画が存在している。そのような場合には海賊版に頼るのは仕方ないというのが、ドイツ映画界の鬼才、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の考えだ。曰く、海賊版は世界的に最も成功した配給形態だという。

大多数の映画製作者は、インターネット上の海賊版を快く思っていない。海賊版ではなく、有料のプラットフォームやサービスを利用してくれることを望んでいる。

50年以上のキャリアを持ち、栄誉ある賞を多数受賞してきたドイツ人映画監督、ヴェルナー・ヘルツォークにとってもそれは事実である。

Photo: Raffi Asdourian (CC BY 2.0)

ヘルツォーク監督は先日、スイス・ニヨンで開催されたヴィジョン・デュ・レール国際映画祭で特別功労賞を受賞した。ScreenDailyの報道によると、マスタークラスでの議論が海賊版問題の話題に及んだとき、ヘルツォークは興味深い考えを明かした。

ヘルツォークが1962年にはじめて自身の映画を公開したころには、映画の海賊版の問題は存在していなかった。しかし、近年になってその状況は一変した。

議論の中で、ウクライナの映画プロデューサー、イリア・グラッドスタインはヘルツォーク監督の映画は適法な入手手段がほとんど存在しない、と発言した。彼の映画を観るためには、トレントサイトを利用しなければならないのだという。海賊版は映画製作者の間ではセンシティブな話題だが、ヘルツォークはその可能性を明確に認めた。

「海賊版は世界で最も成功した配給形態です」とヘルツォークは聴衆に語った。

76歳を迎えた映画監督は、海賊版を好んでいるわけでも、推奨するわけでもないとしながらも、正規の手段が存在しない場合は、自分の作品を無断でダウンロードしても構わないという。

「あなたの国のNetflixや国営テレビでは、(私の映画は)手に入らない、だからあなたは海賊となって私の映画にアクセスした」とヘルツォークはいう。

「私も自分の作品からいくばくかのお金を稼ぎたいので、それ(訳註:海賊版)は決して好ましいものではありません。ですが、あなたのように、インターネットで私の映画を盗まなきゃ観られないというのであれば、いいでしょう、私は認めますよ」

その後も、利用可能性の話題は続いた。近年、ヘルツォーク監督が10代の若者からよくされる質問は、「あなたの映画はどこで観られますか」というものだという。

幸いなことに、現在、彼のバックカタログは、ストリーミングプラットフォーム、Blu-ray、DVDを通じて容易にアクセスできる。海賊版サイトめぐりを知っているであろう15歳の若者にとって、正規の入手手段が存在するというのは望ましいことだ。

ヘルツォークは、最も尊敬されている映画製作者のなかにも、海賊版から幾ばくかの恩恵を受けている人もいると語っている。彼らにとって、自身の作品をより多くの人に観てもらうことのほうが重要なこともあるのだという。

海賊版を「撲滅」するためには、まずは作品への正規のアクセス手段を十分に提供するところからはじめなくてはならない、ということなのだろう。

Top Film Director Sees Piracy as Most Successful Form of Distribution – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: April 18, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Erinc Salor / CC BY-NC-SA 2.0
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