以下の文章は、TorrentFreakの記事「YouTube “Very Concerned” About Article 13, Mulls Copyright Claim Tweaks」を翻訳したものである。

TorrentFreak

 YouTubeは現在、新たなEU著作権指令が成立したことを受け、未来に目を向けている。意図せぬ結果が生じることを懸念しつつも、同社は支持者たちに戦いを諦めないよう訴えている。一方、著作権者による厄介な手動クレームを引き起こしている僅かな抜粋の利用や付随的な利用についても調査を進めているという。3月26日、EU議会は問題の第13条(最終条文では17条)を含む、新たな著作権指令を承認した。

4月中旬、最後の手続きとなるEU閣僚理事会では、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、フィンランド、スウェーデンが反対に回ったものの、指令案は承認された

この指令の最大のターゲットはYouTubeだ。著作権者、特に音楽業界は、このプラットフォームが公正な市場対価を支払うことなくコンテンツを使用することを防ぎたいと考えている。

その願望が現実になるかどうかは不明だが、YouTubeは「クリエイター・ブログ」に記事を投稿し、著作権指令にはまだ深刻な懸念があると述べている。

「私たちは、最近EUで可決した著作権指令の第13条(第17条に変更)についても非常に懸念しています」とYouTubeのスーザン・ウォジスキCEOは記している。

「私たちは著作権者の権利を支持しています――YouTubeは今日の音楽会社、テレビ放送局のほぼすべてと契約を交わしています――が、新たな指令の曖昧で、テストされていない要件について懸念しています」

第17条は、ライセンス契約を交わしていないコンテンツの著作権侵害を防ぐために、インターネットプラットフォームにアップロードフィルタのインストールを事実上義務づけているのではないかと、多くの企業が懸念している。YouTubeはすでにこうしたシステムを導入しているが、厳格なアップロードフィルタは脅威になりうるとウォジスキCEOは言う。

「(第17条は)YouTubeのクリエイターがアップロードできるコンテンツを大幅に制限することになるかもしれません。このことは、伝統メディアや音楽会社がYouTubeから得られる利益が減少し、YouTubeでビジネスを構築してきた数多くの欧州のクリエイターに壊滅的な影響を及ぼす可能性があります」

第17条はEUレベルでは承認されたが、加盟国はその条項を国内法に落とし込まねばならない。そのプロセスは煩雑で、大きな混乱を招く可能性が高い。ウォジスキCEOは、第17条に反対する多数のYouTube支援者たちが、最善の結果を勝ち取るために戦いを続けることを求めている。

「指令は承認されましたが、意図せぬ最悪の結果を回避するために、最終的な施行に影響を及ぼすための時間はまだ残されています。EU加盟国には、新たな規則に即した国内法を整備するために2年間の猶予が与えられています」と彼女は記している。

「私たちはオープンなクリエイティビティのために声を上げ続けなければならない。みなさんの行動はすでに、Change.org史上最大規模の署名に繋がり、国境を超えて互いに手を取り合っています。このムーブメントは終わってはいません。まだ始まったばかりなのです」

最後に、ウォジスキCEOは、YouTubeの主要クリエイターたちから著作権クレーム手続きが悪用されていることへの不満の声が上がっているという。

あるユーザは、10秒にも満たない作品の抜粋を利用したとして著作権クレームを寄せられた、という。なかには間違ったクレームであることもあるという。YouTubeは、この問題に取り組むための準備を進めているという。

「非常に短い(場合よっては1秒)コンテンツや、ビデオの撮影中に入り込んだ店舗内のBGMのような付随的コンテンツについても、当社の手動クレームシステムを利用してクレームが寄せられているとの声が届いています」とウォジスキは言う。

「この問題についてはすでに調査を進めていますが、クリエイターたちから直接聞くことが重要でした。私たちは著作権者とクリエイターとの正しいバランスを取り戻すための改善を模索しています」

こうした著作権クレームは、フェアユースの可能性を全く考慮せずに提出されることが多く、第三者のコンテンツを批評しようとしたり、公共空間で録画するクリエイターを大いに苛立たせている。YouTubeがこの問題にどう対処するのかは不明だが、それがうまく機能すれば、法律の範囲内で作品を使用する人々にとって大きな後押しになることだろう。

YouTube “Very Concerned” About Article 13, Mulls Copyright Claim Tweaks – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: May 01, 2019
Translation: heatwave_p2p