エミネムの版権管理会社とニュージーランド国民党との法廷闘争は、最高裁に持ち込まれることなく集結した。法廷は、エミネムを模倣した楽曲の使用を認めないとしたものの、エミネム側が求めていた22万5000ドルの損害賠償請求を退けた。
キム・ドットコムがニュージーランド史上最大の著作権裁判に巻き込まれる傍らで、同国の国民党は『著作権侵害』問題に直面していた。
2014年、エミネムの版権管理会社は、国民党の選挙キャンペーンがエミネムの楽曲「Lose Yourself」の著作権を侵害したとして同党を提訴した。
当時、国民党を率いていたのは、キム・ドットコムの天敵とも言われるジョン・キー首相だった。Megauploadの訴訟と同様に、国民党とエミネムの版権管理会社との法廷闘争は長引いた。
国民党は対価を支払わずに楽曲を使用したわけではない。実際、キャンペーンの開始にあたっては専門家の助言を求め、「Eminem Esque(エミネム風)」という楽曲のライセンスを取得し、広告に使用した。
同党は非常によく似た楽曲を使用することで、高額なライセンス料を回避しようとしたのだが、高等法院は「Lose Yourself」と「Eminem Esque」は著しく類似しており、著作権を侵害していると認定した(訳註:このあたりの複雑な事情については、こちらの記事に詳しい)。
2017年、裁判所は国民党に著作権侵害の損害賠償として60万ドルの支払いを命じた。しかし、両者ともこの額を不服として控訴。翌年の控訴審では、損害賠償額を22万5000ドルに減額した判決が下された。
エミネムの版権管理会社 Eight Mile Styleは、この判決を不服として、最高裁に控訴する意向を示した。
2週間前に開かれた審問では、同社弁護士のゲイリー・ウィリアムズ氏が、賠償額が少なすぎると訴えた。政治広告ということを考えれば、著作権者が使用料を増額するのは当然だと主張した。
Stuffの報道によると、ニュージーランド最高裁は今週、上告を棄却した。最高裁は、国民党が同曲の使用を認められていなかったことは疑いないが、そのことが損害賠償をめぐる法廷闘争の長期化を正当化するわけではないという。
「国民党が侵害のリスクに目をつぶっていた、または、気にはしていなかったとの主張を否定した下級審の一致した事実認定を考慮すると、
本件において追加的な損害賠償が裁定されるべきだったとする主張が十分に成功する見込みがあるとは考えにくい」と最高裁は記している。
これによって、5年にわたって続いた法廷闘争は事実上終結した。国民党は著作権侵害問題から開放されホッとしていることだろう。しかし、キム・ドットコムの戦いはまだまだ続く。
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国民党の選挙キャンペーンで使用された楽曲が、オリジナルのエミネムの曲にどれくらい似ているのかと疑問に思われた方は、こちらでご確認を。
Supreme Court Refuses Eminem Publisher’s Case Over Copyright Damages – TorrentFreak
Publication Date: May 15, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: LoboStudioHamburg