TorrentFreak
『ゲーム・オブ・スローンズ』の最終エピソードが放映された。史上最大級の海賊版トピックの歴史もこれで幕を閉じることになる。エピソードの流出や今後破られることのないであろう驚異的な海賊版ダウンロード記録など、同番組は数年にわたって海賊版界隈の注目をさらってきた。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン・フィナーレといえば、高視聴率を叩き出すとともに、海賊版需要の最も高いエピソードでもある。
シリーズ全体の終了ともなれば、俄然関心は高まる。
実際、ファイナルシーズンのストーリー展開にはかなりの不満が噴出しているものの、数百万人が公式チャンネル、非公式チャンネルを通じて「チャンネルを合わせている」。
公式放送では米国1360万人が視聴し、HBOの番組としては過去最高の視聴率を記録した。そしてもちろん、海賊版にも注目が集まった。
無数の人々が海賊版に群がり、最高潮に達した昨日午後には、20万を超える人々が3つのトレントに殺到。そのうち1つは単独で13万のユーザが集まった。
膨大な数ではあるが、かつての記録を更新するまでには至らなかった。2015年には、25万人以上が同時に1つのファイルを共有した。この減少の背景には、海賊版エコシステムの進化がある。
トレントサイトはかつて、海賊版テレビ番組の主要配信プラットフォームであったが、現在は非公式ストリーミングのほうが遥かに人気だ。この手のサイトは視聴数を公表していないが、おそらくこちらも数百万の「海賊版」視聴を稼ぎ出しているのだろう。
それを考えれば、史上最大のBitTorrent Swarmの記録は、今後破られることはないのだろう。
『ゲーム・オブ・スローンズ』は、ファイル共有の歴史にさまざまな記録を刻んでいる。HBOはこの数年、「最も海賊版を生み出した」TVシリーズの頂点に君臨してきたが、2019年に再びその地位に返り咲き、歴史に名を残すこととなった。
ゲーム・オブ・スローンズは記録的数字のみならず、海賊版界隈のニュースや議論にたびたび登場した。TFでも折に触れて、その話題をお伝えしてきた。
中でも重要なテーマは、度重なる「流出」だ。最も有名なのは2015年、宣伝用のスクリーナーから第1話から第4話までは流出したことだろうか。
2017年には、「Star India」の電子透かしが入ったエピソードが流出。この件では4人が逮捕された。このトレンドは収まることなく、今年はじめにも複数のエピソードが漏れ、最終話もプロットが流出した。
通常の視聴者よりも先に海賊版ユーザがゲーム・オブ・スローンズの最新エピソードを視聴できるという事実は、海賊版の増加にもつながった。学術研究でも、こうしたリークが海賊版視聴者を増加させ、正規の視聴数を損ねていることが指摘されている。
また、『利用可能性』と価格設定も、海賊版レートを引き上げる一因となった。
ゲーム・オブ・スローンズの初期のシーズンは、現在ほどアクセスしやすくはなく、たとえアクセスできたとしても、放映から数週間の遅延を余儀なくされた。そのため、多数の人々、とりわけ熱心なファンが海賊版サイトに殺到した。
この問題は数年をかけて次第に改善していったが、多くの国で価格の問題が残されていた。『ゲーム・オブ・スローンズ』を合法的に視聴するには、1シーズンあたり数百ドルを支払わなければならないこともあり、一方その代わりとなる海賊版は無料だった。
皮肉なことに、正規のサブスクリプションサービスに加入したとしても、ついつい習慣的に海賊版に頼ってしまう人々もいる。たとえば、オーストラリアでは、すでに『ゲーム・オブ・スローンズ』の料金を支払っているはずのFoxtel加入者の約2割が海賊版を選択していた。
オーストラリアでは、長年に渡ってゲーム・オブ・スローンズの海賊版が話題に上がってきた。以前はリリースまでの遅延が長く、価格が高額だったこともあって、多くの人々が海賊版を選択した。この状況は著作権者を苛立たせ、米国大使も「窃盗」に弁解の余地はないと非難した。
こうした論争が起こる中、HBO自身は極めて冷静であった。確かに同社は数千件の削除通知を申立てたし、ファイル共有ユーザにも警告を発した。が、それだけだった。2016年に和解を要求する書簡を受け取ったユーザもいたが、それは詐欺師の仕業だった。
ゲーム・オブ・スローンズ関係者の中には、海賊版の利点を認識している者さえいた。たとえば、デヴィッド・ペトラルカ監督は以前、このシリーズが待ち望んでいた「文化的バズ」が海賊版によって生み出されたことを認めている。
同様に、2013年にはHBOの親会社であるTime Warnerのジェク・ベックスCEOも、海賊版の拡散により自社のサブスクリプション加入者が増加したとして、「最も多くの海賊版を生み出した」番組タイトルは「エミー賞よりすごい」と話していた。
最後を締めくくるにはふさわしい一言だ。
Publication Date: May 21, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: William Krause
