以下の文章は、TorrentFreakの記事「Fragmented Streaming Landscape Keeps Piracy Relevant, Research Suggests」の翻訳である。

TorrentFreak

理論的には、正規のストリーミング動画サービスは海賊版サイトや海賊版サービスの強力なライバルである。しかし、見たい映画や番組を見るために複数のサブスクリプション契約をしなければならない、となれば話は別だ。最近の調査によると、ストリーミングサービスの分断が、海賊版への需要を維持し続けているという。

ストリーミングサービスが映画・TV番組視聴のスタンダードになりつつあることは疑いない。

現時点で、サブスクリプション型のストリーミングサービスが海賊版に勝る利便性を備えたサービスであることを考えれば当然のことではある。

しかし、問題がないわけではない。ストリーミングモデルの魅力は、「ネットフリックス」のようなサービスが増えていくにつれて希釈されてしまうのだ。

もちろん、どのサービスも幅広いコンテンツ・ライブラリを提供してくれるのであれば、選択肢が増えることは必ずしも悪いことではない。しかし問題は、サービスがそれぞれに異なる「ライブラリ」を持ち、独占的なオリジナル作品を制作することが一般的になりつつあることだ。

一世帯がオンライン・エンターテイメントにかけられる予算には限りがあり、必然的に消費者はいずれかのサービスを選択しなければならない。AppleやDisneyが独自のストリーミングプラットフォームのリリースを計画している現在、問題は悪化の一途をたどっているといえよう。

この皮肉な状況は、海賊版を時代遅れにするはずのプラットフォームが、むしろ海賊版の重要性を増す方向に進んでいることを意味している。これまでも逸話的に語られてきたことではあるが、海賊版の調査会社「MUSO」が英国の成人1000人を対象した調査によると、懸念は現実のものになりつつあるようだ。

調査対象となった消費者の大多数、実に80.4%が、すでにストリーミングサービスを高額だと感じており、さらに回答者の64.2%が、これ以上ストリーミングサービスにお金を支払いたくないと考えているという。

さらに懸念されるのは、全回答者の半数以上(50.8%)が、利用できないコンテンツを探すために海賊版プラットフォームを検索する可能性が高い、あるいは非常に高いと回答しているという点である。言い換えれば、彼らは目当てのコンテンツを手に入れるためなら海賊版を利用することも辞さない、ということだ。

「この調査は、人々が必然的に無許諾のプラットフォームを介して他の場所を探そうとすることを示している・だがこれは、コンテンツ所有者がオーディエンスを理解するための有意義で価値ある洞察を提供している」とMUSOのアンディ・チャタレイCEOは述べている。

「多くの人たちが1つか2つのサービスしか契約していない中で、Disney+やApple TV+のローンチが何をもたらすのかは非常に興味深い。消費者は既存のサービスを捨てて新たなサービスに乗り換えるのだろうか? それとも、Apple は再びTVマーケットへの参入に苦戦させられるのだろうか?」

権利者やストリーミングプラットフォームを責めるのは容易いが、このパズルを解くのは簡単ではない。

理想的には、海賊版サイトや海賊版サービスと同様に、見たいと思うものすべてにアクセスできる単一のサービスが望ましい。しかし問題は、少なくとも現在支払われているサブスクリプション料では、十分な収益が得られてはいないということだ。

とはいえ、サービスがどんどん増え続け、分断が進んでいく以外に、もっと良い選択肢があるはずだ。

いずれにしても、適法な手段が数多くあれば海賊行為に走る「言い訳」にはならないはずだという誤った考えは、年々弱まってきている。そう、たしかに大抵のコンテンツは合法的にアクセスできる。だが、そのためには多額の費用がかかるのだ。

こうした断片化から最大の恩恵をうけるのは、海賊版サイトや海賊版サービスの運営者ということになるのだろう。おそらく、ハリウッドが意図したことではないのだろうが。

Fragmented Streaming Landscape Keeps Piracy Relevant, Research Suggests – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 14, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image:Horia Varlan / CC BY 2.0