以下の文章は、電子フロンティア財団の「Congress Continues to Ignore the Dangerous Flaws of the CASE Act」という記事を翻訳したものである。
「少額賠償における著作権代替執行法」案(CASE Act)は、なかなかに消え去ってくれない間違ったアイデアの1つだ。同法案は、著作権法が抱える厄介な問題を解決するシンプルで簡単なソリューションのようにも見える。だがよくあることではあるが、このソリューションは決してシンプルでも簡単でもない。
米下院司法委員会は、上院司法委員会に続いて、CASE法案を承認した。これにより、同法案が抱えるさまざまな欠陥を修正することなく、下院だけで可決できることを意味する。
しかし、それを許してはならない。
CASE法案の目的は、著作権者が著作権侵害の損害賠償を簡単かつ迅速に受け取れるようにすることにある。同法では、著作権局に「著作権申立委員会」と呼ばれる準司法機関を設置し、1手続につき最高3万ドルの損害賠償を裁定できるようにするとともに、当事者の上訴を厳しく制限するというものである。3万ドルは決して「少額」と呼べるような額ではなく、その裁定を下すのは、裁判官ではなく著作権局の職員であり、その彼らは一般市民ではなく著作権者を顧客とする人々だ。こうした裁定は、ミームを共有したり、ビデオを共有したり、画像をダウンロードしたりといった、誰もが営んでいるような普通の生活を崩壊させるだろう。
聴聞では、CASE法は「自発的」な少額請求制度であると改めて説明された。
だがCASE法は、推進派が言うような「自発的」なスキームではない。「オプトアウト」の不十分さは、いくら強調してもし過ぎることはない。現在のCASE法の仕組みでは、著作権局がクレームに関する通知を、オプトアウトの方法を説明する情報とともに送付することになっている。著作権局がどのようなオプトアウト方法を適切とするにせよ、通知から60日以内にオプトアウトしなかった場合、当事者不在であっても申立委員会が下した決定に従わなければならない。
ほとんどの人が聞いたこともない委員会から来る通知であることを考えれば、きわめて難しいプロセスであることは間違いない。顧問弁護士がいる企業や個人であれば、オプトアウトすべきかどうかを聞くことはできるだろう。しかし、平均的なインターネットユーザはそうではない。つまり、彼らは非常に難しい、危険な判断に直面することになる。
CASE法は、友好的で「自発的な」紛争解決システムどころか、著作権トロールのための新しい武器を生み出すだろう。著作権トロールは、芸術の想像ではなく、訴訟や法的な脅しで金儲けしているのだ。その標的となっているのは、著作権侵害者のみならず、侵害していない人たちまで巻き込まれている。裁判所は著作権トロールの活動を抑え込んできたが、著作権申立委員会は、これまで法廷が確立してきた一切の保護を持ち合わせていない。したがって、CASE法は、実際の法廷で審理を受けることなく、多額の請求を迅速かつ安価に収集する手段を提供することになる。CASE法が申立委員会に与える権限を考えれば、著作権トロールは申立後にCASE法が想定する最悪のシナリオをちらつかせつつ、標的にそれなりの額での和解を迫ることになるだろう。
CASE法の欠陥はこれだけにとどまらない。この新たな紛争解決システムは、合憲性審査をパスしなければならない。第一に、議会が著作権紛争の一部を行政裁判所に委ねることが果たして憲法上可能かどうかは不明である。第二に、提案されている「オプトアウト」手続は不公正であるのみならず、憲法に定められた正当な手続きを受ける権利を侵害する恐れもある。
CASE法は非常に多くの問題を抱えており、本来解決すべき問題に対する現実的な解決策ではない。地元議員に対し、CASE法に「NO」と投票するよう伝えてほしい。
Congress Continues to Ignore the Dangerous Flaws of the CASE Act | Electronic Frontier Foundation
Publication Date: September 17, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: pixel2013 / Clker-Free-Vector-Images / Petr Kratochvil