以下の文章は、TorrentFreakの「U.S. House Passes Copyright “Small Claims” Bill with Overwhelming Majority」という記事を翻訳したものである。

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米国下院はCASE法を可決した。CASE法は小規模な著作権紛争のための損害賠償請求裁定機関の設置を提案する新たな法案だ。この法案を支持する人たちは、小規模なクリエイターが作品を保護するるための理想的な手段だと考えているが、反対派はこの法案によって一般のインターネットユーザに対する損害賠償請求が増えるだろうと懸念している。賛成410票、反対6票で可決されたこの法案は、今後上院で審議されることになる。

今年5月、米上下院で著作権紛争の「少額賠償」裁定制度を導入する法案が提出された。

CASE法こと「少額賠償における著作権代替執行法」は、米国著作権局内に著作権請求裁定機関を設置することを提案している。

この法律が成立すれば、この新たな委員会が連邦裁判所に拠らない著作権侵害紛争解決の選択肢を提供することで、著作権者のコストは大幅に軽減する。写真家を始めとする小規模なクリエイターが著作権侵害に対処しやすくなるというわけだ。

この法案は、著作権を重視する業界団体や、多くの個人クリエイターから広く支持を集めている。だが、新たな著作権法にはよくあることだが、デジタル権利団体からインターネットユーザから有益さよりも有害さの方が上回るのではないかと反対する声も多く上がっている。

CASE法の推進派は、この新法案が現在の著作権執行の「欠けたピース」を補うものだと訴えている。訴訟は費用がかかりすぎるために、多くのクリエイターが著作権侵害者に訴訟を起こすこともできずにいる。新たな少額請求裁定機関はこの問題を解決してくれるだろうというわけだ。

反対派は、新たな裁定機関にインターネットユーザへの、1件につき最高3万ドル(約326万円)にも上る請求が殺到することを懸念している。ターゲットとなった人々は「オプトアウト」を選択できるのだが、多くの人はどうしたらいいかまったくわかっていない、と反対派は主張する(訳註:関連記事)。

これまでのところ、議員たちはこのプランに強い賛意を示している。昨日、同法案は下院で採決にかけられ、超党派の圧倒的な支持を得て、賛成410票、反対6票ですんなりと可決した。

レコーディング・アカデミーをはじめとする法案の推進派は、このニュースを大いに歓迎した。同団体はこの数週間、2000人近くのクリエイターから支持を集め、議員へのロビー活動を後押しさせていた。

コピーライト・アライアンスも圧倒的多数の賛成票を集めたことを喜んでいる。キース・カッファーシュミッドCEOは、この法案が広い支持を得てきたことを改めて証明した結果だと述べている。と同時に、立法者が反対派の意見に惑わされなかったとも述べている。

「本日の下院の採決結果は、この法案に対する多大な支持を示したのみならず、議会議員がCASE法に関するおびただしいウソに惑わされなかったという事実を示してもいる」とカッファーシュミッドは言う。

彼によると、こうしたウソは「クリエイティブコミュニティを支援するあらゆる著作権法に哲学的に反対し、違法な目的を達成するために手段を選ばないような」人々によって共有されているという。

このコメントからもわかるように、CASE法の推進派と反対派との緊張は極めて高まっている。この数ヶ月、互いに法案を不正確に伝えているとして非難の応酬を繰り広げてきた。

パブリック・ナレッジの政策顧問、メレディス・ローズは反対派の陣営にいる。彼女はこの結果に不満を訴え、上院が現在の法案を阻止することを望んでいる。

「CASE法は、公聴会も修正の機会もなく、公益団体や消費者団体から意見を求めることもないままに、強硬に可決されました。我々は上院に対し、この法案をこの文言のまま通してしまうのではなく、影響を受ける利害関係者すべてとの開かれた対話を通じて有意義かつ機能的なソリューションを策定するよう求めます」とローズは言う。

パブリック・ナレッジをはじめ、EFFRe:Createなどの諸団体は、この法案が一般のインターネットユーザに対する著作権侵害の申し立てを激増させることを懸念している。Re:Createのジョシュア・ラメル事務局長は、上院がこうした懸念に適切に対処することを期待している。

「CASE法は、我々がほぼ日常的に行なっていることに対して、一般の米国人に数万ドルの賠償金を課すものとなるでしょう。我々は連邦議会が現在の文言のCASE法を可決したことを極めて遺憾に思っています。上院は米国の消費者を保護し、憲法上の懸念を取り除くのに必要な修正を行う責務を果たすことを期待します」とラメルは言う。

とはいえ、下院の賛成410票、反対6票という結果は、現時点では議員たちがこの法案の修正にほとんど関心がないことを示している。しかしCASE法の推進派と反対派の双方が今後数週間に苛烈なロビー活動を展開することになるだろう。この戦いはまだ終わってはいない。

U.S. House Passes Copyright “Small Claims” Bill with Overwhelming Majority – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: October 24, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: EFF (CC BY 3.0 US)