以下の文章は、TorrentFreakの「Music Piracy Drops Dramatically, IFPI Shows」という記事を翻訳したものである。
国際音楽業界団体のIFPIが最新の音楽消費者レポートを発表し、音楽のリスニング数が増加していることを明らかにした。またレポートでは、海賊行為が依然として脅威となっていることを強調する一方、過去1年間で海賊版レートが劇的に低下したことについては触れようとはしない。
この数十年、音楽の海賊行為は様々な形態をとりながら問題となってきた。最近では、ストリームリッピングが海賊版の支配的な流通経路として問題視されている。
3年前、音楽業界団体のIFPIはこの問題に警鐘を鳴らした。IFPIによると、ストリームリッピングは、トレントサイトなどの海賊版よりも遥かに大きな脅威なのだという。
こうした認識のもと、さまざまな音楽レーベルや音楽出版社がリッピングツールの取り締まりに乗り出した。その結果、かつて世界最大の人気を誇ったリッピングサイト「YouTube-MP3」も閉鎖に追い込まれている。
こうした取り締りが頻繁に行われる一方で、IFPIはストリームリッピングの問題が更に深刻化しているとの認識を示している。IFPIが公表した年次消費者動向レポートによると、2016年にはインターネットユーザの30%だったストリームリッパーは、昨年の今頃には32%に増加していたのだという。
また調査対象となったインターネットユーザの38%が海賊版の利用を自認していることから、インターネットの海賊版は全般的に深刻なものとなっていると見ている。この38%のなかには、合法的なサイトからコンテンツを入手するストリームリッパーも含まれる。
確かにこうした数字は懸念すべきなのかもしれないが、一方でIFPIが取り上げていない側面もある。数年ほど前から見られている海賊行為の下降トレンドが現在も続いていることだ。
IFPIが公開した最新の消費者動向レポートは、今回からその名称が「音楽リスニング」レポートに変更された。その狙いは、現在活発に行われている合法的な音楽消費に焦点を当てるためだという。だが、ストリームリッピングの海賊行為は依然として主要な脅威になっていると強調する。
「著作権侵害は依然として音楽エコシステムの課題だ。調査対象者の27%が過去1ヶ月間にライセンスを得ていない音楽を聴取・取得しており、23%が違法なストリームリッピングサービスを利用している」とIFPIは記している。
IFPIはいくつかの数字を比較しているものの、現在と過去の数字を比較してはいない。そのため、このレポートからは海賊版消費のトレンドをうかがい知ることはできない。意図的なのかはわからないが、IFPIは近年の海賊版消費の最大の変化を見落としていると言えるだろう。
海賊版の音楽の利用を自認するインターネットユーザは、昨年の調査では38%だったが、今年は27%に減少していた。また、ストリームリッパーの割合も2018年の32%から、2019年には23%に減少している。いずれも劇的な減少が見られているのだ。
つまり、音楽海賊を自認した100人中29人のがこの1年間でその習慣を捨て、ストリームリッパー100人中28人がやめたということになる。両者は重複してもいるのだろうが、それでも大きな変化には違いない。
もう1つ気になったのは、かつては最優先事項であった検索エンジンの役割には強調が置かれなくなったということだ。IFPIによると、2016年には音楽海賊の66%が、一般的な検索エンジン(たとえばGoogle)などを使って海賊版の音楽を検索していたという。しかしそれも翌年には54%に減少し、昨年には50%を下回り、2019年にはついに言及されることもなくなった。
もちろん、これが逆のトレンドであったなら黙ってはいなかっただろう。たとえばIFPIは2016年にストリームリッピングが10%上昇したときには声高に危機感を訴えたが、28%も減少した今年は一切とりあげていないのだ。
おそらくIFPIには、こうしたニュースバリューのある変化を議論しない何らかの理由があるのかもしれない。だが少なくとも我々には、十分に注目すべき価値のある変化に思えるのだが。
Publication Date: September 24, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Manuel Sardo
確かにレコード業界はやたらとストリームリッピングの脅威を煽っているのだが、世界的に見ればCDの落ち込みとダウンロード配信の不発をサブスクリプション型ストリーミングサービスへの移行で取り返し、今や右肩上がりに成長している。聴き放題のサブスクリプションサービスがスタンダードになった今となっては、わざわざ海賊版の音源を入手するなんてのはよほどのマニアくらいなもので、少なくともレコード音楽に関して言えば、利便性と利用可能性が満たされたことで海賊版サイトへの需要はほとんどなくなったと言える。
そこへ来てレコード業界はストリームリッピングを新しい脅威として対策を訴えているのだが、ストリームリッパーなんてお気に入りの曲をちょこっと聞きたいとか、モバイル環境が整っていないからローカルに置いておきたいとかいう程度の人たちでしかない。彼らにしてみれば、そういうルートがあるからサブスクリプションに加入しないのだと考えているのだろうが、ストリームリッピングサイトを駆逐したところで市場の成長に与える影響なんて微々たるものだろう。
今まで海賊版対策で鳴らしてきたものだから、兎にも角にも針小棒大に訴えねばならぬ、というところなんだろうか。