以下の文章は、TorrentFreakの「Tech Companies Warn U.S. Against Harmful Copyright Laws Worldwide」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak
Google、Facebook、Twitterをはじめとする大手テクノロジー企業は、世界各国で有害な著作権法が制定されることをへの懸念を強めている。業界団体は、EU著作権指令をはじめとする動きについて、米国企業の利益を損ねるのみならず、さまざまな自由貿易協定とも矛盾すると警告している。

近年、世界各国で、オンライン海賊版の脅威を抑え込むべく著作権法の強化が進められている。

新たな規制は著作権者を支援することを目的としており、その多くが、著作権侵害コンテンツのホストやリンク、あるいは単に転送するだけのインターネット・サービス・プロバイダに対して、新たな義務や制限を課している。

権利者側はこうした動きに概ね満足しているものの、シリコンバレーを筆頭とする多くのテクノロジー企業が、新たな規制を脅威とみなしている。こうした脅威論は、今週、Computer & Communications Industry Association(CCIA)とInternet Associationによって再び強調された。

両団体は、米国通商代表部(USTR)に提出した意見書のなかで強い警告を発している。この意見書は、貿易障壁に関する政府の年次報告書の作成にあたって募集されたパブリックコメントとして提出されたものである。

AmazonやCloudflare、Facebook、Googleなどの著名企業が参加するCCIAは、広範囲に及ぶ脅威をリストアップしており、そのなかには著作権に関連するものも複数含まれている。

主要な問題の1つに、オンライン仲介事業者に対する著作権侵害責任の強化が挙げられている。米国ではユーザによる侵害の責任を免責する強力なセーフハーバー条項が設けられているが、他の国ではそうはなっていないとCCIAは警告する。

「世界各国が、好ましからざるコンテンツの開発に一切関与していない仲介業者に厳重な罰則を課す時代遅れなインターネットサービス責任法への依存をますます強めている。こうした慣行は、投資や市場参入を妨げ、適法なオンラインサービスを阻害している」とCCIAは主張する。

具体的には、フランスやドイツ、インド、イタリア、ベナムなどの国名を挙げている。例えばオーストラリアでは、複数の米国プラットフォームが免責の対象から除外されており、これは米豪自由貿易協定に違反しているとCCIAは指摘する。

もう1つの大きな懸念は、今年はじめに可決された新たなEU著作権指令だ。各加盟国での法整備・施行はまだ進んでいないが、米国企業にもユーザにも脅威であるという。

「最近のEU著作権指令は、インターネットサービスに差し迫った脅威をもたらしており、最終条文に示されている義務は、グローバルな規範から大きく逸脱している。同指令に基づいて作られた法律は、遵守に多大なコストを要するため、インターネットサービスのEU市場への輸出を阻害するものとなるだろう」とCCIAは綴っている。

「EU当局者は否定しているが、適法なユーザ活動は厳しく制限されることになるだろう。EU当局者は、条文に概説されている引用や批判、批評、パロディの例外・制限規定をほのめかしながら、新たな要件ではミームの共有といった適法なユーザ活動には影響しないと主張しているだけである」

Internet Associationの意見書にも、EU著作権指令への警告が記載されている。Google、Reddit、Twitter、Microsoft、Spotifyなどのテクノロジー企業が参加する同団体は、EUの方針は米国著作権法とは一致していない、という。

「EU著作権指令は、米国法に直接抵触し、広範囲に及ぶ米国の消費者および企業に対し、フィルタリング技術の導入や、米国著作権法制において完全に適法な活動への対価を欧州企業・機関に支払うこと、第三者のコンテンツに対する直接責任を求めている」とInternet Associationは記している。

EU以外にも、オーストラリア、ブラジル、コロンビア、インド、ウクライナなどの国々でも、インターネットサービスの著作権に関連した「煩わしい」提案がなされているという。Internet Associationは、こうした提案の多くが米国の自由貿易協定と矛盾するものだと指摘する。

「米国が国外における米国著作権制度の維持に乗り出さなければ、米国のイノベーターや輸出業者は打撃を受け、他の国々はますます市場参入の制限を目的として著作権を濫用するようになるだろう」と同団体は警告する。

CCIAとInternet Associationの両団体は米国政府に対し、こうした動きに抑えるよう強く求めている。その上で、強力かつバランスの取れた著作権法を推進し、米国法を遵守する米国企業を危機に晒すことのないよう要請した。

確かに米国が自国の法律や政策を国外でも維持すべきだというのは理にかなってはいるが、両団体の意見書が提出されたタイミングは、まさに同国の議会議員が仲介者責任のあり方を見直すべきだという提案の真っ最中である。

仲介事業者の責任強化を進めたい著作権者側は、国外での動きを後押しと考えている。たとえばMPAAは先日、将来の貿易協定から現在含まれているセーフハーバー条項を除外するよう議員に要請している

さらにこうした提案は米下院司法委員会からもなされている。同委員会は、現在のところ特定の方向性を示してはいないが、現在の米国の免責条項を貿易協定に盛り込む前に議論の成り行きを見届けようという考えだ。

CCIAがUSTRに提出した意見書はこちら(pdf)、Internet Associationの意見書はこちら(pdf)から。

Tech Companies Warn U.S. Against Harmful Copyright Laws Worldwide – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: November 08, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Christine Roy