英国政府は、いわゆる著作権トロールから金銭の要求を受けた人のためのアドバイスを公表した。知的財産庁は、こうした要求を受けた人物が必ずしも著作権侵害を行った人物とは限らず、実際に著作権侵害に関わった人物を特定するのは著作権者の責任であるとしている。
著作権トロールが英国に上陸したのは、2007年のことである。Dream Pinball 3Dというゲームの違法ダウンローダー500人以上がターゲットにされ、訴訟を回避するために和解金を支払うよう求める請求が送りつけられた。
それからおよそ10年が経った。その間、著作権トロールは駆逐されたこともあったが、チューンナップされたビジネスモデルを携えて、ふたたび英国で猛威を奮っている。
彼らはガラス張りの弁護士を雇うのではなく、事務弁護士規制委員会が介入できない仲介者を雇っている。そのため、ターゲットは保護を受けることができず、トロールに1人で立ち向かうか、弁護士を雇うかのジレンマに悩まされることになる。
興味深いことに、英国政府はこうしたケースに感心を示している。知的財産庁(IPO)は、公表した勧告のなかで、著作権トロールがどのように活動し、そのターゲットになった場合にどのように対処すべきかについて情報を提供している。
問題の概要
「何者かがあなたのインターネット接続を利用して映画などの著作物を、ファイル共有サイトなどから許可なくダウンロードした――と著作権者が考えたとしたら、あなたは通知を受け取るかもしれません」とIPOはいう。
「権利者が、自らが被った金銭的な損失に対する補償を求めてくることがあります。近年、Golden Eye、TCYK LLC、Mircomのような法人が、補償を求めて裁判を起こしています」
こうした著作権トロールに共通するのは、請求の受取人が侵害に直接責任があるか、それに関与していると主張することだ。知的財産庁はまさにこの点について、彼らの主張が必ずしも正しくはないことを指摘している。
「著作権者が訴訟を起こせるのは、実際に著作権侵害に関与した人物に限られていることを理解しておきましょう。その人物はあなたではないかもしれません。あなたの加入するインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)が提供できるのは、インターネット・アカウント所有者の詳細だけなのです。それは実際に侵害した人物とは限りません」とIPOは記している。
政府のアドバイス
政府がアドバイスとして最初に挙げているのは、現実から目をそらさないように、ということである。
「通知を無視してはいけません。たとえあなた自身、あるいはあなたの身の回りの人が、あなたのインターネット接続を利用して著作物をダウンロードした覚えがないとしても。アドバイスを受けたうえできちんとした返答するために時間が必要なら、そのように伝えましょう」
「もし、その著作権侵害に身に覚えがないとしたら、その書面が本物であるか確認しましょう。こうした書面を送りつけ、支払う必要のない補償を得ようとする詐欺もあります」
インターネットでアクセスした人は?
その上で、IPOはインターネットを利用した友人や家族をチェックすべきだとしている。
「彼らは著作物をダウンロードまたはアップロードしているかもしれません。その場合、侵害の責任はその人物にあります」
実際、それは真実ではあるのだろうが、請求の受領者が著作権トロールに代わって探偵の役を演じる道理はない。著作権トロールが実際に侵害をした人物を把握しているのであれば、最初からその人物にそう告げるべきである。もしそうでないなら、単に探りを入れているに過ぎない。このような言い草ではないが、政府もおおよそ同様のことを伝えている。
「著作権侵害に誰が関与したのかを証明するのは、著作権者の責任です。インターネット・アカウント所有者ではありません」
最後に知的財産庁は、このような通知を受け取った場合、Citizens Adviceに連絡するか、事務弁護士に相談するよう提案している。後者をお探しの方は、サウザンプトン Lawdit SolicitorsのMichael Coyleに相談してみるといいだろう。この手の事件を100ポンド以下で請け負っている。
英国政府が著作権トロールの活動に突然関心を示した理由は定かではないが、Ian Austin議員が政府を動かしたのかもしれない。83歳の女性が著作権トロールから映画の著作権を侵害したと訴えられた事件について、Austin議員は「不愉快に」感じたと述べ、国会で取り上げると構えを見せていた。
“UK Govt Issues Advice on Dealing With Copyright Trolls – TorrentFreak”
Publication Date: April 08, 2016
Translation: heatwave_p2p