以下の文章は、TorrentFreakの「Australian Piracy Rates Drop, But So Does Spending」という記事を翻訳したものである。

TorrentFreak

オーストラリア通信芸術省は今週、著作権侵害に関する新たな消費者調査を発表した。データによると、オーストラリアにおける海賊行為は大幅に減少していたが、同時に音楽・映画・ゲームへの支出も減少していたことが明らかになった。今回の調査では、海賊版サイトブロッキングの有効性について誇張されてはいるが、多少の効果はあったのかもしれない。

オーストラリアはこれまで、エンターテイメント業界から「海賊版だらけの国」と批判されてきた。

豪政府はこの指摘が事実であるかどうかを確認すべく、毎年消費者調査を実施し、同国の海賊行為の状況を調べている。調査の結果、近年豪州の海賊行為が着実に減少していることが確認されている。

今週、豪通信芸術省が最新版のオンライン著作権侵害報告書を公表した。それによると、音楽・映画・テレビ番組を違法に利用する消費者の数は着実に減少していた。こうした減少傾向は、以前の調査とも一貫している。

政府によると、海賊版の利用者は人口の16%にのぼるという。昨年の同調査では32%、さらに初めて調査が実施された2015年には43%であったことを考えれば、劇的な減少だ。

実に印象的な数字ではあるが、海賊版の利用者が減少したからと言って、それがエンターテイメント業界の売上に直結するわけではない。実際、調査データによると、多くのカテゴリで売上は減少しているようだ。

たとえば、音楽への支出総額は2018年の88.34ドルから2019年には70.01ドルに減少しており、これは調査を開始した2015年以降の最低額であった。この減少は、主にコンサートやグッズ、CDの売上の減少に起因すると考えられている。

海賊行為そのものは激減したものの、音楽に支出するオーストラリア人の割合は46%のまま横ばいであった。

同様の減収は、ゲームや映画でも見られている。いずれのカテゴリでも海賊行為は減少していたにも関わらず、消費者の支出は過去数年よりも減少していた。支出が増加した唯一のカテゴリはテレビで、2019年には以下のように大きな伸びを見せた。

この調査によって明らかになったのは、海賊行為の減少がそのままコンテンツ支出の増加につながるわけではないということだ。実際、海賊版も利用するし正規版も購入する人は、正規コンテンツだけを購入する人に比べて、平均支出額が遥かに高い。

報告書によると、正規版だけを購入する人たちは、3ヶ月平均で42ドルを支出している。海賊版と正規版を併用する人たちは、その倍の84ドルを支出していた。

この結果は、(海賊版と正規版を併用する)「ハイブリッド」消費者が最もコンテンツに支出をするという先行研究とも一致する。おそらくこの層が最もコンテンツに飢えた消費者ということなのだろう。

もう1つ注目すべき点は、豪司法がますます認めるようになっている海賊版サイトブロッキングに関する結果だ。このブロッキングは海賊行為の抑止を目的としているが、報告書はそれを裏付けている。

アクセスした海賊版サイトがブロッキングされていた場合、それを「回避する」と答えたのはわずか7%で、大多数の58%が「そのまま諦める」と回答した。この結果は、海賊版サイトのブロッキングが非常に効果だということなのだろうか。

データを良く読むと、7%という数字は調査対象者全体の数字であった。つまり、海賊行為を行っていない84%の人びとの回答も含まれた数字だということになる。海賊行為を行っていないのだから、ブロッキングを回避しようとする道理はない。

最後に、この報告書はブロッキングを回避すると回答した人たちが、VPNサービスを理想的な回避手段だと考えていることも浮き彫りにしている。回答者の44%がVPNを挙げており、昨年の30%から増加している。

2019年オンライン著作権侵害に関する消費者調査の写しは、豪通信芸術省のウェブサイトで入手できる。

Australian Piracy Rates Drop, But So Does Spending – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: December 29, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: Wesley Tingey