以下の文章は、Walled Cultureの「Welcome to Walled Culture」という記事を翻訳したものである。Walled Cultureは、ケール・オースチン財団の支援を受けてスタートしたブログメディアで、デジタル世界で醸成される文化とアナログ時代に作られた著作権の衝突という興味深いテーマを掲げている。現時点では、以下の記事とコリイ・ドクトロウのインタビュー(音声動画)が公開されたばかりだが、今後も更新が続いていくので興味のある方は購読してみてはいかがだろうか。

現代社会はデジタル化されている。我々はオンラインで人と会い、オンラインでモノを買い、オンラインで政府とやり取りする。だが、デジタル空間は従来のアナログ世界の進化版ではない。本質的に異なるものだ。いったんデジタル化されたものは、完璧かつ無限にコピーできる。それゆえ、デジタル化されたものは永遠に保存され、万人に共有できるのである。

あるいは、デジタルファイルが登場する以前から著作権が支配していなければ、そうであったと言ったほうが良いだろうか。「現代の」著作権は1710年に発明されたもので、当然ながらアナログを想定している。アナログはコピー、共有、保存が困難であり、著作権法はそれを反映しているのだ。

その結果、デジタル世界と伝統的な著作権との間には、本質的で、根深く、両立し難い対立が生じている。オンラインのイノベーションよりも著作権保護が優先されているように、世界中の著作権産業の影響力ゆえに、デジタル世界の空前の力と可能性を活かしきれずにいる。事実上、膨大なデジタル・カルチャーが、著作権によって壁に囲われ、封じ込められている。それがこのブログ名「Walled Culture」の由来である。

人類が得た知識すべてを、どれほど貧しくとも、どれほど弱い立場に置かれていても、地球上のすべての人々と共有する唯一無二の機会が失われている。その結果、他者の仕事や知恵を利用したり、自由に協同したり、輝かしき正のフィードバックループによって世界の創作の貯蔵庫を豊かにする余地が劇的に減じられている。知識や真実に壁で囲えば、その外側では無知と虚構が荒れ狂い、壁を乗り越えてまで自分とは異なる視点を手に入れようとはしない信奉者たちを巻き込んでいく。著作権の壁によって、数十億の人々が知的・芸術的な可能性を十分に発揮できず、その結果、我々は皆、貧しい立場に追いやられている。

『ウォールド・カルチャー』の目的は、万人のための共通利益を最大化する前進よりも、時代遅れの著作権を守ることこそが重要であるという間違った信念がもたらす最悪の結果を探ることにある。また、著作権がもたらす窒息効果にもかかわらず、著作権の壁を打ち破り、デジタル世界の途方もない可能性を開花させる取り組みにも注目していく。

長短織り交ぜたブログ記事でこの分野で起こっていることを紹介するとともに、この領域の主要な思想家やアクターへのインタビューをテキスト、オーディオ、ビデオで提供する。このブログの長期的な目標は、さまざまなアイデアや事例、取り組みを無料の電子書籍にまとめ、今何が起こっているのか、我々はどこへ向かっているのか、そしてどこへ向かうべきなのかについて、多数の議論やアイデアを首尾一貫したナラティブとして提供することである。

このジャーナリズムは、ケール・オースチン財団の助成金によって実現したもので、編集権は筆者グリン・ムーディにある。ブリュースター・ケールはすべての知識へのユニバーサルアクセスを使命とする非営利図書館「Internet Archive」の創設者兼デジタルライブラリアンである。Internet Archiveのデジタルコレクションはarchive.orgでオンライン公開されており、現在は3000万冊以上の書籍・テキスト、890万本の映画・ビデオ・テレビ番組、64万9000本のソフトウェアプログラム、132万5000個のオーディオファイル、380万枚の画像、そしてWayback Machineに登録されてオイル5520億のウェブページを所蔵している。

フィーチャー画像:Nina Paley

Welcome to Walled Culture – Walled Culture

Author: Glyn Moody (Walled Culture) / CC BY 4.0
Publication Date: September 20, 2021
Translation: heatwave_p2p