以下の文章は、Walld Cultureの「Imagine a world where amazing fanfic was the norm, not the exception: only copyright stands in the way」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

Pocketに、ファンフィクション(訳注:アマチュアによる二次創作)に関する興味深い記事が掲載されていました。Wikipediaによると、ファンフィクション(fan fiction)とは「既存フィクション作品をもとに、ファンによってアマチュアの立場で書かれた[原作者または出版社に]無許可のフィクション作品」で、「原作で描かれたキャラクターや設定、その他の知的財産をベースにして描いたもの」とされています。つまり、他人の作品を出発点として、たいていは原作者の許可を得ずに行われる創作活動ということになります。このPocketの記事では、ハリー・ポッターの物語をもとにした「All the Young Dudes」という人気のファンフィクション作品について語られています。

現在、526,969ワードにおよぶこの作品は、ファンフィクションサイトのArchive of Our Ownで750万ヒットを記録している。「All the Young Dudes」はハリーの両親がホグワーツに通っていた時代(通称マローダーズ時代)を舞台に、シリーズで最も愛された2人、シリウス・ブラックとリーマス・ルーピンのロマンスの芽生えを描いている。

このファンフィクション作品は決してマイナーな存在ではありません。

188章からなるこの物語は、いまや独自のファンダムすら生み出している。多くのオリジナル(ハリー・ポッター)ファンにとって、この物語も正典であり、J.K.ローリングが作り出した世界を遥かに超えた広がりも、その魅力の一部となっている。「All the Young Dudes」はソーシャルメディア上でも大きな存在感を示し、オーディオブックが作られ、Goodreadsでは16,000件以上の評価が寄せられ、キャスト予想が行われたり、テイラー・スウィフトを巻き込んだ陰謀論まで生み出している。

この現象は、ハリー・ポッターのファンにも、このファンフィクション作品のファンにも、そしてJ.K.ローリング自身にも、とてもメリットがあるように思えます。こうしたファンフィクションの存在は、彼女の架空の世界への関心を高め、彼女の本の売上にも貢献してくれるでしょう。Wikipediaによると、2014年時点ですでに75万近いハリー・ポッターのファンストーリーがウェブに存在しているそうです。ローリング自身も、自分が生み出した架空のキャラクターをもとにみんながそれぞれの物語を書いていることを「光栄に思う」と語っています。ただ、Wikipediaでも指摘されている通り、すべての作家がそのような見識ある態度をとっているわけではありません。

ファンフィクションは、たいていは原作者や出版社に無断で行われ、商業出版されることもほとんどありません。国によっては、あるいは「フェアユース」と認められなければ、原作者の著作権を侵害したとみなされる場合もあります(「ファンフィクションの法律問題」を参照)。ファンフィクションに対する原作者や著作権者の態度は、無関心から奨励、拒絶までさまざま。時に、著作権者が法的措置をとることもあります。

ファンフィクション――そして「All the Young Dudes」の人気――は著作権がクリエイティビティを助けるよりも、むしろ阻害してしまうことを示す一例と言えるでしょう。もし著作権が、自分の好きなものに手を加え、そうして作り上げたものをみんなと共有したいという自然な衝動にブレーキをかけるものでなくなったとしたら、世界にどれだけのファンフィクションが、そして読書の楽しみが生まれるかを想像してみてほしいのです。

Featured image by Archive of our Own.

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Imagine a world where amazing fanfic was the norm, not the exception: only copyright stands in the way – Walled Culture

Author: Glym Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: September 13, 2022
Translation: heatwave_p2p
Header image: Finn