以下の文章は、Walled Cultureの「Why generative AI will take over the world of art, and will render copyright irrelevant」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

このブログをお読みいただいている方は、記事に使われている画像が最近変わってきたことにお気づきかもしれません。以前はパブリックドメインか、CC-BY 4.0などの最小限のクリエイティブ・コモンズライセンスの写真を使用していました。ですが、以前にはPD・CC画像の膨大なコレクションを探せたGoogleの画像検索が、わずか数十枚しか表示しなくなってしまいました。自由に使える画像・写真のソースとしては、もはやほとんど役に立ちません。

そこで、従来の方法とは異なる新たなソースを試すことにしました。Stable Diffusionというツールを使っているのですが、このツールは、「テキストから画像を生成する最新のテキスト・トゥ・イメージモデル」を称していて、自ら画像を生成できるのです。生成したい画像を大まかに指定する言葉をいくつか入力すると、あとはStable Diffusionが処理してくれます。Towards Data Scienceのサイトには、Stable Diffusionがどうやってこのようなことを実現しているかという技術的な説明があります。もっと親しみやすい説明がよければ、Voxのビデオがいいでしょう。

細かいことはどうでもよくて、その意味合いこそが重要なのです。たとえば、私が作った画像は傑作ではありませんし、お世辞にも良いとはいえません。ですが、どれも15秒程度で作成でき、しかも無料です。ほとんどの場合、特に記事やマーケティング資料の挿し絵程度のものであれば、こうした画像で十分です。つまり、今日のイラストレーション市場の大部分は伝統的なアーティストの仕事としては消滅する可能性が高いということです。一方、Stable Diffusionのようなツールを最も効果的に使う方法を学んだ人には、新しい機会が開かれるでしょう。

AIツールの活用がアートに与える影響は非常に広範囲に及ぶでしょう。一般的な単語と特定のアーティストの名前をシステムの「プロンプト」として入力すると、名前を入れたアーティストのスタイルに似た、まったくオリジナルのアートワークが生み出されるのです。グレッグ・ラトコウスキーのような独自の作風で人気のある現代アーティストにとっては、すでに問題なっています。今後アートAIプログラムが進化すれば、あらゆるデジタルアーティストに深刻な問題をもたらすかもしれません。

私がこの投稿のために、雑だけども便利なイラストを描くことができたように、近い将来、誰でもどんなアーティストのスタイルでも画像を作れるようになるでしょう。その画像はアーティスト自身が作ったものではないので、著作権を主張することはできません。AIプログラムは、入力として当該アーティストの本物の作品を分析していますが、その作品のコピーを配布するわけではありません。同様に、その出力もまったく新規のものであり、アーティストの創作物をコピーしているわけではないので、著作権侵害でもありません。

つまり、デジタル画像は著作権とは無関係になるのです。その作品のスタイルでまったく新しい作品を作れば、無断でコピーをする必要はなくなります。これはアーティストにとって悪いニュースではありません。あるアーティストのスタイルで無限に画像を生成できるということは、そのアーティストのオリジナルは希少性が高く、かえって価値を増すことになります。そうなると、非代替性トークン(NFT)が意味を持つようになるのかもしれません。この場合、アートワークがプログラムで生成されたものではなく、アーティスト自身が制作したことを証明してくれるのですから。

さらに、油絵、水彩画、彫刻など、アナログの素材を扱うアーティストの作品は、より高く評価されることになるでしょう。デジタル領域しか対応していない現在のAIプログラムでは制作できないからです。

ただ、アナログのアーティストも永遠に安泰とは言えないかもしれません。セコイアの記事で説明されているように、昨今のAIアートプログラムは、ジェネレーティブAIと呼ばれる大きなトレンドの一部に過ぎません。上述したようなコンピューティング技術は、すでに高品質のテキストやソフトウェアコードの生成に適用され、大いに成功を収めています。近い将来、映像も音声も同様のレベルに達するでしょう。ジェネレーティブAIとロボティクスを組み合わせてアナログ制作に取り組むことになるのは更に先の話でしょうが、絶対に実現しないとは言い切れません。

言葉、映像、音楽の領域で「十分な」アウトプットが増えていけば、あらゆるところで著作権に縛られずに済むようになります。ジェネレーティブAIを使えば数秒で思い通りの雰囲気やスタイルのものを生成できるわけですから、小説や音楽をコピーする必要はなくなるのです。

見栄えの良い古いアイデアの焼き増しではなく、真に新しくユニークな小説や音楽を求められ、購入されるようになるでしょう。著作権が問題にならなくなるこの世界では、クリエイターは過去の作品の複製を防ぐという無意味な強迫観念にとらわれることなく、真にオリジナルな将来の作品を作成することに集中できるようになるのです。

Featured image created with Stable Diffusion.

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Why generative AI will take over the world of art, and will render copyright irrelevant – Walled Culture

Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: October 18, 2022
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: MARIOLA GROBELSKA