以下の文章は、Walled Cultureの「Copyright consultations are opaque and off-putting: time to apply some (artificial) intelligence」という記事を翻訳したものである。
著作権が企業、とりわけビッグコンテンツに都合の良いものとなっている理由の1つに、著作権法の審議プロセスに一般市民が関与しにくいことが挙げられます。一般に、新しい法律はパブリックコメントの募集(government consultations)を経て制定されます。もちろん、これは秘密の手続きなどではありませんし、むしろ誰でも参加できるという点ではパブリックなのですが、その設問や形式は、良く言っても威圧的、悪く言えば一般市民を完全に軽視しています。
こうした問題を軽減すべく、デジタルライル団体は設問の意味を説明したり、回答例を用意したりして、一般市民がパブリックコメントに参加できるように手助けしています。しかしこの方法にも問題点があって、提出された回答がどれも似たりよったりになってしまうために「スパム」と呼ばわりされたり、時間をかけて市民が回答したたくさんの声が1つの回答にまとめられたりしてしまいます。不誠実な政治家が、市民から寄せられたたくさんの声を「フェイク」だとレッテル貼りしたこともあります。書籍版の『Walled Culture』にも書きましたが、まさにEU著作権指令の議論で実際に起ったことです。たくさんの市民が反対の声を上げたにもかかわらず、この悪法が強行採決された理由の1つでもあります。
ただ、救いの手はもうそこまで来ています。10月、Walled Cultureでは、テキストプロンプトから画像を生成するジェネレーティブAIプログラムを紹介しました。この数週間、たくさんの人たちがOpenAIのChatGPTという新たなジェネレーティブAIシステムの可能性を探っています。
私たちは会話形式で相互作用するChatGPTというモデルをトレーニングしました。この対話フォーマットにより、ChatGPTはフォローアップの質問に答えたり、自分の間違いを認めたり、間違った前提に挑戦したり、不適切な要求を拒否したりできます。ChatGPTはInstructGPTの兄弟モデルで、プロンプトの指示に従って詳細な応答を行うよう訓練されています。
ChatGPTに何を話しかけて、どんな反応を得られたかーーその印象的でおもしろい例がオンラインに多数共有されています。もちろん、ChatGPTの回答が正しい保証はないことには注意が必要です。ChatGPTはその出力を理解しているわけではないので、いくらでもナンセンスな回答を出力してくるのです。
とはいえ、数個の単語やフレーズのみのプロンプトやざっくりとしたアイデアを洗練された文章に変えることは得意としています。言いたいことはあってもなかなか流暢な文章を書けないという人には頼もしいツールではないでしょうか。
とりわけ、著作権関連のパブリックコメントには威力を発揮してくれるでしょう。たとえば、ChatGPTなどのシステムは、難解な設問の意味をわかりやすく説明してくれます。また、パブリックコメントを書く際の出発点として、さまざまな回答を列挙してもらうこともできます。また、対話形式でやり取りをすれば個々人の要素が入り込むことになるでしょうから、同じAIシステムを使用していても全く同じ回答が出力されることもないでしょう。「フェイク」呼ばわりされることもなくなるかもしれません。
理想を言えば、パブリックコメントは著作権の専門家だけではなく、すべての人に開かれたものであるべきです。しかし少なくとも、今日のアプローチが抱えているいくつかの問題を回避し、重要なイニシアチブへの門戸を開くことにジェネレーティブAIは役立ってくれるでしょう。
Featured image created with Stable Diffusion.
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Copyright consultations are opaque and off-putting: time to apply some (artificial) intelligence – Walled Culture
Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: December 15, 2022
Translation: heatwave_p2p