以下の文章は、Walled Cultureの「Research shows that, when given the choice, most authors don’t want excessively-long copyright terms」という記事を翻訳したものである。

Walled Culture

先週、Walled Cultureでは、孤児著作物(orphan works)の問題について書きました。孤児著作物とは、著作権で保護されているものの、本の出版社や販売業者が廃業していたり、単に流通させることに関心を持っていないために入手できない創作物、典型的にはそうした書籍を指します。問題は、連絡先が不明なため、再出版や何らかの形で再利用する許可を得られないということです。

孤児著作物の問題に関連して、もう1つ深刻な問題があります。ニューヨーク公共図書館がインターネット・アーカイブと米国著作権局の協力を受けて明らかにしたものです。Viceの記事では次のように説明されています。

ニューヨーク公共図書館(NYPL)は、米国著作権局の登録・更新記録を調査し、著作権が更新されず、パブリックドメインとなっているものの、そのことが知られていない創作物について調査した。

問題の書籍は、米国著作権法の改正で著作権の更新が不要となる以前の、1923年から1964年の間に出版されたものである。NYPLの法務顧問兼情報ポリシー責任者のグレッグ・クラムによると、この時期に出版された書籍をざっと調べてみたところ、65~75%の権利者が著作権を更新していなかったという。

1923年から1964年の間に出版された書籍は、著作権が保護されていると考える人が多いため、この時期の作品を再出版・再利用しようとする人はまずいません。しかしこの調査によると、その時期の作品の大半は、実はすでにパブリックドメインとなっていて、誰でも自由に利用できることがわかりました。

このことは、著作権が今日の作家、芸術家、音楽家、映画製作者の新鮮なクリエイティビティをいかに妨げているかを示す好例と言えるでしょう。こうした作品から刺激を受け、自らの創作に取り込むこともできたはずなのに、著作権業界に洗脳され、あらゆる作品が極めて長い期間にわたって保護され続けていると思い込まされているのです。その結果、法律上は無数の書籍が自由に利用できるはずなのに、著作権マキシマリストのプロパガンダに感染した人々の心の中だけに存在する幻の著作権によって、封印されたままになっているのです。

NYPLの調査が示すもう1つの重要な教訓は、選択肢が与えられていたにもかかわらず、大多数の著者がわざわざ著作権を更新しなかったということです。おそらくは、更新の必要性を感じなかったのでしょう。このことは、今日の過剰な著作権保護期間を自動的に適用する制度に疑問を呈するばかりでなく、過剰な保護の結果としてパブリックドメイン素材から新たな作品が生み出される機会を奪っている有害さをも示しているのです。

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Research shows that, when given the choice, most authors don’t want excessively-long copyright terms – Walled Culture

Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: March 2, 2022
Translation: heatwave_p2p