以下の文章は、Walled Cultureの「The EU link tax was bad enough, but Canada’s threatens to be even worse」という記事を翻訳したものである。
書籍版「Walled Culture」(無料の電子書籍版は各種フォーマットで入手可)の核心は、恥ずべきEU著作権指令と、それがどうして成立したのかという物語です。ここでは詳細は割愛しますが、第15条、つまりスニペット税やリンク税とも呼ばれる、ニュースサイトにトラフィックを送る特権に対してプラットフォームに支払いを義務づけようというアイデアは、まったくもって合理的ではないという点は指摘しておきたいと思います。インターネット企業が大儲けしているのを見て、EUの政治家に頼みこみ、その一部が自分たちの懐に入るようにする法律を制定してもらおうと考えた新聞社の強欲と怠惰の産物でしかありません。
残念なことに、この作戦が成功したことで、世界中のパブリッシャが同じようなことをしはじめました。1年前にこのブログでも取り上げましたが、オーストラリアは新聞業界を優遇する同様の法律を制定し、現在カナダでも同様の目も当てられない法案が審議されています。マイケル・ガイスト教授は、カナダの法案を徹底的に追及し、その欠陥を分析しています。彼のブログ記事によると、カナダのリンク税はEUのそれよりもさらにひどいものになりそうです。
記事では、ジャーナリズムのバックグラウンドを持つカナダの上院議員が、新法の担当部署に質問したといいます。現在の法案は、GoogleやFacebookに支払わせるという前提で枠組みが作られているのですが、では将来、両社が利益をあげられなくなった場合にはどうなるのか? その回答はそっけないものでした。カナダ政府は(GoogleやFacebookに代わって)Tiktokに支払わせればいい、と。しかしTiktokはGoogleやFacebookのようにニュースリンクを共有しているわけではありません。ですが、それはどうやら関係ないようです。カナダ人がTiktokでニュースを知ったということだけで十分なのです。ガイストはこう記しています。
もし当局が、リンクすらしていないTiktokに支払い義務を課すことを想定しているのであれば、彼らの考える「ニュースへのアクセスを容易にする」範囲は、(訳注:厳密な意味での)ニュースへのアクセスをニュースの認識と同列に扱い、ニュースに関連する議論や運動が行われていることをもって大規模プラットフォームを「デジタルニュース仲介事業者」とみなすのかもしれない。この場合、複製やリンク、インデックスの作成にとどまらない活動までもが含まれることは明白だ。つまり、個々のカナダ人の表現の自由という基本的権利の行使まで含んでいるのである。
大規模プラットフォームでニュースについて議論したり、運動に参加したりすることへの課税は、呆れるほどに愚かなアイデアです。どんな理屈であろうと正当化できるアプローチではありません。もしこれが実現するのであれば、オンラインプラットフォームの成功を妬む新聞業界は、また新たな記念碑を築くことになるのでしょう。現時点での検討からも、リンク税の悪質性や危険性が良くわかります。にもかかわらず、リンク税の支持者たちは、リンク税は単なる著作権の一種、「付随的」権利に過ぎず、大騒ぎするようなものではないと言い続けているのです。
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The EU link tax was bad enough, but Canada’s threatens to be even worse – Walled Culture
Author: Glyn Moody / Walled Culture (CC BY 4.0)
Publication Date: March 9, 2023
Translation: heatwave_p2p