以下の文章は、電子フロンティア財団の「Science Rebels Take on Major Publishers」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

先月、40人を超える科学者たちが、ゲートキーピングと偽りの希少性に基づく不公正な出版モデルに抗議して、権威ある学術誌「NeuroImage」の学術委員を辞任した

学術出版は、現代科学の進歩の基礎である。専門家の協力と検証を促し、理想的には命を救う医学研究などの新しいイノベーションを生み出す。だが、最先端の研究は、しばしばペイウォールに閉じ込められ、料金を支払う余裕のない人々や機関が事実上アクセスできずにいる。米国英国の裕福な大学でさえ、多くの図書館が増大し続ける購読料に苦慮し続けている。その結果、すべての人の進歩が阻害され、その影響はとりわけ貧しい国々で最も顕著に見られている。

学術出版社は、運営を維持するために高額な料金が必要なのだと主張する。だが、実際の研究に資金を投じているのは政府や機関であり、研究者が無報酬のボランティアで論文を査読しジャーナル論文のホスティングと配布のコストはインターネットのおかげで極めて小さい。だからこそ、RELX傘下のエルゼビアを始めとする大手学術出版社は、Apple、Google、Amazonなどのビッグテックすら及ばないほどの法外な利益率を誇っているのである。

学術界は以前から、この不条理なモデルを批判し続けてきた。多くの研究機関や研究者は、これらの大手出版社をボイコットし、従来の出版モデルに代わるオープンアクセスへの投資を加速させている。昨年8月にも、バイデン大統領は、公的資金が投入されたすべての研究を直ちに公開する期限を2025年に設定し、この戦いをさらに前進させた。

出版社もこうした潮目の変化を受けて、いわゆる妥協案を提示し始めた。研究者が自分の研究を広くアクセスさせるオープンアクセスの見返りに、掲載料の支払いを要求したのだ。「NeuroImage」の掲載料は3,450ドル(約47万円)で、研究者たちは掲載料の減額を求めたもののエルゼビアは耳を貸さなかった。つまり、論文を執筆した研究者たちは、この不当な掲載料を自費で賄うか、自分の論文をペイウォールに閉じ込めるかのどちらかを選択肢しなければならなくなったのである。

だが、研究者たちはこの不条理な方針にNOを突きつけた。オックスフォード大学、キングス・カレッジ・ロンドン、カーディフ大学の教授らをはじめとするジャーナルの全学術委員が、この方針に反発して一斉に辞任したのだ。

彼らは、エルゼビアが課す掲載料を「非倫理的」と表現した。この集団的反抗は、科学の発展よりも過剰な利益を重視する出版社に食い物にされることをもはや容認しないという学術界の強力なメッセージを突きつけている。

EFFは、エルゼビアのような大手出版社を見放し、非営利のオープンアクセスジャーナルでの出版を求める科学者の呼びかけを支持する。こうした搾取的な出版社への貢献をコミュニティとして拒絶することで、学術界は、公平性とデータアクセスを支える長らく待望されてきたモデルの構築に向けて、学術出版のあり方を転換することができるだろう。

Science Rebels Take on Major Publishers | Electronic Frontier Foundation

Author: Rory Mir / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: May 10, 2023
Translation: heatwave_p2p