この6大メジャースタジオの計画が実現すれば、新作映画を劇場公開からわずか30日後に、自宅に居ながらにして、たった30ドルで楽しめるようになるかもしれない。現在の遅れを3分の1にまで短縮することになるのだが、その交渉はまだ初期段階にあるという。配信までの期間と映画館への補償に関してスタジオの意見が分かれているようだ。

価格の問題を除けば、インターネット上の著作権侵害の主な原因の1つとして、コンテンツの利用可能性がしばしば指摘されている。消費者が容易に、遅延なくコンテンツにアクセスできるとしたら、その大半が合法的な選択肢を選ぶと考えられている。

音楽産業は、世界統一の金曜リリース戦略やストリーミング・プラットフォームへの即出戦略によって需要と供給のギャップを克服し、大きな飛躍を遂げた。しかし、複雑な構造のマルチ・プラットフォーム配給システムを持つ映画産業には、ことはそれほど単純にはいかない。

劇場公開と同時にさまざまなフォーマットで新作映画にアクセスできるようなれば、著作権侵害対策として十分な効果が見込めるかもしれない。とはいえ、ハリウッドは、同じ人に同じコンテンツを複数回売るためのウィンドウ戦略を必死に守ってきた。

しかし現在、映画スタジオは劇場公開直後に自宅で新作映画をレンタルさせてもいいのではないか、と態度を軟化させつつあるようだ。

Varietyによると、ハリウッド大手7スタジオのうち6スタジオが、劇場公開から30〜45日後に、新作映画を30ドル程度でレンタル配信するプランを検討しているという。

FOXとワーナーがこのプランに乗り気だと言われているが、別のプランも浮上している。ユニバーサルは劇場公開後3週間以内のVOD配信を検討し、また、ワーナーは17日後に50ドル以上のレンタル配信を検討しているという。

もちろん、いままでよりも早くコンテンツを家庭に届けるとなれば、米国中の映画館に影響がおよぶことは避けられない。それが交渉をすすめる上で大きな懸念となっている可能性がある。しかし、ワーナーは、劇場公開ウィンドウの縮小に同意してくれれば、VOD収益を分配することも提案もしているという。

ハリウッド大手スタジオがこのプランに前向きななか、唯一ディズニーだけが反対しているようだ。ディズニーの金庫(Disney Vault)とも揶揄される人為的な制限を作り出した企業であることを考えると、さして驚くべきことでもない。

しかし、家庭への早期リリースへのスムーズな移行を望むのであれば、少なくとも今は、足踏みしてはいられない。Varietyによれば、交渉は既に1年以上前から進められているが、幾つかの懸念点があり、かなり複雑な状況にあるという。

ユニバーサルは全面的な短縮を望んでいるが、ほかのスタジオは、上映中の映画館の数に応じたリリース・ウィンドウの短縮、延長を検討している。言い換えれば、劇場で飽きられるのが早いほど、家庭向けの配信が早まるということである。そうなれば、人気の映画ほど劇場上映の期間が長くなり、海賊版の需要が高まることになる。

イノベーションが求められている一方で、映画館主たちが補償を求めていることも注目に値する。劇場公開後90日以内に低価格の映画レンタルが行われる可能性があり、これを10年以上に渡って続けるのであれば、補償を求めると伝えられている。

映画スタジオが独自の早期配信モデルを検討しているというニュースは、Napster創業者のショーン・パーカーには痛手であろう。1年前の今月、パーカーが劇場公開と同時に自宅で映画を楽しめるビジネスを構想していると報じられていた。

いささか楽観的なアイデアであったが、パーカーの全体的な枠組みは、現在ワーナーが賛成しているプラン――レンタル価格は50ドルでそのうち20ドルを映画館に分配――によく似ている。パーカーの価格には(訳註:映画館にも足を運ぶように)2枚の映画チケットも含まれていたが、スタジオのプランにはこのアイディアは盛り込まれていないようだ。

また、現在提案されている2〜4週間のウィンドウが、早期のVOD配信がインターネットの海賊版に大いに貢献するという懸念を打破できるほど長いかという点にも疑問が残る。

昨年、600の映画館を代表する業界団体Art House Convergenceは、パーカーの同時配信モデルが「海賊版コンテンツの急速な拡散」を招き、「興行収入の共食いを経て映画産業全体の収益を落ち込ませる」最初の一歩となる、と批判した

もちろん、映画ビジネスにかかわるすべての人が、そんなことは望んでいない。さて、どうなる?
Studios Mull New Movies at Home, 30 Days After Release For $30 – TorrentFreak

Author: Andy / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: March 22, 2017
Header Image: Jeremy Bishop
Translation: heatwave_p2p