Spotifyは、無料アカウントの一部制限を回避するよう改造されたアプリを使用してアクセスしていたユーザに、警告メールを送信した。Spotifyはユーザのソフトウェアから「異常な活動」が検知されたことを伝え、違反が継続する場合にはユーザアカウントが一時停止や凍結される可能性もあると警告する。
Spotifyは世界中で1億5900万人以上のユーザに利用される素晴らしい音楽ストリーミングサービスだ。昨年12月に公表された統計によれば、7100万人がプレミアムプランに加入しているという。
それを踏まえると、8800万人のSpotifyユーザがフリープラン――つまり、シャッフル限定再生や楽曲スキップ回数の上限、広告といった制限を受けているということになる。
無料のユーザであっても十分なサービスを受けられているということでもあるのだが、プレミアムプランの移行へのもうひと押しは非常に難しいということでもある。
多くの無料ユーザには知られていないが、改造Spotifyアプリを利用すれば、こうした制限を回避することができる。Spotifyに無料登録し、無数にある「ハック版」Spotifyアプリをダウンロードして、ユーザ名とパスワードを入力すれば、プレミアム版として利用することができてしまう。
こうしたハック版アプリの利用者がどの程度存在するかは不明だが、Spotifyが何か手を打つ素振りを見せないことは長らく謎であった。しかし数日前、取り締まりが進行中であることを伺わせるアクションを見せた。
実数は不明であるが、相当数のユーザに送られたとみられるメールのなかで、Spotifyは改造アプリを使用を把握していることを伝え、サービスの停止を匂わせる警告を行った。
「ご利用のアプリケーションで異常な活動が検出されたため、機能を一時的に無効にしています。ご心配なく――あなたのSpotifyアカウントは安全です」とメールにはある。
「Spotifyアカウントにアクセスするには、無許諾または改造版のSpotifyをアンインストールし、Google Play Storeから正規Spotifyアプリをダウンロードしてインストールするだけです。詳細なヘルプが必要な場合は、Spotifyの再インストールに関するサポート記事をご覧ください」
複数のユーザがSpotifyのフォーラムで、このメールを受け取った理由について質問している。心当たりのないユーザも一部にはいたが、ほとんどは改造版のアプリを使用していたようだ。
メールでは、Spotifyユーザであることに感謝の意を表する一方で、警告も伝えられている。
「利用規約に違反して、不正なアプリの継続的な使用が検出された場合には、アカウントの停止や凍結を含むすべての権利が留保されています」とSpotifyは伝える。
メインのアカウントを使って改造版アプリを使用していた場合には大問題になる可能性もあるが、こうした改造版アプリを使用するユーザの大半は、サブあるいは一時的なメールアドレスと嘘の個人情報を記入していることが多い。
Spotifyがこうした改造版アプリ対策をどの程度進めているかは不明であるが、今回の取り締まりの影響はまだまだ混沌としている。
改造版アプリを使用するユーザに話を聞くと、あるユーザは改造版でもインストールは可能だと話す一方で、もう改造版はインストールできなくなっていると話すユーザもいる。
しかし確かなことは、Spotifyが改造版のユーザとその製作者の両方を補足してるということだ。2018年3月1日、Spotifyは「Dogfood」として知られる人気のSpotify modをレポジトリから削除するようGitHubに要求している。
削除通知の全文はこちらから確認できる。この通知では、Dogfoodに加え、GitHubが削除した「フォーク」もリストされている。
すでに今年1月の時点で、Dogfoodの開発者がアプリの効果を制限するよう圧力を受けていた形跡があった。1月18日、彼はXDAで一部の機能を削除することを公表していた。
「XDAのルールおよびCoCに準拠するため、Spotify Dogfoodは新たな方向性を示し、広告フリーの音楽再生に限って提供しています」と彼は綴っている。
「このmodには他の機能は含まれていません。しかしこれまでのように定期的にアップデートを続けていきますので、もしあなたがこのアプリの、真の、コアなユーザであれば、何の問題もないことはご理解いただけると思いますが」
その開発が今後どこで行われるかは不明だが、少なくともGitHubにその居場所はないだろう。実際、XDAはSpotifyのターゲットとなっており、同サイトからリンクの削除とディスカッションの閉鎖を求めるDMCA通知を受け取っている。
今のところ、Spotifyは少なくとも改造版アプリのユーザに対しても、穏やかに接しているが、その柔和な態度がいつまで続くかは不明だ。同社は株式上場を控え、株価時価総額は230億ドル(約2兆4500億円)に達すると見られている。
とはいえ、Spotifyは世に出る以前から海賊と深い関わりを持っている企業だ。何らかの秘策を持っているのかもしれない。
Publication Date: March 5, 2018
Translation: heatwave_p2p
header Image: Joel G Goodman / CC BY-NC-SA 2.0