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EUは欧州著作権法の近代化に向けた計画を進めている。今月下旬に重要な採決を控え、反対派からの抗議の勢いが増している。彼らは現在提案されている計画が、インターネットでの自由なコンテンツ共有を脅かす「インターネットフィルタ」をもたらすと警告。海賊党のジュリア・レダ欧州議会議員によれば、著作権フィルタの影響は、インターネットユーザだけにとどまらず、クリエイターやビジネスに及ぶという。

2016年9月、欧州委員会は著作権法の近代化に向けた提案を発表した。とりわけ、オンラインサービスに海賊版対策の強化を義務づける措置が盛り込まれていた。

なかでも著作権指令案「第13条」は、オンラインサービスに著作権者と協力して、海賊版コンテンツを検出・削除する義務を定めている。

欧州委員会は、著作権者を支えるために不可欠な変化であると強調した。しかし、多くの法学者デジタル活動家政治家、一般市民が、インターネットユーザの権利が侵害されるとの懸念を次々に表明している。

先月、欧州理事会は、提案の最終版を確定した。この提案は次に、欧州議会法務委員会(JURI)に送られ、どのように進めるべきかが決定されることになる。その採決が2週間後に行われることになっている。

第13条は「フィルタ」という言葉で表現されることが多いが、条文自体に「フィルタ」という言葉が記載されているわけではない。

海賊党のジュリア・レダ欧州議会議員によれば、提案はEU法や基本権憲章に違反する可能性があるため、巧妙に「フィルター」というキーワードを避けているのだという。しかし、その言葉を使おうと使うまいと、もたらされる結果に変わりはない。

つまり、オンラインサービスは、著作権者が著作権侵害だと認識する行為を予防するための「効果的かつバランスの取れた」措置を講じない限り、ユーザがアップロードしたコンテンツに法的責任を負うことになる。さらに、提案にはこうしたコンテンツが再アップロードされないようにすることも義務づけられている。

後者は、ハッシュ・フィルタリングのような、アップロードされるすべてのコンテンツの継続的な監視を義務づけている。すでにGoogleドライブやDropbox、YouTubeなど、いくつかの企業がこうしたフィルタを導入している。しかし、大半のオンラインサービスはそうではない。

特に批判が向けられているのは、アップロードされたコンテンツの機械的なチェックが、オーバーブロッキング(過剰削除)を引き起こすという点だ。この手のフィルタは、フェアユースなどがはらむ複雑さを理解できないのだ。

「この提案は、ユーザにアップロードを許すサービス、つまり著作権侵害が起こりうるあらゆるサービス――YouTubeやFacebookだけでなく、WordpressやTripAdviser、Tinderなど――にフィルタを義務づけています。こうしたアルゴリズムに頼るフィルタは、これまでもしばしば誤った判定により適法なコンテンツを大量に削除してきたことを、私たちは目にしてきました」とジュリア・レダはTFに語る。

「特に、小規模のインディペンデント・クリエイターはしばしば、第三者による不当な権利の主張により自らの作品を削除されています。こうしたコピーフラウド(著作権詐欺)に対するセーフガードが、提案には盛り込まれていないのです」

この提案は、一般的なインターネットユーザや小規模クリエイターに影響を及ぼすのみならず、多くの企業にも『打撃』を与える。システム上で共有される著作権侵害コンテンツを検出し、予防することが義務づけられるためだ。

そのため、すでにこのようなフィルタを導入している米国の大手インターネット企業は、中小企業や新興企業に対する大きな競争優位性を手にすることになるとジュリア議員は指摘する。

「法令遵守に必要なフィルタリング技術を開発・販売できるのはインターネット大手に限られるため、その影響力はますます大きくなるでしょう。欧州のインターネットユーザ、作家、企業はすべて、不利益を被ることになります」

このところの強い反発を見るに、現在の提案は多くの人に脅威であると見られているのだろう。

欧州議員に声を届けよう

実際、クリエイティブ・コモンズやEFF、オープン・メディアなどの著名な団体が支援する「Save Your Internet」キャンペーンは、再びその勢いを増している。彼らは、手遅れになる前に議員に声を届けるよう欧州市民に訴えている。

「著作権指令案13条が採択されれば、インターネットで共有されるすべてのコンテンツが検閲されることになる。その未来を変え、インターネットを救うことができるのは、欧州議会だけだ」と綴られている。

13条には、その範囲を限定するための文言が含まれている。たとえば、オンラインサービスの性質と規模が考慮されており、数十人のユーザを抱える小規模かつ適法なサービスであれば、フィルタを実装していなくても著作権侵害の責任を問われることはない。

また、非営利団体もこの規則の影響を受けないことになっている。ただし、この点については一部の加盟国から変更が求められている。

13条以外にも、いわゆる「リンク税」と呼ばれる11条への反発も強まっている。

現時点で複数の組織が、来週中にも市民に声を上げるよう促す抗議デモを実施するという。

JURIの採決の1週間後、その日が(訳註:6月20日 or 21日が)『審判の日』だ。

欧州委員会を通過すれば、この計画は来春の著作権リフォームの最終投票に向けて進展していくことになる。この段階に入ってしまうと、廃案や修正は極めて難しくなってしまう。ACTAのように、まったく不可能ではないにしても、非常に困難であることは間違いない。
Judgment Day Nears for EU’s ‘Piracy Filters’ – TorrentFreak

Author: Ernesto / TorrentFreak / CC BY-NC 3.0
Publication Date: June 4, 2018
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Save Your Internet ( CC BY 4.0 )