以下の文章は、電子フロンティア財団の「Why Outlawing Cryptocurrency Purchases is a Terrible Idea」という記事を翻訳したものである。先に、こちらの短い記事か、こちらのもうちょっと長い記事を読んでおくと背景がわかりやすいと思う。

Electronic Frontier Foundation

先週、ある米下院議員が、イランやエジプトなどに対抗する暗号通貨規制政策として、米国人による暗号通貨取引を禁止する立法を呼びかけた。現時点では具体的な法案が提案されているわけでも、米国人による暗号通貨の購入や取引を禁じるかどうかの説明があったわけでもない。とはいえ、暗号通貨禁止法がいかにひどいアイデアであるかを説明する良い機会ではあるのだろう。

暗号通貨を禁止しようという提案は、根本的な誤解に基づいていることが多い。よく言われるのは、犯罪者は違法行為を容易にするために暗号通貨を使用している、したがってその違法行為を抑止するには暗号通貨を禁止すべきだ、という理屈である。こうした主張は複数の間違いを抱えている。第一に、すでに存在し、今後も発展を続けるであろう暗号通貨の適法な利用を無視している。暗号通貨は過去10年に渡り、取引コストがほぼゼロで、銀行のような仲介者を必要しない価値の保管・移転のために利用されてきた。アプリケーションが増え、暗号通貨の保管や交換が容易になったことで、消費者は日常的に、overstock.comで家具を購入したり、海外の家族に送金したりといった正当な目的で暗号通貨を利用している。また、暗号通貨テクノロジーに関連したイノベーションにより、利用事例もさらに幅広くなっている。たとえば一部の暗号通貨は、特定の条件が満たされると自動的に暗号通貨を他者に譲渡するコンピュータプログラム(いわゆる「スマートコントラクト」)を可能にしている。これは、暗号通貨の禁止によって失われる技術が実現するほんの一例に過ぎない。

テクノロジーが違法行為に利用されうるという事実は、それを禁止すべきことを意味するわけではない。たとえば、犯罪者は長きわたり、犯罪に現金を利用してきた。しかし、現金を禁止しろなどという主張を聞いたこともないし、銀行強盗犯が逃走にフォード車を使ったからといって、責任追及の声が上がったということもない。また、犯罪者というのは、その定義上、法律を違反することをいとわない者であり、したがって法律によって犯罪者による暗号通貨の使用を阻止できるはずもない。結局のところ、暗号通貨の禁止したところで、米国人から重要な技術へのアクセスを奪う一方で、それを悪用する犯罪者にはほとんど効果はないのである。

我々はこうした理屈を以前から目にしてきた。エンド・ツー・エンド暗号化やTorに否定的な人々は、犯罪者がそのプライバシー保護機能を悪用し、身を隠すために利用していると主張する。しかし、一部暗号通貨はその匿名性やプライバシー保護機能ゆえに、将来が期待されている技術なのだ。現在のところ、多くの暗号通貨はまったくもってプライベートではない。トランザクションは永続的な公開台帳に記録され、ユーザは公開鍵で識別される。プライバシー保護の面では、現金に比べ遥かに劣っているのだ。よりプライベートな暗号通貨の開発に向けていくつかのアプローチが進んでいるものの、BitcoinやEthereumのように普及したツールはまだ存在していない。プライバシー保護を目指す暗号通貨の登場が期待されてはいるが、反動的な規制によってこうしたツールの芽が摘まれないようにしなくてはならない。

金融取引は、我々の生活の私的な領域をあらわにする。たとえば、宗教的信念、家族の状態、病歴など、プライベートにしておきたい様々な生活の側面があぶり出されてしまう。しかし、米国法は金融プライバシーを十分に保護してはおらず、限定的な保護――たとえば、グラム・リーチ・ブライリー法(銀行が情報共有ポリシーをユーザに通知し、ユーザ側にオプトアウトする機会を提供しなくてはならない)や、強力なカリフォルニア州金融情報プライバシー法(カリフォルニア州在住であれば)、公正信用報告法(金融取引ではなく、主に信用取引に焦点を当てたもの)――のパッチワークとなっている。それゆえに、金融取引のプライバシーを守るための新しいツールが望まれているのである。法的権利が我々が望むほどには強力でも拘束力もない中で、消費者のプライバシーを保護する技術的ソリューションが求められているのだ。暗号通貨禁止法案が可決されれば、この金融プライバシー保護のための革新的技術の開発は萎縮することになるだろう。

暗号通貨のイノベーションは、不均衡を是正する可能性も秘めている。米国には、政府発行の身分証を持たない、家がない、安全上の理由で住所を明かせない、銀行手数料の不払いなどの理由で、銀行口座を開設できない人が数百万人いる。公正信用報告法は、銀行が顧客に口座開設拒否の理由を開示することを義務づけているが、銀行口座の開設を保証してはいない。暗号通貨は将来、こうした銀行口座を持たない人たちに金融サービスを受ける道を開く可能性を秘めている。

また暗号通貨は、現在の金融商品に比べ、当然のことながら検閲に強い。我々EFFは、適法な言論を理由に金融検閲(Financial Censorship)に直面した多数のウェブサイトを追ってきた。変態性欲者のソーシャルネットワークLGBTQフィクションを支援する非営利団体オンライン書店、有名どころでは内部告発サイトWikileaksなどが金融検閲に直面した。暗号通貨は、現在我々のオンライン決済の大部分を支配する既存の大手金融機関に代わる強力な市場を開いてもいるのだ。

こうした考えは何も今に始まったことではない。人類は検閲への抵抗とプライバシーをもたらす現金の特性を数千年にわたって享受してきた。暗号通貨は、その特性をオンラインの世界にもたらすため道筋を提供する。

このことは、暗号通貨がこれらの目標をすべて達成したということを意味するわけではない。実際、この分野に注目する多くの人々が、暗号通貨がアーリーアダプターの希望を実現できているかという点については、不満の声をあげ、懐疑的に見ている。しかし、暗号通貨批判の急先鋒であっても、この分野における誤った規制が、プログラマの法的権利を制限することに懸念しなくてはならない。

多くの新技術と同様に、暗号通貨のエコシステムも深刻な問題に直面している。これには、テクノロジーへの無知につけ込む詐欺師、真の分散化の達成に向けての問題、暗号通貨アプリケーションのセキュリティ強化、秘密鍵を保有する組織による悪用の可能性などが含まれている。これらの問題には、技術的かつコミュニティ主導の対応が必須であるし、場合によっては、立法が必要になることもあるだろう。だが、法律によって暗号通貨を規制するにしても、一般の消費者を縛るものではなく、この技術を不正利用する人々に焦点を当てなくてはならない。

そうした法律を作るためには、慎重さが求められる。どのような法律であろうと、新興テクノロジーへの参入経路をしっかりと確保し、ユーザの参加なしには暗号通貨の取引や取得ができないようにしている非管理型サービスの従事者に対する保護を明確にし、単にコードを書いたり公表するだけの者に対する強力な保護が必要とされる。また、そうした法律は技術的に中立でなくてはならず、特定の暗号通貨を法律に盛り込んだ結果、同様の機能を有するプロジェクトに予期せぬ悪影響をもたらすようであってはならない。

暗号通貨規制の適切なバランスを見つけるためには、議員が消費者の権利を守り、イノベーションを促進しなくてはならない。米国人の暗号通貨の購入を禁止することは、近視眼的で反消費者的であり、その基準を満たすものではない。

この草稿にフィードバックしていただいたマルタ・ベルチャーに感謝する。

Why Outlawing Cryptocurrency Purchases is a Terrible Idea | Electronic Frontier Foundation

Author: Rainey Reitman (EFF) / CC BY 3.0 US
Publication Date: May 13, 2019
Translation: heatwave_p2p
Header Image: Mrco Verch / CC BY 2.0