以下の文章は、電子フロンティア財団の「Trump Calls On Congress To Pass The “Take It Down” Act—So He Can Censor His Critics」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

我々はこれまでTake It Down法案に反対してきた。この法律は、権力者が単に気に入らないという理由で合法的なコンテンツを削除するツールとして悪用されうるからだ。昨夜、トランプ大統領はこの法案に対する本音を明かした。彼はこの法案の成立を望み、それを利用して――自分に関するコンテンツを削除したいと考えている。そして彼だけでなく、他の権力者も同じことをするだろう。

トランプは連邦議会合同会議で次のように語った。

上院はすでにTake It Down法案を可決した……。下院でも可決されれば、私はこの法案に署名して法制化することを楽しみにしている。そして、皆さんが気にしないのであれば、私自身のためにもこの法案を使うつもりだ。なぜなら、私ほどオンライン上でひどい扱いを受けている人間は誰もいない。誰一人としてだ。

プライバシー情報:この埋め込みはarchive.org から提供される / 動画ソース:C-SPAN。

Take It Down法案は極めて広範囲に及び、粗雑に起草された法案である。実質的に何の歯止めもないインターネット投稿削除システムを作り出すことになる。この法案は確かに深刻な問題――同意なき親密な画像(NCII)の拡散――に対処することを目的としているが、その通知・削除システムは、権力者が嫌うコンテンツをウェブサイトから排除するよう圧力をかける機会を提供する。NCIIの定義を極端に広げたり、あるいは荒唐無稽なほど拡大解釈して削除を要求しても、それに対する罰則は一切存在しない。

この法案は批判者を罰するものであり、大統領は今すぐその成立を望んでいる

トランプが「ひどい扱いを受けている」という理由だけでTake It Down法案を利用すると公言していることを、議会は真剣に受け止めなければならない。これは法案の本来の意図とはあまりにかけ離れている。現在の法案の文言には、誰であろうと――特に豊富なリソースを持つ者が――通知と削除[Notice and Takedown]システムを悪用して、自分への批判や意見の相違を含む発言を排除することを防ぐ要素が何一つ含まれていない。

トランプは公職者として、また一般市民としても、彼を批判する完全に合法的な発言を掲載したプラットフォームを繰り返し標的にしてきた。また批判者を沈黙させ、重要な報道活動から貴重な資源を奪う不当な訴訟をメディアに対して起こしている。

トランプが演説でこの法案への行動を呼びかけたことで、下院共和党は早ければ来週にもこの法案を予算パッケージに組み込み、迅速に処理する可能性が出てきた。同意なき親密な画像の問題は確かに深刻であり真剣な対応が必要だが、法的に保護された発言まで巻き込むような拙速かつ広範な法案ではなく、慎重な検討が求められる。

Take It Down法案がいかにして言論を封じるか

数週間前、トランプ大統領とイーロン・マスクの「ディープフェイク」動画が住宅都市開発局の複数のモニターに映し出された。この動画はその後、様々なプラットフォームで共有された。トランプがマスクの足にキスするフェイク映像を「同意なき親密画像」とは普通考えないだろうが、この法案の削除条項は「識別可能な個人」が「性的に露骨な行為」に関わる内容に適用される。この定義はあまりにも解釈の余地が広く、必ずしも裸体や露骨な描写を要件としない。

さらに深刻なのは、コンテンツがNCIIであると主張する要請者を思いとどまらせるような罰則が一切ないことだ。アプリやウェブサイトは要請を受けてからわずか48時間以内にコンテンツを削除しなければならない。このような制約が課されていては真偽を確認する時間すらない。特に要請者が調査や訴追を開始できる権限を持つ公職者である場合、いったいどのウェブサイトがそのような要求に抵抗できるだろうか。

下院はこの危険な法案を通すべきではない

議会は広範な削除体制を採用するのではなく、NCIIに対処するための既存の多くの民事・刑事法を執行・改善することに注力すべきである。Take It Down法案は、フェアユースに基づく批評からニュース報道まで、合法的なコンテンツまで誤検出する不正確な自動フィルターの使用を促進することになるだろう。また暗号化サービスを脅かし、コンテンツを監視できるよう暗号化そのものを放棄させることにもつながり、その結果、プライベートな会話が監視される空間へと変質してしまう。

NCIIの被害者を守ることは正当な目標である。しかし、良い意図だけでは良い政策は作れない。あなたの議員に検閲に反対し、H.R.633法案に反対するよう訴えかけよう。

Trump Calls On Congress To Pass The “Take It Down” Act—So He Can Censor His Critics | Electronic Frontier Foundation

Author: Jason Kelley / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: March 5, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: ken fager (CC BY-NC-SA 2.0)