以下の文章は、電子フロンティア財団の「Texas’s War on Abortion Is Now a War on Free Speech」という記事を翻訳したものである。
テキサス州議会はまたしても、現代の安全かつ有効な中絶手段の代表格である薬剤による中絶に対する攻勢をかけている。
上院法案(S.B.)2880*は中絶薬の販売・流通阻止を目指すが、それだけにとどまらない。オンライン上の特定情報へのアクセスを制限することで、人々が中絶薬について知る機会そのものを奪おうとしている。
この法案が成立すれば、中絶誘発薬の入手方法に関する「情報提供」が違法となる。中絶を希望する内容のメールやオンラインチャットも違法となりかねない。他州の合法的中絶サービスについて情報を共有するウェブサイトでさえ法に触れるおそれがあり、SNSへの投稿ですら危険を伴うことになる。
この法案は自らコンテンツを作成・投稿する個人だけでなく、そうしたコンテンツを単にホストしたり利用可能にしたりするソーシャルメディア、ウェブサイト、メールサービス、メッセージングアプリなど、あらゆる「インタラクティブコンピュータサービス」も標的にしている。
つまりテキサス州議員たちは、これらのトピックに関する議論の芽を摘むだけでなく、既存の議論さえ見つけられないようにしようとしている。彼らの目標はこうした情報をインターネットから完全に消し去ることにある。これは明らかに言論の自由に関わる深刻な問題であり、成立すれば悲惨な結果を招くだろう。
この法案は人々を恐怖で黙らせるよう巧妙に設計されている。
まず、S.B. 2880は一般市民に法律違反者を訴える権限を与える。「インタラクティブコンピュータサービス」も、「テキサス州民が選択的中絶や中絶誘発薬を得るための取り組みを援助、扇動、支援、促進する情報や資料にアクセスすることを許可した」場合、訴訟の対象となりうる。
これはテキサス州上院法案8と同様、特定情報について語ったり、アクセスを提供したりする人々に対して誰でも訴訟を起こせるよう促すものだ。その狙いは言論の自由を萎縮させることにあり、実際にそうなるだろう。訴訟の脅威は、女性に生殖に関する選択肢の真実を伝えようとする人々を沈黙させる道具となり、結果として女性の健康や命を危険にさらすことになる。
次に、S.B. 2880はオンライン仲介事業者に中絶関連コンテンツの削除を促している。例えば法律下で訴えられた場合、プラットフォームは発見後すぐに「選択的中絶や中絶誘発薬を得る取り組みを支援・促進する情報へのアクセスをブロックした」ことを証明できれば、責任を免れる。
さらに法案はテイクダウンやサービス拒否、「この種の情報へのアクセスや入手可能性を制限するためのあらゆる措置」から生じる訴えに対し、「絶対的かつ放棄不能な免責」を付与している。つまり検閲を理由にソーシャルメディアプラットフォームやインターネットプロバイダーを訴えても、彼らは責任を問われないことになる。これはより多くのウェブサイト、投稿、ユーザーをブロックする方向に天秤を傾けるものである。
この43ページに及ぶ法案には、3か所もの条項で修正第1条で保護される言論や行為を禁止するものではないと念押ししている。しかし言論の自由を制限しないと単に宣言するだけで、実際にそうなるわけではない。この法案の明らかな目的は中絶薬に関するオンライン情報へのアクセスを制限することにある。我々の言論の自由を侵害しない形でこの法案下の訴訟を起こすことなど、想像し難い。
この法案が課す民事・刑事責任は、中絶薬に関する言論を含むユーザー生成コンテンツをホストするオンライン仲介事業者の権利を保護する連邦法、47 U.S.C. § 230(「セクション230」)とも衝突する。法案は明示的にセクション230と矛盾しないと述べているが、この保証はセクション230の保護が強固である限りにおいてのみ意味を持つ。しかし議会は現在、セクション230の改正、さらには完全廃止を検討している。セクション230の弱体化は、この法案によって力を得た人々が裁判所を通じて仲介事業者やプラットフォームに中絶薬情報の削除を迫る余地を広げることになるだろう。
政府が情報へのアクセスを制限しようとするとき、我々の修正第1条の権利は常に脅かされる。これこそがテキサス州議員たちがS.B. 2880で企てていることなのだ。生殖医療についての立場がどうであれ、言論の自由を大切にする者は誰もが、この法案とその類似法案に反対するよう議員たちに働きかけるべきである。
* H.B. 5510はS.B. 2880と同一内容の下院版である。
Texas’s War on Abortion Is Now a War on Free Speech | Electronic Frontier Foundation
Author: Jennifer Pinsof / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: April 28, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Jon Tyson