以下の文章は、電子フロンティア財団の「Former EFF Activism Director’s New Book, Transaction Denied, Explores What Happens When Financial Companies Act like Censors」という記事を翻訳したものである。
ペルシャ詩のオンライン講座を教える米国市民が、ある日突然、支払いを受け取ることも資金にアクセスすることもできなくなる。PayPalとその傘下のVenmoがアカウントにフラグを立て、凍結したためだった。ムスリムのニューヨーク市議会議員は、取引の際にバングラデシュ料理店の名前を使っただけで、Venmoの送金をブロックされた。官能小説のオンラインコミュニティは、決済アカウントを繰り返し失う。薬物合法化運動に携わる人々は、銀行口座の維持に苦心している。
一見、これらは個別の問題に思えるかもしれないが、そうではない。こうした事態は恐ろしいほどの頻度で発生していると、2022年にEFFを離れた元EFFアクティビズム・ディレクター兼最高プログラム責任者のレイニー・ライトマンは、新著『Transaction Denied』で明らかにしている。本書は、しばしば闇に隠れがちなこの深刻な問題に新たな光を当て、ますます重要性を増す問いを我々に突きつける――「金融仲介業者がオンライン上の表現の裁定者として振る舞うことは、果たして許されるのか」と。
ストーリーテラーであると同時にアドボケイトでもあるレイニーは、我々の選択、言論、そして究極的には社会のあり方を形づくる、隠された権力のシステムを白日の下にさらしている。――シンディ・コーン
ライトマンは、金融機関や決済仲介業者がアカウントを閉鎖し取引を妨害することの影響を、説得力のある個人の物語を通じて論証する。そのなかには、これまで語られてこなかったエピソードも含まれている。被害を受けた人々の顔ぶれは多様だ。作家、教師、ジャーナリスト、選出された政治家――こうした人々がある日突然、資金を引き出すことも受け取ることもできなくなる。十分な説明も、透明性も、救済手段もないままに。その理由の多くは言論に関わっており、恣意的な企業方針、法律の(誤った)拡大的解釈、あるいは反対派からの圧力への対応として生じていることを、ライトマンは示している。
ペルシャ詩の教師の例では、口座凍結の原因は、米国によるイラン制裁の極端にリスク回避的な解釈にあった。本来、兵器開発やテロリズムを抑止するための制裁が、詩の教授やニューヨーク市の市議会議員まで巻き込んでしまったのである。ライトマンは、こうした制裁がムスリムに対して不均衡な影響を及ぼしていることを実証している。
しかし『Transaction Denied』は、言論の自由のために闘おうとする人々のためのガイドでもある。本書は10年以上にわたる成功したキャンペーンを取り上げ、アドボカシー活動が勝利を収めうること――そして時に、検閲推進運動に対抗するためにそれが不可欠であることを示している。ライトマンは、1992年以来クィアコミュニティのための官能小説の拠点であるNifty Archiveを支援する非営利団体、Nifty Archive AllianceのStripeアカウント復旧を支援したキャンペーンの舞台裏を紹介する。また、セルフパブリッシングの小説プラットフォームであるSmashwordsのPayPalアカウントを復旧させたEFFの連合キャンペーンについても取り上げている。さらに、言論の自由と報道の自由にとって決定的な瞬間となった出来事として、複数のEFFスタッフと2人のEFF理事が、今日もEFFと提携してジャーナリストの権利擁護を推進している新たな非営利団体Freedom of the Press Foundation設立の核となった経緯を描いている。
今はEFFのスタッフや関係者による書籍の当たり年だ。過去30年間にわたるオンラインプライバシーの変遷が気になる方は、EFFエグゼクティブ・ディレクターのシンディ・コーンによる『Privacy Defender』をお勧めする。5月に刊行された(ハードカバー版の売上はすべてEFFに寄付されるため、購入すればシンディが大切にしている理念のためにEFFが闘い続ける支援にもなる)。巨大金融企業が、言論を理由に個人のアカウントを閉鎖し、事実上その資金へのアクセスを封じてしまう――そんなシステムに囚われた個人の問題が気がかりな方は、今月初めに刊行された『Transaction Denied』を手に取ってほしい。Beacon Press、Amazon、Bookshop.orgで入手可能だ(著者の印税の半分はFreedom of the Press Foundationに寄付される)。
きっと、どちらの本も手元に置きたくなるはずだ。良き読書を!
Former EFF Activism Director’s New Book, Transaction Denied, Explores What Happens When Financial Companies Act like Censors | Electronic Frontier Foundation
Author: Jason Kelley / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: April 29, 2026
Translation: heatwave_p2p
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本書『Transaction Denied』については、やはりこの分野について精力的に取材・執筆を続けてきたReason誌のエリザベス・ノーラン・ブラウンの書評記事が大変に良かったのでおすすめしたい。
余談ではあるが、この手の金融検閲によっておそらく最も不利益を被っている分野の1つが、セックス/ポルノだろう。セックス/ポルノがテクノロジーを介して広がりを持つ時代において、それを頑なに封じ込めようとする社会や政治との摩擦や軋轢、あるいはそのテクノロジーがもたらす実際の負の影響については、翻訳できる良い記事が見つかったときには本ブログでも紹介しているのだが、残念ながらそんなに多くはない。
なので、この分野の最前線に興味のある方は、Reasonのエリザベス・ノーラン・ブラウンと、元Viceで、現404 Media記者のサマンサ・コールの記事を追いかけることをおすすめしたい。かつてのSESTA/FOSTAにしても、最近の年齢認証法にしても、彼女たちの記事を読めば、その背景にある宗教・社会・政治的動きがよく見えてくる。私は非常に参考にしている(特にサマンサ・コールのVice時代の記事はものすごく面白い)。
日本では勘違いされがちだけど、少なくとも米国においてこの手の問題に積極的に関わって声をあげているのは、ACLUを始めとする表現の自由アドボカシーやポルノ産業、セックスワーカーやLGBTQ+のコミュニティ、そして彼らと連帯するフェミニストくらいなものなんだよね。