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インターネット上のウェブサイトやフォーラムは、新たな性的人身売買対策法「FOSTA(オンライン人身売買禁止法)」違反を回避するため、自社プラットフォーム上での成人向けコンテンツに関連した表現を検閲し続けている。この法律の不明確かつ曖昧な文言、極めて厳しい刑事罰や民事上の責任により、憲法で保護されるべきコンテンツがインターネットから排除されている。

この検閲の結果、弱い立場に置かれているコミュニティやその支援団体、特に人身売買・児童虐待・セックスワーカーの支援団体や性の自由を掲げる団体や個人は、壊滅的な状況に置かれている。弱い立場にある多くの人たちが、セックスに関連するコメントや投稿、広告がFOSTAによって摘発されることを恐れるあまり、インターネットから離れ、再び街に戻り、そこで性的虐待や暴力の被害にあっている。

原告のウッドハル自由財団ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アレックス・アンドリュー、インターネット・アーカイブ、エリック・コチックは昨年6月、この法律の無効を求めて訴訟を起こした。昨年夏、連邦裁判官は、同法は違憲であるとする我々の訴訟を棄却した。裁判官は我々の主張に耳を傾けるどころか、原告の誰も法律に異議を申し立てる立場にはない――つまり危害を受けたわけでも、受けるわけでもない――と判断した。EFFは、ライツ&トリメイン、ウォルター・ロウ・グループ、ダフニ・ケラーと共に共同弁護士として訴訟に臨んだ。

この判断は誤りであり、それゆえ原告は上訴している。2月20日に上訴趣意書を提出し、予審判事の判断がいかに間違っているか、なぜこの法律が撤廃されねばならないのかを説明した。先週、複数の組織が我々の主張を支持し、上訴審に法廷助言書を提出した。

原告は、表現を規制する法律への異議申し立ては、FOSTAに基づく実際の執行措置を待つ必要はないと主張する。当事者適格は、政府による法の解釈ではなく、原告の法解釈に基づいて判断されるべきである。原告らはFOSTAによる損害は既に生じていることを強調し、その例として、ウッドハルおよびアンドリューはFOSTAによる訴追という合理的な恐れによって自己検閲を行っていること、インターネット・アーカイブは不確実なモデレーション義務という重い責任を負わされていること、コチックはFOSTAによってクレイグスリスト(Craigslist)のパーソナルセクション、セラピーセクションが閉鎖され、利用していた広告プラットフォームを失ったことを挙げた。これは当事者適格の要件を十分に満たしており、修正第一条の違憲訴訟における自由主義的な当事者適格要件に照らせばなおさらである。

原告の主張は、4通の法廷助言書においても強く支持されている。以下に、法廷助言書を要約する。

表現を萎縮させる法律は特別の配慮を必要とする

上訴趣意書で述べたように、憲法修正第一条の違反が懸念される場合、裁判所は表現の自由を脅かす法律ないし規制によって影響を受ける対象について、広い見地から捉える義務を負っている。表現の自由研究所(Institute for Free Speech)はこの主張に同意し、助言書の中でこの問題について解説している。裁判所は、表現が萎縮を引き起こす明確な脅威が存在する場合、修正第一条の権利に関わる法律はその執行前に異議申し立てを審理できる。そして、FOSTAによって複数の団体で表現の自己検閲が引き起こされたという十分な証拠がある(詳細は以下に記す)。

この訴訟で、FOSTAを擁護する政府の弁護士は、原告が当事者適格を欠くのみならず、原告の提示した表現の萎縮はFOSTAによって引き起こされたものではないと予審判事を説き伏せた。しかし、政府が彼らに対してFOSTAを執行しないという保証はなく、州検事総長や私人が、原告を始めとする人々に損害賠償を請求したり、刑事訴追することを阻止するものでもない。研究所の弁護士は以下のように記している。

本件のような訴訟のために、修正第一条の当事者適格ドクトリンが作られたのである。それは、広い射程を持ち、曖昧で、修正第一条が保護する活動領域を直接制限する法令に対する執行前の異議申し立てを認めている。そして、議会はその(訳注:FOSTAの)執行の分権化を選択し、民事訴訟当事者や州検事総長を含む多数の当事者に違反者への訴訟提起を許しているのである。

FOSTAは、売春を「助長」するコンテンツをインターネット上に掲載することを違法化し、インターネットサイトから合衆国法典第47編230条通信品位法の保護を剥ぎ取るものである。第230条では、ウェブサイトは自ら制作・公開したコンテンツについてのみ法的責任を負うものとし、第三者によって投稿されたコメントや意見に含まれる表現については免責されるとしている。

FOSTA(正式名称:州および被害者のためのオンライン性的人身売買対策法 / Allow States and Victims to Fight Online Sex Trafficking Act)は、未成年者の性的搾取をふくむ広告やその他コンテンツを禁止することにより、性的人身売買と戦うことを目的としている。しかし、FOSTAの焦点は性的人身売買の加害者には向けられてはおらず、インターネットを利用して売春を「助長」または「性的人身売買に寄与」する発言者を厳しく罰するものとなっている。Craigslistは同法通過の数日後には、個人広告セクションを閉鎖した。同セクション内の誰かがFOSTAに違反したとして訴追されれば、サービス全体の存続が危ぶまれるためだという。

FOSTAは政府による成人向けコンテンツ検閲の取り組み

「民主主義・技術センター(Center for Democracy and Technology, CDT)」は法廷助言書の中で、政府が成人向けコンテンツを違法化しようとしては連邦最高裁判所に棄却されてきた長い歴史を概説・指摘した上で、FOSTAへの一時差止命令を認めるよう裁判所に要請している。裁判所は過去に、憲法で保障された表現を萎縮させる法律は違憲であると認めている。インターネットの登場を受け、議会はウェブサイトやオンラインパブリッシャーを通信品位法第230条により、――悪意のないものであれ、攻撃的なものであれ――第三者によるコンテンツの責任から保護した。しかしFOSTAはこの230条の保護を覆すものであり、議会ははじめてこの保護の範囲を狭めることになった。CDTは助言書の中で次のように述べている。

利用者の表現をホストすることへの免責がなければ、こうした仲介者は、成人の合意の上での性的出会い系フォーラムでのやり取りや、セックスワーカーが身を守るための情報に至るまで、利用者の表現を大幅に制限するようになるかもしれない。事実、それは上訴趣意書で概説したように、既に起こり始めており、公衆衛生・安全、政治的対話、経済的成長を促す情報へのアクセスを制限しはじめたプラットフォームもある。

FOSTAが引き起こす検閲は増え続けている

セックスワーカー、人身売買のサバイバー、その他の被虐待者コミュニティを支援する11の人権団体の弁護士たちは、FOSTAがセックスワークと、人身売買や売春とを混同して扱っていると指摘する。ウェブカムセックス、性的マッサージ(sensual bodywork)、アダルトビデオといった自由意志のセックスワークは適法である。彼らのウェブサイトや投稿が気分を害したり、不愉快に思えるものであったとしても、その表現は保護されているのだ。しかし、FOSTAの曖昧な条文ゆえに、FOSTA違反として誤解されやすいのである。

そのため、こうしたコミュニティで働く人々は、インターネット上で自己検閲を始めたり、FOSTAのせいで参加していたフォーラムが閉鎖されるという事態に直面している。彼らは収入を失っただけでなく、インターネット上のコミュニティ、支援、衛生、そして危険を回避するためのサービスも失ったのだ。Tumblrなどのソーシャルメディアは、あらゆる性的視覚表現(graphic sexual content)を削除するようになり、LGBT、トランスジェンダー、インターセックスコミュニティのような、最もスティグマ化された性的マイノリティに影響を及ぼしている。FOSTAによる自己検閲は、暴力的な結末をもたらしている。この助言書のために情報提供してくれた支援団体によると、FOSTAによるスクリーニングがあるからとインターネットの利用を恐れたセックスワーカーが、新たな顧客を会い、集団暴行を受け、暴力を振るわれ、強盗被害にあったという。この人権団体はこのように述べている。

FOSTAは、それ以前の法律と同様に、それが保護しようとしていたはず個人と、社会において最も脆弱なコミュニティの双方に、壊滅的な影響をもたらしている。…… 多くのセックスワーカーが、危険なクライアントや避けるべき地域などの情報をネット上でやり取りすることを恐れるようになっている。そうしたコミュニケーションが「売春の助長」とみなされるかもしれないと考えている。FOSTA以前からもそうであったが、そうした安全のための表現までも標的にされうるという恐怖は、FOSTAによって引き起こされているのである。

RedditやTechdirt.com、スタートアップを支援する非営利のテクノロジー政策団体 Engine Advocacyは、FOSTAが利用者のコメントをホストするウェブサイトに課した重い負担について上訴審に述べている。たとえばRedditは、FOSTAによって課せられる責任を回避するため、セックスワーカーの危機回避・安全のためのフォーラムを閉鎖するよう圧力をかけられていると認識している。そうすることで、FOSTAが表面上減らそうとしているはずのセックスワーカーの実際の危険を増やすことになるとしても。また、一部のフォーラムは、アダルトコンテンツを詳細にモニターしなくなるだろう。議論されている内容について知りすぎれば、性的人身売買を助長し、貢献したとみなされ、FOSTAに違反する恐れがあるためだ。彼らは助言書の中で次のように述べている。

適用範囲の広い曖昧なルールは、ほぼ必然的に適法なコンテンツの削除を招く。膨大な投稿すべてをニュアンス、文脈を考慮した上で審査することは不可能であり、FOSTAが標的とするコンテンツを見落とすリスクを排除するには、そうするより他にないからだ。

これはまさに、EFFが訴えてきた種類の検閲行為に他ならない。それは実際に、そして常にインターネット上で起こり続けているのである。裁判所にはこの証拠を検討し、FOSTAが憲法に反して表現を沈黙させている理由について我々の主張に耳を傾けるよう望む。

With FOSTA Already Leading to Censorship, Plaintiffs Are Seeking Reinstatement Of Their Lawsuit Challenging the Law’s Constitutionality | Electronic Frontier Foundation

Author: Karen Gullo and David Greene (EFF)/ CC BY 3.0 US
Publication Date: March 1, 2019
Translation: heatwave_p2p
Material of Header Image: David Holt (CC BY 2.0)

FOSTAの問題を考えるにあたっては、この法律が求められた背景を知る必要がある。ここでいう性的人身売買とは、おおよそ「暴力や脅迫によって身体的、精神的に支配されて、社会的に隔離された状態で売春を強要される」という売春強要のことを指している。成人であっても大問題なのだが、家族と折り合いが悪く家出してきたり、都会に憧れて出てきた未成年者が犯罪組織に囚われ、その被害にあうことも多い。米国における性的人身売買は社会問題ともいえる深刻な問題となっており、その撲滅が叫ばれながらも根絶には至っていない。

FOSTAにおいて「売春を助長する」オンラインプラットフォームが標的にされたのは、Backpage.comのようなクラシファイド(三行)広告サイトが人身売買業者に利用されていたためだ。一昔前であれば、街角のコールガール(最近ではエスコートガール)を暴力で支配していた組織が、こうした広告サイトを利用して顧客を募っていたのである。中でも悪名高いのはBackpage.comで、同サイトに掲載された広告を調査した結果、売春に従事させられていた未成年者が救出されるという事件も度々起こっており、2016年には創業者でCEOのカール・フェラーが児童買春斡旋・共謀の容疑で逮捕されている。それでもBackpage.comの運営が継続したことから、このサイトを潰すための法規制が必要だということになった。

そうして作られたのがFOSTA(と後にパッケージングされる姉妹法案のSESTA)であり、上院下院とも圧倒的賛成多数で可決したのだが、この法律に反対する意見もめっぽう強い。というのも、オンラインプラットフォームを規制しても、オンラインからは見えなくなるだけで、実際の性的人身売買がなくなるわけではないのだ。ネット上の売春広告をなくしたところで、性的人身売買組織が壊滅するわけではなく、その活動を(より危険な)街に戻すだけなのである。さらに米司法省からも売春広告を手がかりした捜査が困難になると指摘されているように、救出や摘発が余計に困難になるのではないか、という懸念もある。

もう1つの問題点は、この法律が性的人身売買だけに標的を絞ったものではなく、自由意志で行われるセックスワーク(売春)まで広く網にかけるものであったことにある。性的人身売買の温床として糾弾されたクラシファイド広告は、一方でセックスワーカーにとっては福音でもあった。ネットのエスコート広告を利用することで、犯罪組織に支配されることなく、独立して商売できるようになったし、危険な街に出なくても済むようになったし、客を選ぶ(ヤバい客を避ける)こともできた。しかしそれが奪われてしまえば、犯罪組織やヤバい客、さらには取締当局に怯えながら、再び危険な街に戻らなくてはならない。

さらに、FOSTAはインターネットに形成されたセックスワーカー・コミュニティを危機に晒してもいる。広告サイトのフォーラムやソーシャルメディアは、セックスワーカーにとって衛生問題、経済問題、ヤバい地域、身を守るための情報など、彼らにとって重要な情報を交換、共有する場にもなっていた。しかし、FOSTAによってプラットフォームは過剰に性に関するコンテンツを避けるようになり、プラットフォームを利用するセックスワーカーたちは、FOSTA違反を恐れて自己検閲を始めている。自らの仕事を支える場を失っただけでなく、共助の場としてのコミュニティすら失ってしまったのだ(この影響については、かつて閉鎖に追い込まれたRedbookについて書かれたWiredの記事に詳しい)。

性的人身売買の被害者を守るためであれば、セックスワーカーが犠牲になるのは仕方ないという考え方もあろうが、彼らとて犠牲を押しつけられるほど強い立場にあるわけではない。むしろ脆弱な立場に立たされている人々であり、いつ性的人身売買の被害者になってもおかしくない人々なのである。

EFFやACLUは、主に表現の自由の観点からFOSTAの問題点を指摘しているが、個人的にはセックスワーカーの人権問題からこの法律を見直し、その非犯罪化(合法化ではない)も含めて議論されるべきであろうと思う。

リソース

FOSTAがもたらした問題に関連する日本語記事を以下にリストする。興味のある方はぜひご覧いただきたい。

また、EFFがFOSTA可決以前にその問題を解説した記事を翻訳しながら公開していなかったので、以下に記載する。

Electronic Frontier Foundation

下院議会はオンラインプラットフォームにユーザを検閲させる法案を表決しようとしている。「州と被害者のためのインターネット性的人身売買対策法(FOSTA:Allow States and Victims to Fight Online Sex Trafficking Act, H.R. 1865)」と聞けば、崇高な法案だと感じるかもしれない。しかし、この法案は性搾取的な人身売買業者を抑止するためのものではない。オンラインプラットフォームに、ユーザの発言をこれまで以上に監視させ、その過程で適法な声を黙らせるものである。

昨年12月、FOSTAは非常に危険な法案ではあったが、上院の法案「性的人身売買抑止法(Stop Enabling Sex Traffickers ActSESTA, S. 1693)」ほどインターネットへの影響は大きくはなかった。しかし、それは変更されようとしている。

下院立法委員会は、SESTAの危険な要素の大半を組み込んだFOSTAの修正版(pdf)を承認しようとしている。この新たなフランケンシュタイン法案は、インターネットの中間媒介業者(プラットフォーム)、社会から取り残されたコミュニティ、さらには人身売買の被害者自身にも災難をもたらすものとなりうる。

もし、議会にオンラインコミュニティを傷つけさせたくないなら、地元議員に電話をかけ、FOSTAに反対するよう促してほしい

通信品位法第230条を弱めても解決はしない

FOSTAは、オンラインプラットフォームを保護する法律「通信品位法 第230条」を弱め、ユーザの発言への責任を負わせる法案だ。以前に説明したように、現代のインターネットは強力な第230条のおかげで発展してきた。第230条がなければ、我々が利用しているオンラインプラットフォームが形成されることはなかった。ユーザの行動に対して責任を負うリスクはあまりにも高すぎる。

第230条は、オンラインプラットフォームがユーザの発言に責任を負う場合について、バランスの取れた解決策を提示している。FOSTA支持者の主張とは異なり、第230条は連邦刑法を犯すプラットフォームを保護するものではない。特に、インターネット企業が性的人身売買の広告に意図的に関与していたならば、米司法省は訴追できるし、そうしなければならない。さらに、インターネット企業が違法コンテンツの製造に直接関与していることを原告が証明できれば、ユーザ生成コンテンツへの民事的責任を免れる事はできない。

FOSTAの修正法案は、この絶妙なバランスを崩し、プラットフォームの刑事的、民事的責任を連邦レベル、州レベルで強化するものとなる。これには、(18 U.S.C. § 1591に加えて)ウェブ・プラットフォームを取り締まる性的人身売買の連邦犯罪も含まれるが、こちらは性的人身売買を目的として使用されるというプラットフォーム側の知識を要件とはしていない。また、オンラインプラットフォームへの州法にもとづく刑事訴追、ならびに連邦法にもとづく民事訴訟や州司法長官による連邦法の民事執行のための第230条の適用除外も含まれる。

おそらく、もっとも恐ろしいのは、FOSTAの修正法案は、第230条の変更を遡及的に適用することだ。つまり、この法律が成立する以前に、(訳註:この法案が定める規制を)遵守していなかったとして起訴される可能性があるということである。

FOSTAはイノベーションを萎縮させる

これらの措置によって、イノベーションは萎縮し、インターネット企業間の競争は抑制されてしまうだろう。GoogleやFacebookのような大企業であれば、FOSTAがもたらす訴訟や、肥大化した責任を負うための予算を割くことができるし、法を遵守するための自動フィルターと人間の検閲官を置くことはできるだろう。しかし、小規模なスタートアップはそうはいかない。さらに、訴訟リスクが高まるなか、新興スタートアップ企業がGoogleと競合するのに必要な資金を獲得することは難しくなる。

今日の大手インターネット企業は、第230条の保護なしにはなし得なかっただろう。FOSTAはそうした企業の成長を支える支柱を取り去り、新規参入を困難にする

FOSTAは被害者の声を検閲する

さらに危険なのは、FOSTAがオンラインの表現に与える影響だ。極端な刑事罰、民事的責任を課されるため、大小さまざまなオンラインプラットフォームは、適法な声まで黙らせるより他なくなってしまう。SESTAとFOSTAの支持者は、性的人身売買に関連した投稿とそうでない投稿は容易に区別できるという。そんなはずはない――FacebookやRedditほど大規模なサイトになれば、取り締まることなどまず不可能だ。この問題は、FOSTAが連邦売春規制法を拡大することでさらに悪化する。プラットフォームは広範囲に及ぶ投稿、特にセックスに関連した投稿を削除するための極端な措置を講じなくてはならなくなる。

FOSTA/SESTA支持者のなかには、プラットフォームが自動フィルタを導入すれば、性的人身売買広告を適法なコンテンツと区別することができると主張する人もいる。あまりに馬鹿げた考えだ。人間でさえ、性的人身売買と適法な投稿を区別することは難しいというのに、コンピュータが100%に近い精度で区別することなどできるはずもない。プラットフォームはリスクを回避するために、フィルタを調整し、過剰検閲を強いられるだろう。ウェブプラットフォームが自動フィルターに依存するようになれば、社会から取り残された人々の声を消し去ってしまうことになる。

悲劇的なことに、最初に検閲されるのは性的人身売買の被害者自身になるだろう。人身売買の被害者たちが助けを求めたり、経験を分かち合うために用いるまさにその単語やフレーズが、性的人身売買コンテンツを排除しようとするフィルターの削除対象なのだから。

警察官やその他の人びとがオンラインプラットフォームで発見した手がかりによって、多くの人身売買業者が執行機関に逮捕されている人身売買との戦いにもっとも効果的であると証明されたツールを解体してしまう前に、議会はもっと時間をかけ、慎重に考えなければならない。

FOSTAは間違ったアプローチである

どのような修正を加えようとも、FOSTAが人身売買との戦いに効果を発揮し、インターネットの市民的自由を尊重するようなかたちになることはない。それはFOSTAやSESTAの条文が1つや2つの問題を抱えているどころではなく、全体のアプローチが間違っているためだ。

オンラインプラットフォームに重い責任を求める法的ツールを作り上げたところで、性的人身売買業者を罰することはできない。むしろ、我々が日々利用している安全なオンラインコミュニティを罰することになる。その過程で、人身売買業者を刑務所送りにするのにもっとも効果的なツールを失ってしまう。FOSTAは正しいソリューションではない。端を切り落としたところで、何の解決にもならないのだ。

オンラインコミュニティの安全性を守りたい、どんなセンシティブな話題であっても、インターネット上で発言する権利を守りたいのであれば、いますぐ、地元の議員に電話をかけ、FOSTAに反対するよう促してほしい
FOSTA Would Be a Disaster for Online Communities | Electronic Frontier Foundation

Author: ELLIOT HARMON (EFF)/ CC BY 3.0 US
Publication Date: FEBRUARY 22, 2018
Translation: heatwave_p2p