以下の文章は、電子フロンティア財団の「First Porn, Now Skin Cream? ‘Age Verification’ Bills Are Out of Control」という記事を翻訳したものである。
「子供たちをポルノから守る」という名目で年齢確認法案が売り込まれていた時代を私は覚えている。そう、デジタル世界に潜む漠然とした危険(例えば…「トランスジェンダー」)から子供たちを守ると謳われていた。我々はそうした法律の危険性について長年警鐘を鳴らし、なぜ失敗する運命にあるのかを指摘してきた。たとえ善意から生まれたものだとしても、急増する年齢確認の仕組みは我々のデジタルの自由に深刻な脅威をもたらしている。
それから数年がたち、これらの法律は――残念ながら我々が指摘していた通りに――まったく別の形に姿を変えていった。未成年者をオンラインの「露骨な」コンテンツから守るという見当違いの取り組みは、スキンケア製品、デートアプリ、さらにはダイエット製品にまで影響を及ぼすプライバシー侵害的な監視体制へと拡大し、すべての人のプライバシーの権利を脅かす複雑な問題へと発展している。
監視社会への抜け道となる年齢確認法
年齢確認法は「子供をオンラインで保護する」以上のことに手を伸ばしている。年齢角煮法は全ての人から膨大な個人情報を収集するシステムの構築を要求し、その結果、インターネットを子供にとって安全にするどころか、年齢に関係なく、単にコンテンツや製品にアクセスするだけで身元確認を強制される。これは単なる手違いではなく、計画された戦略である。アラバマ州の年齢確認法案提案者が認めたように、「ソーシャルメディア規制の難しさは承知していたので、『まずはポルノをとっかかりにして、次の会期で可決されたら、ソーシャルメディアの問題(訳注:規制)に取り組もう』と考えた」のだという。つまり、ポルノを標的にすれば感情的な反応を引き出しやすく、法案を通しやすくなると考えたわけだ。これは安全対策を装った、より広範な監視システム導入の第一歩に過ぎない。
この憂慮すべき傾向は、2025-2026年州議会会期の初月に提出された年齢確認法案の広がりからも明らかだ。次の3つの法案を見てみよう:
- スキンケア:AB-728(カリフォルニア州) 年齢確認がついにスキンケア売り場に進出!カリフォルニア州のAB-728は、ビタミンAやアルファヒドロキシ酸などの特定成分を含むスキンケア製品や化粧品の購入者に年齢確認を義務付けている。一見すると無害に思えるかもしれない――未成年者を有害物質から守りたくない人がいるだろうか?しかし本当の問題は、そこに潜む侵入的な監視スキームである。単なるフェイスクリームを買おうとする人が「年齢確認システム」を通じてセンシティブな個人データの提出を強いられ、何の変哲もない製品のために常時監視とデータ収集の体制が構築されてしまう。
- デートアプリ:A3323(ニューヨーク州) 理想の相手とのマッチング? 政府発行IDなしでは夢のまた夢。ニューヨーク州のA3323法案は、出会い系サービスがプラットフォーム利用前にユーザの年齢、身元、居住地の確認を義務付けている。この法案の広範な要件は全ユーザのプライバシーに重大な懸念をもたらす。政府発行IDや位置情報といったセンシティブな個人情報の提供を強制することで、データの悪用、販売、漏洩といった深刻なリスクを生み出すことになる。
- ダイエット製品:SB 5622(ワシントン州) 脂肪にサヨナラしたいならプライバシーにもサヨナラ? ワシントン州のSB 5622は、18歳未満へのダイエット薬や食事サプリメントの販売制限を目指している。この法案は若者を潜在的に有害なダイエット製品から守る意図があるものの、年齢確認プロセスに伴う大規模なプライバシーリスクを見落としている点で見当違いも甚だしい。この制限を実施するため、法案は店頭やオンラインでのダイエット薬購入に際して侵入的な個人データ収集を要求し、センシティブ情報の悪用への扉を開いている。
年齢確認の問題:安全な解決策など存在しない
はっきりさせておこう。プライバシーを保護しつつ完全に正確な年齢確認方法など存在しない。また、これらの方法は「より安全」から「より危険」までの単純な尺度で測れるものでもない。むしろ、あらゆる形態の年齢確認は「ある面で危険」か「別の面で危険」かのどちらかでしかない。これらのシステムには根本的な欠陥があるし、何らかの代償を払わずには実現できない。さらに、ただネットを閲覧したり日用品を購入したりするだけで大規模なデータ収集に晒されたくない大人たちに過度な負担を強いることにもなる。
例えば、年齢確認システムが政府発行の身分証明書や顔認証スキャンを要求する場合、驚くほど大量のセンシティブで、多くの場合変更不可能なバイオメトリックやその他の個人データが収集される。これはネットユーザのプライバシーとセキュリティを危険にさらすものとなる。クレジットカード情報、電話番号、他のサードパーティ情報に依存するシステムも同様に、膨大な個人データを蓄積する。こうしたデータは他のあらゆるデータと同様に悪用される恐れがあり、個人情報の盗難やデータ侵害の脆弱性を生み出す。これらの問題は単なる理論上の懸念ではない。年齢確認プロバイダにはすでにハッキングされた実例がある。これはプライバシーを大切にする人にとって、現実の、今この瞬間も続いている問題だ。
我々は監視システムを作り出し市民的自由を損なう年齢確認法案に強く反対し、拡大する年齢確認法がもたらす危険性について現実を直視しなければならない。子供を保護するという意図は理解できるが、その意図を超えた結果として、全ての人のオンラインにおけるプライバシー、セキュリティ、表現の自由が大規模に侵食されることになる。制限的な年齢確認システムに固執するのではなく、立法者はより優れた、侵襲性の低い方法ですべての人をオンラインで保護する方策を模索すべきだ――すべてのリスクを個人に押し付けたり、基本的権利を脅かしたりしない方法を。
EFFは引き続きデジタルプライバシー、セキュリティ、表現の自由のために声を上げていく。我々は立法者に対し、こうした不可欠な価値観を支える解決策を優先し、インターネットが学び、つながり、創造するための場であり続けることを確保するよう求める――常時監視や検閲の脅威なしに。フェイスクリームを買うにせよ、デートアプリをスワイプするにせよ、ダイエット製品を探すにせよ、年齢確認法は我々の求めるビジョンを損なうものである。我々はより良い方向へと進まなければならない。
First Porn, Now Skin Cream? ‘Age Verification’ Bills Are Out of Control | Electronic Frontier Foundation
Author: Rindala Alajaji / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: March 7, 2025
Translation: heatwave_p2p
Material of Header image: Poko Skincare