以下の文章は、NiemanLabの「You might discover a conspiracy theory on social media — but you’re more likely to believe it if you hear it from a friend」という記事を翻訳したものである。

党派性、陰謀思考、現実世界のつながり—この3つが組み合わさると、左右両派で強力な効果を生む。

新しい陰謀論をお探しだろうか? ソーシャルメディアは絶好の情報源だ。では、そこで陰謀論に接したとして、あなたはその陰謀論を信じるようになるだろうか?

これは、ドナルド・トランプ暗殺未遂事件(7月13日)をめぐる陰謀論を調査した新たな研究が投げかける問いだ(学術界の素早い対応には感心させられる)。この研究によると、ソーシャルメディアは陰謀論を知るうえでは生産的な情報ソースだが、それを信じるかどうかは、友人や家族から聞いた方が影響が大きいという。

この論文は、キャサリン・オグニャノバ(ラトガース大学)、ジェームズ・N・ドラックマン(ロチェスター大学)、ジョナサン・シュルマン(ペンシルベニア大学)、マシュー・A・バウム(ハーバード大学)、ロイ・H・パーリス(ハーバード大学)、デイビッド・レイザー(ノースイースタン大学)による共同研究だ。アブストラクトは次のとおり:

陰謀信念は不適応行動を引き起こし、稀に暴力的な行動にまでつながる可能性がある。本論文は、トランプ元大統領に対する暗殺未遂をめぐる陰謀に焦点を当て、陰謀論への接触信念を区別する珍しいアプローチをとる。

調査の結果、ソーシャルメディアを通じて陰謀論とのかなりの接触があることが判明したが、ソーシャルメディアへの依存度は陰謀論への信念とは相関していなかった。むしろ、対人関係がより大きな役割を果たしていた。陰謀的思考と政治的動機も、陰謀信念を持つことと密接に関連している。

これらの結果は、是正的介入を行う際には、コミュニケーションにおいても心理的にも大きな障壁に直面することを示唆している。

さて、ペンシルベニア州ベセルでのトランプ集会での暗殺未遂後、あなたはどんな陰謀論を耳にしただろうか。共和党候補を排除するための民主党の陰謀だったという説――ジョー・バイデン自身が指示したとされる――を聞いただろうか。あるいは、候補者への同情と支持を集めるために共和党が自作自演したという説だろうか?1爬虫類人だった。みんな知っているよ、爬虫類人の仕業だったってね。

研究チームは、暗殺未遂の直後(7月17日から21日)に2,765人を対象に調査を実施し、左派・右派双方の主要な陰謀論について聞いたことがあるか、そしてそれらを信じているかを尋ねた(調査対象者の「たった」93%しかトランプ襲撃事件を知らなかった。残りの7%は…かなり変わったメディア消費習慣を持っていそうだ)。

調査の結果、38%が民主党員による暗殺未遂説を、50%が事件捏造説を聞いたことがあると答えた。そして、いずれの説も信じている人の割合は同程度だった。12%が民主党の陰謀説を「非常に可能性が高い」と答え、11%が捏造説を「非常に可能性が高い」と答えている。

(「非常に可能性が高い」ではなく「ある程度可能性がある」と答えた人も含めると、それぞれ30%と29%にまで増加する。)

興味深いことに(少なくとも私にとっては)、米国の政治でよく見られる分断が、ここでは通常ほど顕著ではない。分極化の重要な要因と見られている2この件については、マット・グロスマンデイビッド・A・ホプキンスによる新刊『Polarized by Degrees: How the Diploma Divide and the Culture War Transformed American Politics』(9月5日発売)を参照。大学卒業者も非大卒者も、ほぼ同じ割合で陰謀論を耳にし、ほぼ同じ割合で信じていた。多くの米国民が比較的短期間にこれらの陰謀論を知ったことは明らかだ。

これらの結果は、ブダクら3Misunderstanding the harms of online misinformation,” by Ceren Budak, Brendan Nyhan, David M. Rothschild, Emily Thorson, and Duncan J. Watts.他の4Fake news on Twitter during the 2016 U.S. presidential election,” by Nir Grinberg, Kenneth Joseph, Lisa Friedland, Briony Swire-Thompson, and David Lazer.研究者5Exposure to untrustworthy websites in the 2016 US election,” by Andrew M. Guess, Brendan Nyhan, and Jason Reifler. [の報告とは対照的だ。彼らは、オンラインの虚偽情報のほとんどに接触しているのは、比較的少数の米国民――主に強く動機づけられた党派主義者――だけだと主張している。我々の調査結果はまったく逆だ。米国民の半数以上が、主にソーシャルメディアと対人関係を通じて、これらの陰謀説の1つまたは両方を急速に知るに至った。そして、これらの話を知った人々のうち、無視できない割合がそれらを信じていたのだ。

これは、ブダクらが強調するような「ほとんどの」虚偽の話と、「選挙は盗まれた」という主張や、今回の大統領候補暗殺未遂のような最も注目度の高い虚偽の話との間には重要な違いがあることを示唆している。

オグニャノバらは、個人の特性とそれぞれの陰謀論を聞いたこと、信じることとの相関を分析した。予想通り、共和党員でトランプ支持者であることは、民主党による陰謀説を耳にする可能性が高め、トランプ大統領の業績評価が低い人々は、事件捏造説を耳にする可能性が高かった(つまるところ、党派主義者は自分たちの先入観を確認したがる)。また、全般的に陰謀論的な考え方を持つ人は、両方の説を耳にする傾向があった。6Exposure to untrustworthy websites in the 2016 US election,” by Andrew M. Guess, Brendan Nyhan, and Jason Reifler. [ ニュースソースとしてソーシャルメディアに依存している人々も、両方の陰謀論を耳にする可能性が高かった。他のニュースソースでは同様の効果は見られなかった。

陰謀論への信念に関しては、党派性と陰謀的思考が再び要因となった。しかし、ニュースの入手先に関しては、ソーシャルメディアへの依存は陰謀論を信じることとは相関せず、単に聞いたことだけと相関していた。では、陰謀論を信じることと相関するニュースソースは何だったのか。それは友人や家族だ。

共和党員は右寄りの陰謀論を、民主党員は左寄りの陰謀論を信じる傾向が強かった。陰謀的思考も予想通りの影響を示した。

重要なのは、ソーシャルメディアで陰謀論を耳にしたことは、それを信じることと有意な関連を示さなかったことだ。信念と一貫して関連していた唯一の情報源は、友人や家族だった。

つまり、党派的傾向と陰謀的思考は接触と信念の両方に関係しているが、ソーシャルメディアへの依存は接触にのみ関連しているということだ。これは、デジタルトレースデータのみを見ることの限界を浮き彫りにしている。

言い換えれば、FacebookやTwitterで多くのおかしなアイデアに出会うかもしれないが、親友からそれらを聞くことで、そのおかしなアイデアがあなたの頭の中に居座る可能性が高くなるようだ。陰謀的思考、党派性、そして現実世界の社会的つながりの組み合わせが、強力な効果を生んでいる。

ソーシャルメディアは陰謀論に触れる主要な経路だったが、その陰謀論に信憑性があると考えることは、社会的つながりを通じて聞くことと関連していた。この結果は、マスコミュニケーションと対人コミュニケーションの説得的役割に関する古典的な考え方と一致している。確かに、ほとんどの虚偽情報は大多数の米国民に届かないかもしれない。しかし、重要な例外がある。最も注目度の高い虚偽の話は、急速に多くの人々の耳に入り、無視できない割合の人々に信じられてしまう可能性がある…

最後に、この結果は陰謀信念を変えることの難しさを示している。そうした信念は通常、陰謀的思考の傾向がある人々、特定の信念を持つ動機がある人々、そして社会的つながりを通じて情報を得た人々によって保持されているのだ。

暗殺未遂直後のトランプの写真を木に巻き付けた写真は、SHYCITYNikonによる。クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下で使用。

ジョシュア・ベントンはNieman Labのシニアライターで元ディレクターである。問い合わせはメールjoshua_benton@harvard.edu)またはTwitter DM(@jbenton)まで。

You might discover a conspiracy theory on social media — but you’re more likely to believe it if you hear it from a friend | Nieman Journalism Lab

Author: Joshua Benton / Neiman Lab (President and Fellows of Harvard College) (CC BY-NC-SA 3.0 US)
Publication Date: Oct. 1, 2024
Translation: heatwave_p2p