以下の文章は、コリイ・ドクトロウの「General Strike 2028」という記事を翻訳したものである。
トランプはクズ(scab)だ(訳注:scabは「スト破り」を意味する言葉でもある)。
https://www.democracynow.org/2024/9/2/shawn_fain_2024_election
トランプはクズで、民主党は労働組合を必要としている。労働者階級の票は――まさに七面鳥がクリスマスに投票するかのように――割れたものの、組合員はほぼトランプに反対票を投じた。
トランプはクズで、民主党には労働組合が必要だが、民主党は労働組合の真の味方とは言えない。ハリス陣営の顧問で義弟のトニー・ウエストは、Uberの最高法務責任者として「ギグワーク」の労働法違反を合法化(非従業員化)したカリフォルニア州のスト破り法、プロポジション22の仕掛け人だ。組合つぶしによってギロチンにかけられて当然のハワード・シュルツが大統領候補の指名を受けるために、民主党から出馬したという事実だけでも多くを物語っている。マイケル・ブルームバーグの居場所があるような政党に、労働者の居場所があるはずがない。本当に、くたばってしまえ。
トランプはクズで、民主党には労働組合が必要で、民主党は労働組合の真の味方ではないが、労働組合は民主党を正す力を持っている。2018年の#RedForEdの教員ストライキを契機に、労働組合への社会的支持は広がりを見せ、労働者の組合加入への関心も高まり続けている。
https://theweek.com/articles/764828/teacher-strikes-could-future-alt-labor
トランプはクズで、民主党には労働組合が必要で、民主党は労働組合の真の味方ではなく、労働組合は民主党を良くし、労働者は労働組合を望み、市民は労働組合を支持している――にもかかわらず、組合員数は減少している。
減少しているのだ!これは紛れもなく労働組合の指導部に責任がある。労働組合は巨額の資金を持ちながら、組合加入を切望する労働者たちの組織化に、その資金を一切使おうとしない。
https://www.hamiltonnolan.com/p/ten-times-this
労働組合は過去最高の手元資金を抱えながら、組織化活動は過去最低の水準にある。この部分は労働組合の責任だ。
https://www.radishresearch.org/_files/ugd/2357dd_135794f88aa140f2962ee5c71ac31ff0.pdf
より正確には、労働組合のボスたちの責任である。米国の労働組合指導部は、総じてクソだ。経営者は弱い労働組合を望み、最大手の労働組合は何十年にもわたって経営者の言いなりになって、「二層契約」という自殺行為のような慣行を生み出した指導者たちが主導してきた。これは全労働者から組合費を取り立てながら、その組合費で賄われる保護は古株の労働者だけが受けられるという仕組みだ。
https://pluralistic.net/2024/05/20/a-common-foe/#the-multinational-playbook
「これから雇う全ての労働者に労働組合を憎ませる契約を作ろう」とじっくり頭を捻って考えたとしても、これ以上の契約は思いつかないはずだ。
そんな腐った労働組合のボスたちも、ようやく過去の遺物となりつつある。2023年、UAW(全米自動車労働組合)は何世代ぶりかの公正な選挙を実施し、ショーン・フェイン率いる急進派が理事会を掌握した。では、労働者たちはどうやってして労働組合を取り戻したのか? より多くの労働者を組織化したのだ! 具体的には、UAWはハーバード大学でひどい搾取を受けていた大学院生たちを組織化した。ハーバードの学生たちは労働組合の規約を暗記し、腐敗した古い幹部が指導部選挙を盗もうとするたびに、立ち上がって労働組合の規則を章と節を引用しながら朗読し、投票を継続させたのだ。
https://theintercept.com/2023/04/07/deconstructed-union-dhl-teamsters-uaw/
フェインはUAWを歴史的なストライキへと導いた。UAWは米国の自動車メーカービッグ3全てに挑み、完全に打ち負かした。UAW組合員は2028年に期限を迎える3つの新しい労働協約を勝ち取った。フェインはその後、全ての労働組合に2028年に期限切れとなる協約を交渉するよう呼びかけた。なぜなら、全ての労働協約が2028年に期限切れを迎えるなら、それはゼネラルストライキの導火線となるからだ。
つまり、次の大統領選挙は、米国の労働運動史上、過去1世紀で最も闘争的な時期の最中で行われることになる。これは千載一遇のチャンスだ。
労働運動はファシストと戦う。昔からずっとそうだった。トランプと共和党は、移民と戦うことで労働者を守るというたわごとを垂れ流しているが、彼らは決して労働者の味方ではない。確かに、労働者の数が増えれば賃金は下がる可能性がある。ただし、労働組合に入っていなければ、の話だ。保守派は決して労働組合を支持してこなかった。彼らは連帯を嫌悪してきた。保守派は、労働力が希少であれば賃金は上がると労働者に信じ込ませようとしてきた。そこには幾ばくかの真実も含まれるが、連帯は好不況にかかわらず持続する一方で、希少性は経営者が仕事をオフショア化、アウトソース化、自動化する方法を見つけた時点で消え失せる。希少性は脆いのだ。
「法と秩序」を掲げる連中は、数百万の隣人を刑務所送りにするという。ちなみに、合衆国憲法修正第13条は奴隷制を廃止したが、受刑者は例外だ。米国は世界史上どの国よりも多くの人々を投獄している。スターリンのグラーグや中国文化大革命の「再教育キャンプ」も霞むほどだ。米国の受刑者は毎年90億ドル相当のサービスと20億ドル相当の商品を生産している。米国の刑務所における平均賃金は時給0.53ドルに過ぎない。6つの州で刑務所での賃金の支払いを完全に禁止しているし、ノースカロライナ州では1日1ドルまでだ。
https://pluralistic.net/2024/04/02/captive-customers/#guillotine-watch
移民が米国の労働者の賃金を下げていると思うのなら、新たに投獄される膨大な数の時給0.53ドルの囚人奴隷が賃金に与える影響を見てみるといい。さらに言えば、カリフォルニア州民はつい先日、刑務所での奴隷労働を廃止する法案を否決したばかりだ。
共和党は労働者の味方ではなく、トランプの政策の下で労働者が恩恵を受けることなどない。労働者が恩恵を受けられるのは、労働組合に加入した時だけだ。ただしそれは、組合指導者が組織化に注力する場合に限られる。腐った組合のボス連中を排除してはじめて実現するのだ。このクズから始めよう。歴史のゴミ箱に投げ込まれて当然のヤツだ。
今後4年間、共和党がこの国を運営することになる。社会運動に希望を見出したくなる気持ちはわかる。おそらくトランプがあまりにもひどすぎるだろうから、みんなが非公式な連帯ネットワークを形成し、#Resistするはずだ、と。だが、歴史の教訓に従えば、そうはならない。トランプの下で最も助けを必要とする人たちは、自分たちが生き抜くことだけで精一杯になって、変化を生み出せるような運動を組織する余裕などなくなる。
アストラ・テイラーがKnow Your Enemyポッドキャストで指摘したように、OccupyもBlack Lives Matterも、オバマ政権下で生まれた運動だ。確かにその時期も11の意味で混乱していたが、少なくともICEが隣人の家を襲撃するようなことはなかった。
OccupyとBLMは、差し迫った生存の危機を抱えていない、余裕を持てた時期に生まれた。深刻な欠陥を抱えたプログレッシブな政権でさえ、そのような余地はあったのだ。
対照的に、#RedForEdの教員ストライキはトランプ時代の産物だった。社会運動が権威主義的な極右政権下で力を発揮するのは困難かもしれないが、むしろこういう時期こそ、組織化された労働運動が息を吹き返すチャンスとなるのだ。
https://www.hamiltonnolan.com/p/to-unfuck-politics-create-more-union
トランプは白人男性、特に若い白人男性の投票で選挙に勝利したが、白人女性票、そして黒人とラティーノの男性票なしには勝ち得なかった。こうした投票者の中には、女性の権利や人種的マイノリティの権利を支持していると自認する人物もいるだろう。だが、それでもトランプに投票した。なぜなら、彼らのアイデンティティのある側面――男性性や白人性――が、他の全てよりも重要だったからだ。
経営者たちはいつだってこの手の分断ゲームに長けている。ドイツ人労働者のストライキを破るためにアイルランド人のスト破りを、アイルランド人労働者のピケを破るためにポーランド人のスト破りを連れてきた。ピンカートンは白人のみの組合から排除された黒人労働者に頼ってきた。
我々のアイデンティティは複雑で絶えず揺れ動いている。女性の権利向上が自分たちの立場を脅かすのではと懸念する男性たち、あるいは黒人やラティーノの権利についても同様に考える白人たちの懸念が、完全に的外れというわけではない。「特権に慣れていると、平等が抑圧のように感じられる」という言葉があるように。
しかし、あなたのアイデンティティには、本質的に連帯を生み出す一面がある。それは、あなたが労働者か経営者かだ。ビジネスを所有しているなら、労働者の賃金が低いほど儲けられる。働く側なら、あなたが得る1ドルは経営者が失う1ドルとなる。労働者の利益は必然的に経営者の損失となる。
だからこそ彼らは我々に「財布で投票する」よう仕向ける。最も分厚い財布を持つ連中に有利なように票が操作されるだけではない。あなたを低賃金に苦しむ労働者としてではなく、低価格の恩恵に預かる「消費者」だと自認させることで、労働者としての意識を忘れさせようとしているのだ。
これは、「市場ベースの年金」が何十年にもわたって労働者の貯蓄を株式市場カジノに流し込み、経営者たちが負けようのない圧倒的な優位性を持つゲームで、永遠の負け役を演じさせられた後でさえ、変わらない真実だ。
https://pluralistic.net/2022/11/06/the-end-of-the-road-to-serfdom/
この何世代にも及ぶ策略の後でさえ、労働者が所有する株式市場のシェアはほんのわずかでしかない。GDPが上昇し、株式市場が急騰しているのに、あなたが貧しいままでいる理由はここにある。労働者の運命は株式市場とは無縁なのだ。彼らは労働者であって、所有者ではないのだから。
高給を得ていても、労働者であることに変わりはない。テックワーカーたちもようやくこの事実に気づき始めている。経営者たちは、テックワーカーは一時的にうまくいっていない起業家なのだから、労働組合など絶対に必要ないと吹き込んできた。その一世代に及ぶ詐欺の後でようやく。テックワーカーたちも気づき始めたのだ。
https://pluralistic.net/2024/02/16/narrative-capitalism/#sell-job
テックワーカーの力の源泉は希少性だった。だが、希少性など脆いものだ。テック業界は2023年に26万人の労働者を解雇し、2024年の上半期でさらに10万人を切り捨てた。テック企業の経営者たちは労働者の力を叩き潰した。次に何が起こるかはわかっている
次に起こることを我々が知っているのは、テック企業の経営者たちが代替可能な労働者をどう扱うかを知っているからだ。Amazonの倉庫労働者たちはペットボトルに排尿させられ、米国の他のどの倉庫労働者よりも高い確率で負傷している。ジェフ・ベゾスとアンディ・ジャシーがピンクのモヒカン、顔のピアス、意味不明なスローガンが書かれた黒いTシャツを着たコーダーを歓迎したのは、テックワーカーが好きで倉庫労働者が嫌いだったからではない。Amazonのコーダーがトイレに行きたい時に行けるという特権を持っていたのは、経営者たちが彼らの代わりがいないことを恐れていたからだ。今やコーダーが代替可能になった以上、テックワーカーの膀胱も危機に瀕することになった。
「未来はすでにここにある。ただ均等に分配されていないだけだ」。代替可能なAmazonのコーダーの未来を知りたければ、代替可能なAmazonの配達ドライバーの労働条件を見ればいい。運転中に口を開くだけでAIに処罰される監視下に置かれている彼らを。
https://jalopnik.com/amazon-bans-its-drivers-from-moving-their-own-lips-too-1851639312
聖人のように崇められた、ジュース・クレンジング信者の共同創業者スティーブ・ジョブズからAppleを引き継いだ、愛すべきティム・クックを覚えているだろうか? クックの功績、CEOの座と20億ドル以上の個人資産を手に入れることになった功績とは何だったか。Appleの生産を中国の工場にオフショア化する方法を見出したことだ。その工場の労働条件は、もう一分たりとも仕事を続けられないと悲観する労働者たちを捕まえるための自殺防止ネットを設置しなければならないほど悲惨なものだった。
それがティム・クックの考える「恐れなくていい労働者の処遇」だ。Appleの労働者は、どれほど高給を得ていようと、どれほど甘やかされていようと、労働組合を必要とする。なぜなら、ティム・クックは中国のiPhone組立ライン労働者のように扱える瞬間が来れば、必ずそうするからだ。
ティム・クックは今週、ドナルド・トランプに対してこんな言葉を選んだ。
「トランプ大統領、勝利おめでとうございます!米国が独創性、革新、創造性によって主導し、力を得続けられるよう、あなたと政権との協力を楽しみにしています」
クックだけではなかった。全てのテック企業の経営者たちがトランプにおべんちゃらを並べたてた。ベゾス(「@realDonaldTrumpの成功を祈念します」)、ザック(「協力できることを楽しみにしています」)、ピチャイ(「我々は米国のイノベーションの黄金時代にいます」)、ナデラ(「トランプ大統領、おめでとうございます」)。
https://daringfireball.net/2024/11/i_wonder
テックワーカーの労働組合はあなたに与えられて当然なだけでなく、今すぐに必要なのだ。
https://abookapart.com/products/you-deserve-a-tech-union.html
トランプ政権下で2028年のゼネラルストライキを組織することは容易ではないだろう。労働者たちは、裁判所やNLRBからの支援を確保できないだろう。バイデン時代の輝かしい指導部チームは間違いなく運命づけられている。
しかし、NLRB(全米労働関係委員会)が今日存在するのは、労働組合の結成が放射性物質のように危険視され、組合オーガナイザーが無実の罪で暴行され、投獄され、殺害された時代に、労働者たちが組合を作り上げたからだ。そのオーガナイザーたちの戦術は時の流れとともに消え去ったわけではない――それは今日まで脈々と受け継がれている伝統なのだ。
この古き良き、戦闘的な、コミュニティベースの労働組合組織化の旗手が、偉大なジェーン・マカレヴィー(rest in power)だった。マカレヴィーは組織化とストライキの取り組みを大衆運動として展開した。彼女は70%から95%という圧倒的多数の支持を確信できない限り、どちらも呼びかけなかった。
https://pluralistic.net/2023/04/23/a-collective-bargain/
マカレヴィーは、労働組合の組織化を労働者の力の源泉としてだけでなく、コミュニティの力の源泉としても捉えていた。彼女がロサンゼルスの#RedForEd教員ストライキを支援した際、教員たちは自身の労働条件の改善だけでなく、生徒たちのための緑地空間や、生徒の親たちをICEのガサ入れから守ることまで要求に盛り込んだ。彼らはこれをトランプ政権下で実現し、2020年には重要な選挙区を動かして民主党に下院の多数派をもたらす投票組織を築き上げたのだ。
マカレヴィーは著作の中で、有罪判決を受けた重罪犯で強姦犯にすら選挙で敗れた、クソッタレな民主党の権力ブローカーたちを容赦なく批判した。選挙に勝つには、戦術的に重要な選挙区でちょうど50.1%の票を獲得することだと考えるテクノクラート的な驕りを糾弾したのだ。それこそが民主党が何も実現できず、労働者が民主党に見切りをつける悪夢のような「マンチン=シネマティック・ユニバース」を生み出す元凶だ、と。米国を変革するには、マカレヴィーと仲間のオーガナイザーたちがストライキ投票で勝ち取ったような多数派――選挙での勝利にもつながる、持続可能な反ファシズムの力を生み出す多数派――が必要なのだ。
マカレヴィーは昨夏に亡くなった。しかし、彼女が教え、鼓舞した人々と、我々全員が従うことのできる行動規範を残していった。
https://jacobin.com/2024/07/jane-mcalevey-strategy-organizing-obituary
我々には4年ある。労働組合に加入しよう。そのリーダーシップを奪取しよう。仲間の労働者やコミュニティとの連帯を作り出そう。労働協約を勝ち取ろう。2028年に期限切れとなるようにしよう。さあ、準備をしよう。
なぜなら2028年、我々はゼネラルストライキを起こすのだから。
Pluralistic: General Strike 2028 (11 Nov 2024) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: November 11, 2024
Translation: heatwave_p2p