以下の文章は、2025年12月18日付のコリイ・ドクトロウの「A perfect distillation of the social uselessness of finance」という記事を翻訳したものである。
今年の執筆はもう終わりにしようとしていた――実を言えば、昨日の時点でそのつもりだった。ところが、ある短い文章にたまたま出くわし、それがあまりに完璧だったので、2025年のPluralicticをもう1回だけ書くことにした。
その文章は、ジョン・ランチェスターが『London Review of Books』に寄せた「For Every Winner A Loser」というエッセイで、金融セクターに関する2冊の書籍――ゲイリー・スティーヴンソンの『The Trading Game』と、ロブ・コープランドの『The Fund』――を論じたものである。
https://www.lrb.co.uk/the-paper/v46/n17/john-lanchester/for-every-winner-a-loser
長く、読みごたえのあるエッセイで、いずれも読みたいという気持ちにさせられた。だが、休暇前にもう1本ニュースレターを書こうと思った理由はそこではない。エッセイの序文にある短い一節が、金融セクター全体の社会的無用さをこれ以上ないほど完璧にとらえていたからだ。
ランチェスターはまず、こう述べる。金融セクターの役割は「資本配分」――つまり、投資家の資金を使って新規事業を立ち上げたり、既存事業を拡大したりすること――だと我々は考えがちだが、そんな機能はとうの昔に金融の中心ではなくなっている。今日、銀行の活動のうち「財やサービスの生産に従事する企業や個人への融資」が占める割合は、わずか3%にすぎない。
残りの97%はギャンブルだ。スティーヴンソンはこう分解して見せる。あなたの農場でマンゴーを栽培しているとしよう。収穫前に資金が必要なので、将来の収穫物の所有権をブローカーに1箱1ドルで売る。
ブローカーはただちにその権利をディーラーに転売する。ディーラーは悪天候の噂を根拠に今年はマンゴーが不足すると踏んでおり、1箱1ドル10セントで買う。次に、同じ噂に乗った国際投機家がブローカーから1箱1ドル20セントで権利を買い取る。
ここからサイドベット(派生的な賭け)が始まる。「モメンタムトレーダー」(市場のトレンドが継続する方に賭けるのを専門とするトレーダー)が、あなたの収穫物の権利を1箱1ドル30セントで購入する。一方、逆張りトレーダー(モメンタムトレーダーの逆に賭ける者)がモメンタムトレーダーのポジションを1ドル20セントで空売りする。空売り勢がさらに群がり、価格は1箱1ドルまで下落する。
するとマンゴーの大豊作が見込まれるという新たな噂が流れる。さらに空売り勢が現れ、価格は1箱90セントまで押し下げられる。これに誘われて最初のブローカーが再び登場し、あなたの収穫物を1箱1ドルで買い戻す。
そして収穫の時が来る。マンゴーを収穫し、市場に出す。売値は1箱1ドル10セントだった。
これが金融だ――膨大な取引の渦の中で、実体経済に関わっているのはただ1つ、マンゴーを食べる人に売る取引だけである。それ以外はすべて「価格変動に対する投機」にすぎない。作付けから消費者の口に入るまでの間に行われた9つの取引は、すべてゼロサムだ。どの取引にも勝者と敗者が等しく存在し、すべてを合算するとゼロになる。つまり、何の価値も生み出されていない。
これが金融セクターの正体である。実体経済が年間105兆ドルを生み出す世界で、金融デリバティブ市場の規模は年間667兆ドルに達する。「世界最大のビジネス」でありながら、それは無用だ。何も生産しない。何の価値も加えない。
何か有用なことをする仕事に就いているなら、あなたはこの経済の負け組の側にいる。本当のカネが集まるのは、社会的に無用で、価値を生まず、肥大し転移したこの金融セクターだ。金融における利益には必ず同額の損失が対応する。すべてを合計すれば――文字通り――無になる。
だからこそ、今年最後にもう1本ブログ記事を書く気になった。「世界最大のビジネス」の無用さを完璧に蒸留した一文。その支配者たちは、政治家を売り買いし、政策を決定し、我々の生活をコントロールする退廃的なギャンブラーどもである。インターネットをメタクソ化し、地球を燃やし、イーロン・マスクを兆万長者へと押し上げているのは、まさにこの連中だ。
この世界は彼らのもので、我々はただそこに住まわせてもらっているにすぎない。
(Image: Sam Valadi, CC BY 2.0, modified)
Pluralistic: A perfect distillation of the social uselessness of finance (18 Dec 2025) – Pluralistic: Daily links from Cory Doctorow
Author: Cory Doctorow / Pluralistic (CC BY 4.0)
Publication Date: December 18, 2025
Translation: heatwave_p2p
何を言うか、「価格発見」と「リスク移転」という機能を無視するな、といういかにもな反論もありそうだが、農家のヘッジに必要な取引を超えるほどの膨張を正当化するものではない。
金融セクターの膨張によって、我々はさまざまな形で負のトリクルダウン(メタクソ化もその1つ)を経験している、という射程で書かれたコラムだと思われるが、いずれコリイ・ドクトロウには金融をテーマとした本を書いてほしいものである。