以下の文章は、電子フロンティア財団の「Right to Repair Advocates Have Had Good Victories. We Have To Keep Fighting.」という記事を翻訳したものである。

Electronic Frontier Foundation

修理する権利のアドボケートにとってこの1年は良い年だった。コロラド州では車いすユーザが自分で車いすを修理するために必要なリソースにアクセスできるようにする重要な法律が可決された。連邦取引委員会は、修理する権利を制限する企業への取り締まりを強化した。そしてニューヨーク州は2022年末、一部のデジタルデバイスメーカーに、デバイスの修理に必要な部品、工具、情報の提供を義務づける史上初となる消費者の修理する権利法案を可決し、歴史に名を刻んだ

これら法案を後押ししてくださった皆さん、そしてとりわけ、この戦いをリードする修理連合(Repair Coalition)のアライに感謝する。だが、こうした勝利を喜んでばかりはいられない。修理する権利をさらに前進させるべく働きかけ続けなければならないのだ。祝うべきいくつかの勝利があろうと、その道程はまだ果てしない。懸命な戦いの末に勝利を掴み取ったという事実は、裏を返せば「自分が所有するものを自分がいじれるようにする」というごく当たり前の考え方にどれほどの反発があるかを示している。

ニューヨーク州の法律を例に取ろう。この法律が画期的であることは間違いないが、キャシー・ホーチュル知事が署名した法律は、ニューヨーク州議会の両院を通過した法案から大きく後退した。最後のハードルで大幅に弱体化されてしまったのだ。それはなぜか? タイムズ・ユニオン(ニューヨーク州アルバニー)によると、テクノロジー業界団体のTechNetが、キャシー・ホーチュル州知事に、法案への拒否権行使、法案の修正、特定分野の企業の適用除外を求め、集中的なロビー活動を展開したのだという。

その結果、業界にとっていくつかの成果がもたらされた。議会で可決された法案は、携帯電話、タブレット端末、IT機器など、すべてのデジタル機器を対象としていたが、知事が署名した法律では、2023年7月1日以降に製造された製品のみを対象とするように修正された。また、議会で可決された法案から、「企業から政府」または「企業間」の契約で販売されるデバイスを除外するよう後退させられてしまった。つまり、学校や病院など多数のデバイスを管理する組織が、この法律の恩恵を受けられないのだ。さらに、この法律にはいくつかの抜け穴が追加され、たとえば企業が個々の部品ではなく組立部品の提供を許してもいる。これにより、消費者が必要とする部品だけでなく、不必要な部品もあわせて売りつけることも可能になる。メーカーの中には、この法の精神を回避するための招待状だと考える企業もあるだろう。

最後に、同法ではデバイスの診断と修理に必要なセキュリティ機能回避のための資料の提供を必須とはしていない。この規定は、独立系修理業者によるデバイスの修理がセキュリティ上のリスクであるという懸念を受けてのものだ。だが、それがナンセンスであることは以前に指摘したとおりである。2023年に「修理する権利」法案を検討する他州の議員が同じ轍を踏まないよう強く求めたい。

企業は修理する権利が広く支持を集めていることを理解している。今年、とりわけニューヨーク州での勝利は、擁護者が支持者を募り、修理する権利が市民にどれほど重要であるかを議員に伝えられることを証明た。大企業もこのプレッシャーを感じている。これまで修理する権利に反対してきたMicrosoft、Apple、そしてJohn Deereは、圧力に屈して譲歩を始めている。

だが、もっと強い働きかけが必要だ。第一に、企業の自主的な行動というのは、概して広報戦略か、せいぜい妥協の産物でしかなく、人々が抱えている問題に解決するほどのものではない。また、コストが掛かりすぎるという問題もある。たとえば、John DeereとFarm Bureauが結んだ「修理する権利」協定は、農家が直面する問題すべてを解決するものではないし、修理市場に競争をもたらすものでもなかった。また、こうした中途半端な対応と引き換えに、修理に関するいかなる法案も支持しないことを約束させられている。John Deereがこのときの約束をきちんと果たすかはいずれわかるだろう。

第二に、ニューヨーク州のように、修理する権利法案に反対するロビー活動がいまだ盛んなことを考えれば、たとえ企業が表向きは修理の拡大を約束しても、個別の対応でその約束を完全に守るつもりはないと予測するより他ない。だからこそ、「修理する権利」の支持者たちは、今年を「前進し続ける」ための狼煙としなくてはならない。みなさんの活動は既に変化をもたらしている。我々は前進を止めてはならないのだ。

Right to Repair Advocates Have Had Good Victories. We Have To Keep Fighting. | Electronic Frontier Foundation

Author: Hayley Tsukayama / EFF (CC BY 3.0 US)
Publication Date: January 20, 2023
Translation: heatwave_p2p